需要増大や人手不足解消に対応する物流MaaSの実現像
経済産業省は2020年4月20日、「物流MaaS勉強会 とりまとめ」を公表しました。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ドライバ数や、配達関連の人材不足が深刻化しています。
この中から、物流MaaSの実現像について、取り上げたいと思います。
物流業界を取り巻く現状と課題では、
①環境規制強化への対応
②慢性的な需要過多・人手不足
③物流のICT化・デジタル化
④商用分野でのCASE対応
となっています。
②慢性的な需要過多・人手不足では、
国内の貨物輸配送量は横ばいも、小口化・荷主ニーズ多様化に伴い貨物1件当たり貨物量・積載率は低下傾向で、トラックドライバー数は微減傾向にあり人手不足は深刻な状況となっています。
新型ウイルス感染拡大の影響により、ネットショッピングも増え、さらに深刻な状況になっていると考えられます。
一人のドライバーがより多くの積荷を運搬できる様にする取組と運送業務全般の働きやすさの向上をバランスよく進めていく事が不可欠となっています。
③物流のICT化・デジタル化では、
物流分野(ここでは輸配送に着目)におけるICT化は、大手荷主の自家物流や大手運送事業者での個別最適化が進展しているとしています。
その一方、中小事業者でも目的・用途に応じ、運行管理システム導入が進展も、デジタコ等との機器代/通信費等の重複投資も見られ、運行管理システム間でのデータ連携は進んでいない状況と指摘しています。
④商用分野でのCASE対応では、
100年に一度とされる大変革期において、CASE活用は商用車分野で先行するとみられる一方、国内商用車メーカの研究開発投資には限界あるとしています。
OEM各社は海外勢も含んだ合従連衡により乗り切ることに加え、効率的投資のための協調領域の拡大が必須であると指摘しています。
などの物流分野の課題解決に、コネクテッド技術が貢献できる可能性もあげています。
荷主・運送事業者等のプレイヤーが進める物流効率化に対し、商用車OEMは共に"共通の物流MaaS実現像"を描きながら、デジタル技術を活用し、共同輸送や混載配送・輸配送ルート最適化等を共同で実現していく事が必要としています。
そういった状況の中、政府では、荷主・運送事業者・車両の物流・商流データ連携と部分的な物流機能の自動化の合わせ技で最適物流を実現し社会課題の解決、および物流の付加価値向上を目指す「物流MaaSの実現像」を示しています。
出所:経済産業省 物流MaaS勉強会 とりまとめ 2020.4
物流MaaSで物流・商流データ連携で共通化することで、
・各運行管理システム間のAPI標準化/データ連携が進み複数システムを単一画面で操作可能に
・標準化やIoTの進展により倉庫・物流結節点と輸配送手段がオープンに共有され、最適ルートでの輸配送が可能に
・架装内センサ・RFIDタグの普及により空車・貨物情報が可視化される
・ドライバーデータ活用により安全性向上/ドライバーに優しい車両により労働環境改
といったメリットをあげています。
商用車業界としての取組の方向性として、
荷主・運送事業者等のプレイヤーが進める物流効率化に対し、商用車OEMは共に"共通の物流MaaS実現像"を描きながら、デジタル技術を活用し、共同輸送や混載配送・輸配送ルート最適化等を共同で実現していく事が必要とし、以下の3点の取り組みをあげています。
1 トラックデータ連携の仕組みを確立
2 見える化・混載による輸配送効率化
3 電動商用車活用・エネマネ検証
1 トラックデータ連携の仕組みを確立
他の物流効率化システムとの連携を見据え、日本版FMS標準及びコネクタを活用し、複数OEMのトラック車両データを収集し、運行管理可能な仕組みを確立。安全や災害対応情報等協調領域のユースケースにおける実装や将来の幹線輸送システム(運行管理・車両マッチング等)に向けた検討を促進。
2 見える化・混載による輸配送効率化
トラック位置情報と架装の積荷情報を収集し、荷台空きスペース情報を可視化。複数荷主・運送事業者による混載の取組を推進することで、ドライバーの働きやすさ向上と平均積載率改善(トンキロ当たり燃料消費量削減)をともに実現。潜在的な共同輸配送ニーズ発掘・マッチングにつなげる。
3 電動商用車活用・エネマネ検証
支線物流における電動商用車活用を見据え、電動車の特性(航続距離、充電時間、静音性等)を踏まえたオペレーションとエネルギーマネジメントの最適化手法を検証(電動車MaaS)。商用車の電動化の経済性の検証及びその向上による電動車の普及拡大につなげる。
となっています。
今後、さらに、ネットショッピングの需要が増えていくと予想されます。これらの物流MaaSの期待値はますます高まっていくでしょう。