量子技術イノベーション戦略と技術ロードマップ
内閣府は2020年1月23日、「総合科学技術・イノベーション会議(第48回)」を開催し、
1.量子技術イノベーション戦略について
2.「安全・安心」の実現に向けた科学技術・イノベーションの方向性について
3.革新的環境イノベーション戦略について
について、議論・検討を行っています。
この中から、量子技術イノベーション戦略と技術ロードマップについて、取り上げたいと思います。
量子技術イノベーション戦略 最終報告(ポイント)では、
量子技術は、将来の経済・社会に変革をもたらし、また、安全保障の観点からも重要な基盤技術であり、米欧中では、本分野の研究開発を戦略的かつ積極的に展開している中、日本においても、「量子技術イノベーション」を明確に位置づけ、日本の強みを活かし、重点的な研究開発や産業化・事業化を促進。量子コンピュータのソフトウェア開発や量子暗号などで、世界トップを目指していくとしています。
量子技術イノベーション創出に向けた重点推進項目では、
重点領域の設定、量子拠点の形成、国際協力の推進の3つの推進項目をあげ、
「技術開発戦略」、「国際戦略」、「産業・イノベーション戦略」、「知財・国際標準化戦略」、「人材戦略の5つの戦略を提示しています。
出所:合科学技術・イノベーション会議(第48回) 2020.1
「技術開発戦略」では、技術ロードマップの策定や、「量子融合イノベーション領域」の策定などの取り組みをあげています。
出所:総合科学技術・イノベーション会議(第48回) 2020.1
「産業・イノベーション戦略」では、「量子技術イノベーション拠点(国際ハブ)」の形成やる「量子技術イノベーション協議会」の創設や活動などを支援をあげています。
出所:総合科学技術・イノベーション会議(第48回) 2020.1
技術ロードマップをみてみたいと思います。
技術ロードマップ例 ①ゲート型量子コンピュータ(超伝導量子ビット)
・大規模で複雑な計算を高速・高精度・低消費電力で実行可能な汎用デジタル量子コンピュータを実現
・10年後以降、1,000個程度の物理量子ビットを実装。さらに、量子誤り訂正された50個程度の量子ビットを実装
・大規模化に向けた設計支援技術や冷凍・低温技術開発により、大規模化を進める
出所:総合科学技術・イノベーション会議(第48回) 2020.1
技術ロードマップ例 ②固体量子センサ(ダイヤモンドNV中心等)
・小型でロバストな超高感度の固体センサの実現により、脳磁計測(医療・ヘルスケア)や極限環境、生命分野等での利用が期待
・5年後に10-12T(テスラ)、10年後に10-14Tの室温下の微弱磁場の観測を達成。さらに温度や電流の同時計測技術等を確立
・センサの高感度化のため、高度な量子状態の制御技術の開発やセンサ材料の高品質化を進める
出所:総合科学技術・イノベーション会議(第48回) 2020.1
技術ロードマップ例 ③量子通信・暗号リンク技術
○ 量子暗号装置の製品化によって、様々なセキュリティアプリケーションの安全性を強化
○ 5年後までに都市圏で10Mbpsの量子暗号通信、10年後までに都市間スケールへの拡張(長距離化)の実証
○ 高性能な単一光子検出器や量子もつれ光源、乱数源等の研究開発。加えて、QKDの新方式の研究開発
出所:総合科学技術・イノベーション会議(第48回) 2020.1
融合領域ロードマップ例 量子AI技術
・将来的なニューラルネットや人類の学習メカニズムにおける量子力学的要素の解明、実証など、AIの可能性を最大化
・量子インフラ(量子通信・インターネット、量子センサ、量子コンピュータ)を組み合わせた量子AIシステムの創出
・機械学習(AI)と量子情報処理の融合による、量子機械学習の基礎学理の構築やマテリアルズ・インフォマティクスなど化学・材料・物性計算、量子シ
ミュレーション、量子系の制御に量子AIの方法論を応用
出所:総合科学技術・イノベーション会議(第48回) 2020.1