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不勉強ながらに知らなかったのですが、ソーシャルゲームの中には「遊ぶと現金がもらえる」という換金性を売りにしたゲームがあるのですね。(この場合、不勉強というのだろうか)

普通に考えるとゲームで遊んでお金がもらえるというとこんな3パターンがあるかと思います。

1.ゲーム内通貨の払い戻しができる

2.RMTや三店方式の現金払いのアイテム売買市場がある

3.スポンサーが懸賞をかける

結論から言うと私が発見したのは3番目の懸賞型のゲームでした。

なお、国内外には色々なゲームがあるかと思いますが本記事はいずれかのゲームを特定して論じるものではありません。換金性のあるゲームを推奨したり、何らかの保証やお墨付きをつけるものでもありません。個人的な経験を通じて得た印象は、懸賞の換金という性質を備えたサービスの中には未使用ポイントを抱えたままでサービスを中断し、ユーザの努力と金銭的価値が消失した事例も少なくありません。ですのでゲームとして純粋に楽しめること以上の多くを求めることはリスクがあると考えています。(換金ゲームを不健全だと主張するつもりもまたありません)また、私は弁護士ではありません。以下は法律の解釈について何らかの助言やアドバイスをするものでもありません。ただ換金ゲームという新しいサービスを見て感想を日記として綴っただけのものです。信用して何らかの被害等が発生しても一切責任を負いません。執筆時点から情勢や法律の変化があったとしても保証しません。私の認識相違が含まれている可能性があります。基本的に信用出来ないレベルの情報だと思って自己責任で読んで下さい。

懸賞の換金というのはインターネットで古くからある手法ですね。ゲームの運営元となる胴元が出稿企業から10円もらってユーザに広告を見せ、ユーザには3円とか5円に相当するポイントをあげるというものです。ユーザは1000円や3000円の限度に達した所でポイントを現金化することができます。逆ロングテールみたいなもので、出稿企業に対しては付与したということで胴元が10円×人数分の費用を請求するのですが実際には少しだけポイントもらってやめてしまうユーザが多いので胴元丸儲けという部分が大きいビジネスです。今スマホで流行しているIP電話系サービスの元祖のような『ただTEL』というサービスが一時期流行していましたがそれと同じ仕組ですね。ただTELでは広告を見た分だけ電話をかけることができました。

さて他の手法はどうなのでしょうか。まず1.についてですが、ゲーム内通貨がポイントか電子マネーかというところが論点となります。電子マネー、法律では『前払式支払手段』と言いますが、利用期限が6ヶ月以上だとかの条件を満たすとゲーム内通貨であっても電子マネーとなります。諸論あるところであはりますが、ポイントと電子マネーを混ぜこぜに出来る場合は電子マネーとして扱いなさいという見方があります。これはどういうことかというと、例えば「オルタナ」という通貨があったとしましょう。通貨「オルタナ」はゲーム内で敵を倒すことでも貯まるのですが、鎧を買うのに1万オルタナいるけど今9000オルタナしかなくて1000オルタナを今どうしても欲しいから課金してしまえということがあるかと思います。そのときに課金を許すところまでは特に問題ありませんが、システム上現金で買ったオルタナとオマケとして貯めたオルタナがごちゃごちゃになって切り離せないような感じであれば、その時はもう全部電子マネーとして扱いましょうね、というような話です。現金で買ったオルタナを運営が「もうサービスやーめた」といっていきなり抹消することは資金決済法上できませんが、ポイントは電子マネーではないので資金決済法を気にする必要はありません。それでも民法やユーザ規約の問題は残るかと思いますが。

この考え方は別の所でも重要です。電子マネーは原則として現金化してはいけないからです。自由に電子マネーを現金化できると、電子マネーを預金口座のように使うことができてしまいます。金融機関ではない一介の企業が莫大な電子マネーを発行し、それを現金にも戻すことができるとすれば、これは通貨の安定性にとってどんな影響を与えるかわかりません。ですので一方通行になっています。ポイントについては、資金決済法の法案検討時にいろいろと議論があったようですが、どうやら「ポイントを保護しなければみんなそんなに大量に抱えたりしないでしょ」みたいな感じでスルーされたのではないかと思います。変に保護するとポイント経済が大変な規模になってしまうというか。電子マネーなら数万円入っていてもそれほど抵抗感ないと思いますが、家電量販店のポイントを数万ポイントだと長くは貯めていたくないという人は少なくないんじゃないでしょうか。とうことでポイントサービスは野放しとなり現金化できたとしても、胴元が倒産してしまったとしても、それが大きな問題になることはないと考えられているようです。実際にスマホゲームではないものの、広告を見たりアンケートに答えたりして現金収入を得ている方がブログで手法を公開しているのを見かけた方もいることでしょう。最近ではこれにクラウドソーシングまで入ってきそうでますます盛り上がりそうですね。

話が脱線しました。電子マネーとポイントがいっしょくたになっていて、例えば先ほどの例で課金して1万オルタナにしたところで急に冷静になって全額引き出したくなったとします。ここには電子マネーの1000オルタナ分が含まれているのですが、区別できないとそれまで一緒に現金化してしまうことになります。こういうのはいけません。ですのでゲームを遊ぶときは意識することなく鎧が変えたとしても、換金しようとかそういうタイミングでは「いや9000しかだめですよ」となってポイントと現金が分離されている、このような仕組みであれば資金決済法における換金の原則禁止というレギュレーションにおいては問題ないことになります。(※その他の法律については調べていません。)

そして2.のRMTや三店方式はたぶん大丈夫です。が、ガチャとかとの組み合わせによってギャンブル要素が出てくるとそっちで怒られる可能性があります。

というわけでこれからどんどんこのようなゲームができてくるかと言われると、むしろキワモノとして生き続けるのではないかと思います。むしろポイントを貯める部分は広告ではなくクラウドソーシング的な生々しい作業(労働)をしてゲーム内通貨を貯めて、用途は課金ではなく最強アイテムを買って楽しむというようなプロレタリアート展開なら実現するのかもしれないですね。

yohei

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山口 陽平

山口 陽平

国内SIerに勤務。現在の担当業務は資金決済法対応を中心とした資金移動業者や前払式支払手段発行者向けの態勢整備コンサルティング。松坂世代。

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