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2012年6月15日、IBMが東京ラボをオープンしました。

IBM東京ラボが本格始動、「売上重視」とイェッター社長が言及 - ITmedia エンタープライズ http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1206/15/news077.html

日本IBMさんよりお招きいただき、私も東京の豊洲に行ってまいりました。豊洲というとNTTデータ、ユニシス、住商情報システムと情報システムに関わる企業が多く集まる土地です。さらにIBMが加わって賑やかになりそうです。

当日は技術的な公演としては3本聞くことができました。いずれも日本IBMの技術理事の方によるものです。

Future Watson 「ビジネスへの応用とテキスト分析の可能性」
東京基礎研究所 技術理事 武田 浩一さま

Future IT 「これからのIT社会における情報活用」
技術理事 佐貫 俊幸さま
技術理事 浅井 信宏さま

私が興味深く思ったのはWatsonとストリームコンピューティングについてでした。

クイズ番組に出場して有名になったWatsonですが、その開発のアプローチを聞くことができました。エキスパートシステム開発プロジェクトの失敗を引き合いに出して、人の思考パターンをコンピュータに再現させるために巨大な辞書のようなものを開発者だけで整備していくことは難しいという説明にはなるほどと思いました。

となるとどのようにコンピュータに考えさせれば良いのか。インターネットの発達により人の思考結果がテキストとして膨大に蓄積されているため、それを分析して答えを導き出すことができるのではないか?というようなアプローチがとられたようです。私の感覚としては、おそらくその答えを導き出す部分の精度は質問によってはかなり高まっているのではないかと思います。が、質問の意図の解析がどうやら難しいのではないかと思います。

銀河ヒッチハイクガイドでは「人生、宇宙、すべての答えは?」という質問に「42」と答えられた人類が悩むというシーンがあります。人間同士の会話でも、特に夫婦となるとなんでそんな質問して答えられるのかというような高度な意思疎通がありますが、そのような文脈というかツーカーというか、そういうものをコンピュータに再現させることはまだまだ難しいようです。

ストリームコンピューティングについては、あくまで例えとして、ですが、自動車のセンサーからデータを吸い上げて交通整理や渋滞低減をするためにはシステム全体がどのようなアーキテクチャーであるべきかという話を聞くことができました。

例えば自動車のセンサーというのを考えてみると走っていない車のデータを走っているように扱うことは無駄です。走行速度がゼロならば、それは例えば10分に1回だけデータを取るとか、そのような使うか使わないかの整理をするレイヤーが必要そうです。他には、例えば自動車会社によってセンサーに癖や方言のようなものがあればそれを通訳し、明らかにおかしなデータがあれば排除し、というように複数のレイヤーを通してデータを美しい状態にして、初めて分析などの扱いを始めることがしやすくなります。

バッチ処理であれば何万件かをまとめてバケツリレーで処理していくこともできるでしょうが、大量でかつリアルタイムに次々と生成されるデータを処理しようと思ったら、順次レイヤーに送っては処理し、晩生は処理しというストリームでデータを扱う必要があります。実際にセンサーのように振舞うプログラムを使ってシミュレーションをするところを拝見しましたが、非常に大量のデータをリアルタイムで処理している様子はかっこよかったです。

この他、少し前に鳴り物入りで登場したIBM PureSystemの紹介がありました。ビジネス上の意思決定が非常に速いスピードで進む中で、人間サイドの準備は1ヶ月や半月で終えることができるのにIT基盤の構築が3ヶ月も半年もかかるようではユーザの信頼を得ることはできないでしょう。これに対してのIBMの回答のひとつがPureSystemです。一般論として、スクラッチで組むインフラのように自由度が高いのですが、その副作用としては構築する技術者のスキルによって性能が左右されてしまいます。これに対してアプライアンス製品は非常に最適化の度合いが高いものの、自由度が低いという傾向がありました。ここ最近の動向としては、ビジネスのスピード向上に貢献するためにアプライアンス製品に力を入れるHWベンダーが増加し、かつ、その中での自由度の低さを補うために仮想化(クラウド化)の思想を取り入れるという流れがありました。PureSystemもまさしくその路線に乗っているようですが、実際の導入事例をよく見てみないことには無責任な紹介はできないのでこのへんで。

知見を結集してクラウド構築を効率化:IBMが全世界で同時発表した「PureSystems」とは何か (1/2) - ITmedia エンタープライズ http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1204/13/news022.html

 

東京ラボではIBMの中に閉じた研究だけでなく、ユーザとのコラボレーションを積極的に進めて生きたいという思いもあるとのことです。周囲にIT企業が多く、また、ちょっと気分を変えたいと思えばすぐに築地、銀座に出ることもできる?という好立地の豊洲にラボが開かれたことはきっと新しくておもしろい何かを生み出すきっかけになることと思います。

お招きいただきありがとうございました。

#2012/6/21 23:45
佐貫さまのお名前を誤って記載しておりました。お詫びして訂正いたします。

yohei

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山口 陽平

山口 陽平

国内SIerに勤務。現在の担当業務は資金決済法対応を中心とした資金移動業者や前払式支払手段発行者向けの態勢整備コンサルティング。松坂世代。

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