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「ステマ」を巡る騒動は沈静化とまでは行かないようですが、さらなる活発化まではいかないような踊り場状態というところでしょうか。
2ch「ステマ」戦争 人気板が住民大移動で一気に縮小、その背景の事情と心情 (1/4) - ITmedia ニュース http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1201/13/news070.html
ステマの問題は、企業が糸を引いて組織的に口コミを作り上げることで消費者がそれに騙される形になるという点にあると思います。これについて最近、もっと消費者への直接的な害悪が発生しやすいような悪質な口コミの利用があるのではないかと感じています。
というのもこんな経験がありました。私は今冬の寒さに備えてトヨトミの石油ファンヒーターを買いました。トヨトミの石油ファンヒーターには説明書に書かれていない裏技的な操作があり、その操作を行うことで室温に関係なく燃焼の強さを固定することができます。私はこの機能の存在を2ちゃんねるやその他のインターネット上の書き込みを通じて知り、便利そうなので買いました。実際に使ってみて気に入っています。(と書くとステマっぽいですがトヨトミのステマではありません。ただし私は故郷である名古屋企業を応援する傾向があります。)
通常想定される範囲の「ステマ」ですと商品について「使ってみてよかった」「こんなことに効いた」という範囲でしょう。薬事法等の規制を受ける製品については「※ 個人の感想です。効果は個人差があります」という記載を頻繁に見かけます。
しかし「裏技」に着目してインターネットを見てみると、正攻法での利用に対する感想だけでなく、様々な裏技が紹介されていることに気づきます。その中でも化粧品や健康食品等に関する裏技が多く、何かと何かを混ぜたとか、何物かを塗った上からラップで覆って朝まで寝たとか、そういった使い方を好意的に紹介する口コミが見受けられます。今問題になっている「ステマ」と同様にそれが売り手の意図なのか純然たる消費者の意見なのかは外部から判断することができませんが、もしこれらの一部が薬事法やJAS法といった規制をクリアする方法として一部の悪徳な企業の意図のもとで投稿されたものだとしたら、非常に危うい流れであるように思います。(確たる証拠はまったく掴んでおりません)
例えばこれは古くからある裏技ですので純粋に人々の間で編み出されたものだと思いますが、鼻の毛穴の角栓を取るために軟膏やオイルで鼻を洗ってから毛穴パックをするという方法があります。これを企業が公認して広めるには十分な安全性の確認が必要ですし、そもそもこのようなやり方が関連する法律に触れていないかの確認も必要です。しかし表の理由で売っておいて、後から人の集まるところで「裏技」をステマ的に広めることに成功すれば、メーカーの想定する用途から大きく離れた所で消費者が勝手にやっていることとしてメーカーは責任から逃れやすくなるでしょう。
大企業であったならばそのような非公認の使い方に対しても、予見性があったなどと責任を求められてしまうかもしれません。明確に「ダメ」と言っていたこんにゃくゼリー窒息事件のようなケースでさえメーカーが責められる時代です。しかし外国から買い付けた激安の商品を適当に綺麗なパッケージに包んで適当な能書きをつけて落ち目の芸能人を利用して高値で売り飛ばすようなビジネスモデルの会社ならばこのような危ない橋も恐ろしいものと考えないかもしれません。
特に化粧品関連では裏技的に自分流の活用方法を情報交換することが多いように思います。「私は一般的に大量生産・大量消費する化粧品は合わないセンシティブな存在だから」という女性心理が働くのでしょうか?それとも手間をかけるところに楽しみがあるのでしょうか?
「裏技」にも裏があるかもしれないと疑ってかかる必要があるかもしれません。
イタリアで豪華客船が座礁した事件では多数の死傷者が出たとのことでお悔やみを申し上げます。動画や書き起こしで出回っている船長の対応に対しては多くの批判が集まっているようです。
事件自体は進行中ですし調査もこれからというところですので私から具体的にどうのということはないのですが、仮に船長が茫然自失とした「パニック状態」になってしまっていたとしたら、そこから戻れというのは飲酒運転の人にすぐにシラフに戻って運転しろというのと同じくらいの無理難題ではないかと思います。
もちろん、もし自分が乗客の立場だったとしたら船長ならびにスタッフの方にはそのようなパニック状態にならないように日頃からの訓練をしておいて欲しいですし、そもそもそのような差し迫った事態にならないようなクルーズをして欲しいです。
パニックにならないような取り組みを考えてみると、自分もなかなかできていないものだと思います。例えば私が過去に開発部署にいた際にOracleデータベースとAIXの運用の講習をそれぞれ受けたことがあります。共通する点としては座学で体系を習得した後に実際にシステムを破壊してみて治すという練習があったことでした。これはもちろんコマンドの叩き方等を覚えるのにも良いのですが、「ここまで壊してもデータは失われないもんだな」ということを実感することで、妙な焦りを覚えることがなくなるという効果があります。
また、もし何らかの原因でパニックが起きてしまったならば、それに対応するにはどうしたら良いかということも難しいものです。飛行機のパイロットや宇宙飛行士の訓練課程ではわざと違う練習予定を渡しておき、スタッフが仕込んだ事故を経験させることで「自分がパニックになったときの感覚」を体験させるという話をどこかで聞いたことがあります。また、低酸素の状態も経験させ、その上でビデオで見せて恐ろしさを理解させるのだとか。
また、周囲の人も人間のパニック状態というものを理解しておく必要があるかもしれません。茫然自失とした人には脅しや大声は通じるのでしょうか?映画等では叩いたり家族を思い出させたりといったことで目に力が戻るということがありますが、実際には難しいように思います。それよりはパニックを見分ける力を養えば、その人が落ち着くまで一旦現場から切り離すことで指揮命令系統を立てなおしたほうがいいかもしれません。
今回は船長ではない人が陸から指揮命令を取ることができたようですが、これが沖合などで起きた事故だったとしたらもっとひどいことになっていたでしょう。船長が逃亡するよりも意味不明な指示を出し始めたてしまったならば、更に酷い事態を招いていたとも予想されます。また、船長や首相のように明らかに指揮命令系統のトップに立つ人がパニックを起こしたときに、それを引きずり下ろすための手続きや担当者が定められていることがどれくらいあるだろうかという点も気になります。(映画の「クリムゾン・タイド」では潜水艦の艦長を副艦長が解任するシーンがあります。かっこいいシーンです。ちなみにロード・オブ・ザ・リングのアラゴルン役の俳優さんが重要キャラとして登場します)
少し前に山岳遭難の本に興味を持ち、トムラウシ岳の遭難事故や難波康子さんのエヴェレスト遭難事故の記録を読みました。私が読んだ本では、2つの事故ともガイド役が平常心を失ったことでその他のメンバーが巻き込まれる形で大量遭難に至ったようにまとめられていました。リーダー役のパニックというものはこれほど恐ろしいものか、と感じさせられました。(ただし本によって書いてあることが違ったりもします。)
人の頭は思っているほど信用できないものなのかもしれません。心理学者や精神科医に聞いてみないとわかりませんが、低温や低酸素、アルコール、薬、病気等は簡単に判断力を奪い、普段の性格や責任感の強さ、また、場合によっては訓練の程度の違いを上書きしてしまうほどの力があるように思います。
ニュースを通じて見れば身の回りで少なくない数の交通事故や台風、地震が起きているのですが、ショック状態やパニック状態になっている人を実際に見かけることは少ないですし、自分がなることは一層ありません。何かの手段でパニック状態について知り、学ぶことが出きれば、救急救命処置と同じくらい役に立つ場面があるのではないかと考えています。
(大学時代にバイクに載っていてぼーっと道路の上の看板を見ていたら信号待ちの車がほんの数メートル先に停車していたことがありました。完全にパニック状態だったと思いますがバイクのシートに足をかけて飛び出し、肉体はゴロゴロ転がって打ち身のみで出血すらなし、バイクは倒れて滑り車のバンパーの下に潜り込んで『未接触』で停止するというミラクルでした。)
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