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オルタナブロガーの林さんが毎日ブログを更新し始めて3年を迎えました。おめでとうございます!

『【感謝とお礼】ブログ毎日更新3年:『ビジネス2.0』の視点:ITmedia オルタナティブ・ブログ』
http://blogs.itmedia.co.jp/business20/2010/06/post-b84c.html

最近の風潮として日本系企業と外資系企業との違いは小さくなってきているものと思いますが、日本系企業に勤務する自分としてはブログを書くことに伴なう様々な調整事項について、同じような環境に身を置く林さんからアドバイスいただく部分や学ぶ部分が多々あり、また同じような悩みを共感できることもあって頼もしい先輩であるように感じています。これからもがんばってください。>林さん

さてブログを書くことに伴なう調整といっても、別に取り立てて特別なことがあるわけでもありません。その中で私がかなり気にしている部分といえば「書いてはいけないこと」を書かないようにすることです。

書いてはいけないことにもタブーなものや営業秘密などいろいろありますが、それらは比較的簡単に対処することができます。まだリリースされていない情報は書いてはいけませんし、使ってはいけない表現は書籍などにまとまっています。利益相反になったりするものは直感的にわかりますし、万に一つでもうっかり漏らしてしまったとして世の中にインパクトを与えるような(ex.インサイダー的な)情報が私にもたらされることはこれまでにありませんでした。(それはそれで寂しい)

しかしそのような中で気をつけていることは2つあります。その前に「情報」の分類を。

情報の分類方法のひとつに、公然か非公然かというわけかたがあります。公然情報は秘密にされていない情報、非公然情報は秘密にされている情報です。公然情報はさらに、公示情報と非公示情報に分類できます。情報主体が自分から積極的に発信するものが公示情報、そうでないものが非公示情報です。

さて気をつけていることその1は公然情報の取り扱いです。ある企業が何かを発表したとき、その場であればそれをブログに書くことはほとんど問題になりません。しかしある程度時間が経ってくると事情が変わります。もはや忘れ去られているものを掘り起こしスポットを当てることは情報の主体が望まないかもしれません。企業のサービスで「あれどうなった?」ということは簡単ですし、懐かしむ人がコメントを下さることも多いのですが当事者の方がそれを望むかどうか自信を持てないときは触れないようにしています。公然の情報であっても、ネタにすることで生じる副作用を考えたいものです。

もうひとつは自分がネタにするという行為による非公示情報の発生です。自分のエントリを振り返ってみると、やはり担当している業務内容の影響というのはあるように見えます。私の業務内容は秘密ではないのですが公開しないほうが仕事を進めやすいため詳細を公開していません。自分のエントリにはそのような直接の記述はありませんが、同業の方が見たら「こいつこのへんの仕事してるな」ということがわかるかもしれません。それがわかったといって誰にもどこにも迷惑が生じることはないのですが、自分からは公開していないから関係者以外知らないだろう、という気持ちで振舞っていると思ったら、実は思いのほか真実に近づいている人が多かった、というとそこに隙が生じてしまいます。秘密と公開の中間として、なんとなく垣間見えてしまう情報=非公示情報には気をつける必要がありそうです。

なお非公示情報のわかりやすい例としては、例えば企業の登記簿のように限定公開されているもの、何年分かの財務諸表を分析すると読みとけてくる事実(であって週刊ダイヤモンドの特集でババーンと公開されていないもの)、公開されているけれどもなかなか読みとけないもの(特許文献など)などなどが挙げられます。これらは受け取り手の力量によっては公示情報と変わらず、かつ発信側は公示されていると思ったり、まったく思っていなかったりと気持ちの持ちようが異なるという点がおもしろいところです。また公示情報にはリードする意図が込められるのに対して非公示情報は意図して出すものではない分だけ真実を写す鏡となりやすいという特徴もあります。

さらにおもしろいのは「情報の収集」の行為が非公示情報になりやすい点です。端的に言えばIPアドレスと検索キーワードの組み合わせ、または特にアクセスの多いページへのアクセス元IPアドレスなどを見ればいろいろなことがわかります。わかりやすい例としては(そんなことは実際には起きないでしょうが)、自分のブログにApple社のIPアドレスから連日「コンテナ型データセンター」というキーワードでアクセスがある、ということになればそろそろ何かクラウド的な何かに挑戦するのか?ということを悟られてしまいます。

情報を収集しようと思ったら逆にされている。反対に情報を発信した側が思わぬ情報を受け取ってしまう。物理でいう「作用と反作用」のような、そういった現象があることについてはブログを書く以前から知ってはいたのですが、それを体感することができたのはブログの思わぬメリットでした。ウッフィーもそういった法則に支えられたものなのかもしれません。

ちなみに「スリムな弁当箱」探している人多いんですね。

yohei

DPI(ディープパケットインスペクション)に関する議論が高まっています。というよりはパッと見で「通信の秘密」を侵害するように見えて、かつ消費者にこれといったメリットが感じられませんので多くの反対の声を感じます。

さて自分は多くの人と同じようにDPIに反対の立場かというと全面的に反対というわけではありません。最もシンプルに「お金を出した広告主が個人のあらゆるネット接続ログを見てドンピシャに広告を出す」というやり方が自分に適用されると仮定すればもちろん反対です。しかし自分にはそのような労力を払って見あうほどの購買力はありませんので、もっと省力化された、すなわちソフトウェアで適度に自動化されて「人間によるプライバシー侵害」が起きない程度の運用になるのではないかと思います。

他、今の時点での疑問点をいくつか考えてみました。

  • 通信の秘密を侵害するか?
    →通信の秘密は侵害される。
  • 権力が暴走して反国家思想の持ち主を弾圧しないか?
    →もちろんそのようになる可能性はある。
  • アクセスログが漏洩しないか?
    →可能性はある。一方で例として「スポーツ」「乗り物」などのようにアクセスログを分類して異なるログに記録していき、生ログはこれまでと同様に厳重に保管するというような工夫が施されれば、これまでとさほど変わらないサービスが行われるものと思われる。
  • 強力な販売促進活動が行われ、消費者の権利が侵害されるのでは?
    →もちろんそれを監視し、行き過ぎを是正して良く努力は継続しなくてはならない。その一方で危険なのは「企業もそこまでやらないだろう」と思っていて実際に企業がそこまでやっているようなケースである。例えば現状はインターネットのアクセスログを解析してドンピシャの広告が出ることはないだろう(楽天内やAmazon内において過去の購買履歴を分析して行われるような宣伝は除く)と思っている人は多いが、アドネットワークのような仕組みでは複数のサイトにまたがって表示される広告配信ネットワークで行動を追跡して嗜好の分析を試みるという取り組みがある。それを知らずに不意打ちを食らうくらいであれば、そもそもインターネットのアクセスログは広告に使われるものだ、という理解でいたほうが安全である。(もちろんアドネットワーク等が行う情報収集の収集ポリシー明示の義務付けなども並行して進めるべきである)また、デフォルトOFFであり、自己申告によりONを申し出た人だけがサービスを利用できることが望ましい。(むしろ書面での同意を必要とするくらいの勢いで。)
  • インターネットの利用自体が萎縮しないか
    →萎縮する動きはあると思われる。インターネットの黎明期、yahooやgooで「原爆 作り方」と検索するとCIAにマークされるという噂があった。しかし今では誰も気にしていない。それと同様の経過を辿るのではないか。
  • DPI業者(ログの分析主体)の監視は?
    →プロバイダの報告を点検するのではなく、強力な権限をもった当局が事前通告なしのいつでも好きなタイミングで検査を行えるくらいのバランスでないと釣り合わないほど通信の秘密は重いと思われる。
  • 広告主は利用するだろうか?
    →プロバイダ、DPI業者、政府など消費者を除く関係者がすべて合意したとしても、消費者が団結してキャンペーンを行えば広告イメージが非常に悪化する。出稿した企業に対する不買運動などが続けば産業として成立しないと思われる。過去の経緯からすれば、その種の活動は有名人を巻き込んだ形で非常に盛り上がると思われる。
  • 百害あって一利なしなのか?
    →個人的には非常に大きな期待をもっているし、サービスインされたとしたら自分は申し込みを行うと思う。というのも、インターネットをしていて自分に興味のない広告があまりにも多い。今、某新聞社のDPIに関する記事を閲覧している際に表示されている広告は「大学情報」である。これが個人レベルでなく国家レベルで起きているとすれば、どれだけ膨大なトラヒックが無駄になっているのであろうか。また、テレビや新聞などの広告に投じられる費用が身近な商品やサービスの価格に転嫁されている点はインターネット上の無駄な広告以上にもったいないことであるし、不要なコストを負担させられている。こうした情報のすれ違いを解消し、企業から消費者に対して少ない手間で新商品等の情報が提供されるようになればすばらしいと思う。DPIはそれを実現する様々な可能性の中のひとつの選択肢であると思う。(と同時に副作用も強い劇薬であることに間違いない)
  • まずは広告という既成事実から悪事に発展するのでは?
    →まずはログの収集、分析システムを構築し、並行して議論が進められているブロッキングの制度と統合して危険思想の調査や犯罪の検知・予知などに使われる可能性は否定できません。私は今のところ危険思想に引っかかって連行されることもなさそうですし、犯罪を行う予定もありませんのでそれによりテロや犯罪が減るのであれば歓迎したいと思います。もちろんそれに歯止めがかからなくなって権力側が増長し、戦争等に突っ込むリスクもあると思っています。

と、いろいろ考えてみると得られるメリットが「広告の無駄打ちが減ってネットが軽くなるかも」「ネットするたびに自分にぴったりな広告がたくさん来て嬉しいかも」というレベルに対してデメリット側が「権力の暴走」ですからなかなか釣り合いません。それでも今ブラウザ上に表示されている「受験に役立つ情報満載!」という広告を見ると「なんとかならないものか」と思ってしまいます。願わくば、DPIなどせずともドンピシャに広告をマッチングさせてくるサービスが開始されんことを。

yohei

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山口 陽平

山口 陽平

国内SIerに勤務。現在の担当業務は資金決済法対応を中心とした資金移動業者や前払式支払手段発行者向けの態勢整備コンサルティング。松坂世代。

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