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大富豪というと大貧民が大富豪にジョーカーやエースを献上し、なかなか格差が縮まらないところがおもしろさのひとつです。その役割を”情報”で担えないでしょうか。

モデルケースとして6人での大富豪を考えます。大富豪、富豪、平民×2、貧民、大貧民でゲームをします。革命などはちょっとややこしいので考慮しません。

  • まずは大富豪の権利です。これは自分以外の全員の手札を見ることができる権利とします。義務はありません。
  • 富豪は貧民、大貧民のすべての手札を見ることができます。義務は大富豪に手札のすべてを見せることです。
  • 平民は権利を持ちません。その代わりに大富豪、富豪にすべての手札を見せる義務があります。
  • 貧民は好きな手札を3枚残し、それ以外のカードを場に開いたままゲームを行います。
  • 大貧民はすべての手札を場に開いたままゲームを行います。

こんな感じでゲームをやってみたらどうなるでしょうか。大富豪はすべての出方を把握できますが、カードの交換がありませんのでもっとも合理的に行動するか、はったりを効かせるしかありません。怖いのは富豪ですが、富豪は平民のカードを把握できませんので、大富豪が自分より強いカードを持っているか否かを的確に判断できません。

平民は貧民と大貧民のカードを見てプレイを行うことになります。

貧民の手札は任意の3枚を手元に残してすべてオープンにします。3枚というのは適当ですので2枚とか4枚のほうがおもしろいかもしれません。場合によっては上位のカードを半分開くですとか、下位のカードを半分開くという強制性があったほうがおもしろいかもしれません。

大貧民はすべてオープンでやることになります。ジョーカー2枚を引き当てると非常におもしろいのではないかと思います。

現実の世界でもJALはつぶれるだろう、という情報を組み立てられた人は信用売りをして一財産築くことができたようですので、情報というのは確かに価値があることであるように思います。同じように時間なども価値がありますので、残り時間で優遇される大富豪というのもよいかもしれません。

ちなみに個人的に通常ルールで一番おもしろくないのは貧民の役であると思っています。

yohei

21世紀の某年。太平洋上にクラウドヘイブンと呼ばれるウォーターフロントが現れた。

クラウドヘイブンは以下の3つの要素からなる。

ネットワークヘイブン。いくつかの国家で行われるあらゆる検閲を乗り越え、あまねく通信のサービスを提供することができる。国家レベルのファイヤーウォールやディープパケットインスペクションといった対抗手段をくぐり、高度に暗号化された通信により誰とでも安全に通信を行うことができる。

データヘイブン。あらゆるデータを完全に、極秘に預かることができる。また、要望すればいかなる国家にも直接的に邪魔されることなくそのデータをインターネット上に公開することができる。ただし検閲国家においては遮断という手法があるため必ずしも成功しない。

コンピューティングヘイブン。あらゆる計算を行うことができる。金と時間さえかければ暗号解読、分子構造のシュミレーション、DNA情報の分析など解法のコンサルティングからプログラムの実装までの任意のサービスを受けることができる。

この国の発足は20xx年に遡る。世界的な金融危機は長引き、多くの国々が財政上の悩みを抱えていた。そして20世紀の世界恐慌と同じようにブロック経済が発生した。以前のそれと異なったのは、発端がクラウドコンピューティングであった点だ。まず他国のクラウドサービスの利用を禁じる法案が次々と成立した。その次にデータの相互の乗り入れを認める条約が成立し、世界はいくつかのクラウド・ブロックに分割された。

それとは直接関連のない動きとして、サイバー戦争の前哨戦のような出来事が相次いで発生した。それはクラウド・ブロック間の抗争となり、hot-warでもcold-warでもない、warm-warと呼ばれることとなる。各国は敵国へのサイバー攻撃の攻勢を強め、IT企業は「死の商人」として潤った。

そしてIT技術者が立ち上がる。20xx年y月z日。世界中で同時多発的にIT技術者がストライキを行う。そして世界中のITサービスを人質に、かねてより建設されていたウォーターフロントへの居住を成功させた。IT技術者の出国を許さない国があれば、既に立ち上がった技術者がサイバー攻撃を加えるか、国家にとって存在を認めることができないような情報を提示し恫喝する。また、強力なコンピューティング資源を持たない国は、クラウドヘイブンのハードウェアの中継輸出拠点の役割を担ったり、ネットワークサービスを提供したりすることで他国を出し抜き優位に立とうとした。

あらゆる国があらゆる思惑であらゆる他国を出し抜こうとした結果、ハードウェアの製造装置と資源、そしてソフトウェアの開発、これらに必要なもののすべてがクラウドヘイブン一箇所に集積した。これはクラウドヘイブン首脳による事前のシュミレーションのとおりの結果であった。これによりwarm-warは集結することとなる。各国はクラウドヘイブンと呼ばれる新国家より各種ITサービスの提供を受け、必要な金属資源を輸出し、医療や食事など生活に必要なサービスを支給するという契約関係を構築することになった。

世界の国々は最強の強みであり最弱の弱点であるもの、すなわちデータを1箇所に預けるという運命共同体になることで戦争を退けることに成功した。そして永遠と思われたこの新たな世界地図=クラウドヘイブンは、女性技術者の増加を求める革命により1年後に崩壊した。

というオチはさておき、シーランド公国に構築されかかったデータヘイブンのように、またタックスヘイブンのように、法的な何か大切なものが欠落している国に「好ましくない」データセンターが建つことは十分予想されます。まずは身近なところでエロ系のデータから始まり、経済犯罪、テロ、などと拡大していくのではないでしょうか。

世の中のIT技術の多くを先進国が抑え、その多くが極めて厳しい輸出管理体制に組み入れられているとは言え、一世代も二世代も昔の技術でも相当に高度な計算が行えてしまうという現状を見つめ直していく時が来ているのかもしれません。また、PGPの例が示すように知識やwebサービスは輸出管理が非常に難しいという問題もあります。「クラウドのリスク」でなく「負のクラウド化」についてはこれからも注意していきたいと思います。

yohei

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山口 陽平

山口 陽平

国内SIerに勤務。現在の担当業務は資金決済法対応を中心とした資金移動業者や前払式支払手段発行者向けの態勢整備コンサルティング。松坂世代。

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