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成迫さんがこのようなエントリを書いておられました。

http://blogs.itmedia.co.jp/narisako/2009/11/post-70f3.html

電気自動車に先駆け電気自転車が既に普及段階:成迫剛志の『ICT幸福論』:ITmedia オルタナティブ・ブログ via kwout

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中国のフル電動自転車についてネットで調べてみたところ、このような状況のようです。

  • ナンバー不要
  • 免許不要
  • フル電動機能もあり、全く漕がなくても進むことができる
  • ペダルを漕ぐこともできる
  • フル電動機能では時速20キロメートル以上は出せない
  • 日本でいう原付バイクは渋滞や大気汚染につながるので新車台数が厳しく制限されている
  • 都心部では自転車専用の車線が整備されている
  • 駐輪場の整備は進んでいない

中国では数千万台規模でフル電動自転車が普及しているそうです。それに目をつけた日本のいくつかの企業(というか個人商店というか)が輸入して「私道やサーキットで楽しむ」という名目で販売しているようです。一部は悪質な販売があったために摘発されたようですね。私も合法ならぜひ欲しいです。

これに対して日本には電動アシスト自転車があります。電動アシスト自転車、自転車、原付を取り巻く環境はこのような感じでしょうか。

  • 原付ならナンバーがいる
  • 原付なら免許がいる
  • アシスト自転車は技術の進歩によりモーターやバッテリーが軽量化され、アシスト力も強くなっているらしい。
  • 「漕ぐ」というのは「アクセルを吹かす」のと同じインターフェースの一種に近づきつつあり、欠点でなくなりつつある
  • 時速24キロメートル以上になるとアシストがOFFになる
  • 市街地での原付の駐車禁止も厳しくなりつつある
  • 自転車専用の車線は絶望的
  • 駐輪場の整備はオフィス街ではジテ通の人を対象に徐々に進みつつある。住宅街でも地下駐輪場などが充実しつつある。(中国産の安いママチャリの輸入が増えたことで放置自転車の問題が悪化したため)

(2006年2月14日のYAMAHA MOTOR TECHNICAL REVIEWなどを参考にまとめました)

中国といえば一昔前は人力の自転車が定番でした。それが収入が増えたことにより原付バイクが増えました。台北などでも起きた現象なのですが、都市部が発展すると働き口を求める人が集まる上にオフィスも増えて中心部の地下が上昇します。すると住居は中心部から辺縁部に押しやられるために電車も道路も混雑する、という流れがあるようです。原付バイクも道路を走り抜けている間はいいのですが、渋滞で多くの原付が集まって滞留してしまうと大気汚染を起こします。特に排気量の小さなエンジンはストップした状態から動き始める時に見た目にも多くの煙を吐きますね。渋滞する信号の近くに住んでいたらたまったものではないでしょう。

そういった事情により中国ではナンバープレートの発行枚数を制限しました。それによりナンバープレートがオークションに出回り高値がつくなど中国らしい展開もあるようですが、原付の代わりにフル電動自転車が普及しました。また、自転車専用車線が整備されました。(以前からあれだけ多くの自転車があったことを考えるとフル電動自転車に対応するためだけに最近できたというものではないかもしれませんが、詳細はわかりませんでした。)

もしフル電動自転車が日本で販売可能になったとしたらどうでしょうか。我々からすると中国製品は日本製品に比較して品質(信頼性)に欠けるような見方が一般的であるように思います。あまりアフターサービスにも期待できなそうですが、既に数千万台もの市場を持っている製品ですので不具合が連発するということも考えにくいように思います。

さらにこのような値段の事情もあります。

  • 中国では数万円でフル電動(1000元~5000元、日本円で15,000円~75,000円)
  • 日本の電動アシスト自転車は6万円から10万円くらい
  • 日本の原付バイクの新車の売れ筋は20万円弱

現在のままですと日本のアシストよりも中国のフル電動のほうが安いです。中国は日本向けに高めの価格設定をしてくることは考えられますが、それでも日本の電動アシスト自転車よりも安くするのが普通でしょう。しかし日本のメーカーはフル電動をアシストより安く売れるでしょうか。

技術的にはおそらくフル電動のほうが単純で安く作れるのでしょうが、利便性からすれば漕がずに済むフル電動のほうが消費者に魅力的に見えます。となるとフル電動より価格が高く、自分で漕ぐ必要のあるアシストは厳しい立場に立たされそうです。そうなった場合、アシストを値下げして安い国産アシスト、安い国産フル電動の2本立てて中国産フル電動に対抗すれば良い勝負になるでしょう。しかしこれまでに買った人に大きな不信感を与えてしまいます。また、国産アシストの値段を据え置きにして安い国産フル電動を投入すれば国産アシストが売れなくなってしまうでしょう。フル電動の参入を見送り、国産アシストをそのままの値段にしておいて、国産フル電動に何か素晴らしい価値をつければ中国製フル電動に対抗できそうですが、倍以上の値段差を埋める価値ってなんでしょうか。爆発死亡事故でもない限りは当局で独自の保安基準を作るなどして非関税障壁を設けるのが良いやり方になるように思います。

また、日本の電池メーカは世界でもトップを走っていると言われますが、その軽量で高性能な電池を中国メーカーと関係を作って中国向けに売り始めるかもしれません。そうなると、日本でフル電動が認可されるよりも前にかなり強力なライバルが誕生します。中国市場は数千万台ですから非常においしい話です。ひょっとしたら既に乗り込んでいるところがあるかもしれません。(成迫さんのブログにあるように中国のフル電動では鉛蓄電池がメジャーなようです)

前置きが長くなりましたが、日本でバイクが売れていないことがニュースとして流れました。対策として免許制度を変更し普通自動車の免許で125ccまで乗れるようにしてはどうか、という話もあるそうです。しかし都心部でのバイクは本当に駐輪する場所が見つかりません。住宅街でも自転車置き場には原付までしか置けないところや、原付すら置けないところも多いです。かといって自動車一台分のスペースを借りるのは非常にコストが高いです。今の状況では週末に移動用の足として使うことすら不便です。スーパーカブの50cc超などは都会生活でかなり使いやすいと思うんですけどね。

ではレクリエーションとしてのバイクはどうでしょうか。バイク用ETCが販売されたり、ソフトバンクモバイルのホワイトプラン携帯電話をトランシーバー代わりに通話しっ放しにしたりという追い風もありますが、ホテルなどの旅の目的地に屋根のついた駐輪スペースって増えているでしょうか。むしろ減っているように感じられます。安心してバイクを置けるのは高速道路のサービスエリアや道の駅くらいでしょうか。しかもこういったバイクは防犯に相当に気を使います。また、体感として盗難された場合に無事に帰ってくる率が非常に低いです。

こういうことがあり、私は大学卒業と同時にバイクを手放しました。日本製のバイク(といっても実用的なもの)はアジアから絶大な信頼を得ていますが、日本国内でバイクに乗る人、乗る場所が減った状態で、バイクメーカーに入社し良いバイクを作ろうという人が出てくるでしょうか。一旦は手放したものの、まだまだバイクが好きな自分は心配に思っています。

中国では通勤渋滞や大気汚染の緩和策として電動自転車を優遇し、見事に花開きました。もしアメリカやヨーロッパで温暖化対策として電動自転車が注目されることがあれば、日本を差し置いて大きな存在感を出せるのではないかと思います。反対に日本では、以前は一部のマニアな人の楽しみだったロードバイクが流行しています。電動アシスト自転車も成長しています。しかしバイクは衰退しています。

日本での電動アシスト自転車は「規制」があって誕生した製品ですので、なにかうまいことやらなければ外国で受ける可能性は低いと思います。ヨーロッパでは自転車が楽しみとして愛されていますので、そのあたりは「自転車は漕ぐものだ」という思いからフル電動よりもアシストを好んでくれるかもしれません。ちなみにうさぎのミッフィー(オランダ生まれ)も自転車が好きだそうです。(あの体型ですが。)

反対に日本のフル電動に対する規制が無くなれば、いつでも電動自転車の脅威にさらされる可能性があります。いかに日本の技術力が高いとはいえ、既に数千万台の実機をリリースしている中国と勝負するのはなかなかしんどいものがあるように思います。上のPDFによればヤマハから中国向けにフル電動が発売されているようですが、成迫さんのブログによればまだ一角を築いた、とは言えないようです。

都心部では「ジテ通」としてシャワー、更衣室つきの自転車預かり所ができ始めています。また、一部自治体では試験的に自転車専用道を整備するという動きもあるようです。中国でフル電動自転車が普及する過程でも専用道路整備にナンバー、免許不要という環境は大きかったように思います。日本、中国に関係なく、物を売るためには価格だけでなく楽しみや便利さが重要ではないでしょうか。とすればバイクを売るためにはバイク置き場の整備、これに尽きると思います。(あと高速道路の値段が自動車を基準として割高では……)

yohei

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山口 陽平

山口 陽平

国内SIerに勤務。現在の担当業務は資金決済法対応を中心とした資金移動業者や前払式支払手段発行者向けの態勢整備コンサルティング。松坂世代。

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