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ビジネスブログ勉強会という会合に参加してきました。

twitterは個人にとって魅力的であるものの、ビジネスの道具として使うにはなかなかじゃじゃ馬なところがあるように思います。

  1. すべてが「タイムライン」に存在する
    ブログが単独で存在するのと異なり、タイムラインにこそ意味があります。しかし個別のつぶやきにはパーマリンクが設定されます。特定の発言がクローズアップされるようなことがあった場合、その時のタイムラインがこうだったので、という説明が難しくなるかもしれません。個別の発言がAPIによって表示される場合、自己紹介欄に記述した免責事項などが閲覧者の目に届きにくいという利用形態もこの問題を悪い方向に導く力を備えています。
  2. アーリーアダプターが多い
    例のハッシュタグ衝突の件のように、少しの間違いは「新しいツールを満足に使いこなせない」という意味につながります。それが無視される業界であれば問題ないですが、先進性を必要とするような業界では大きなマイナスとなります。
  3. キャズムを越えた後の雰囲気
    現在はITに詳しい人が多く参加し、リアルなつながりを軸にしてtwitter内に緩やかな結びつきを作っています。同じような傾向を持った人々が集まっているところに、「twitterがおもしろいらしい」という感じで一時の流行に乗った人が多数やってくると「雰囲気」が変わるかもしれません。そしてtwitterにとって雰囲気はとても大切な要素となっています。
  4. すべてがtwitterドメインで展開される
    ブログが自社サイトに開設できるのと異なり、twitterにすべてを委ねなくてはなりません。障害などで長時間に渡ってサービスが停止した場合、FriendFeedにいくのか、といったことを決めていなければどうにもなりません。優先的にIDを取得されてしまい、公式アカウントの誤認が発生する危険性も指摘されています。
  5. ユーザの自治が進んでいる
    twitterコミュニティでは怪しいDMが流行したり、虚偽の情報が流れた場合もユーザ間で情報を補完し合って乗り切ってきました。ハッシュタグの使用では衝突を起こしつつも重大な混乱は生じていません。法人として参画した場合に、こういった自治活動への参画には個人利用とはまた別の難しさが生じると考えられます。(例えば、個人よりも大きな責任が必要とされるのか、など。)
  6. スピア型攻撃
    企業の偽アカウントが生まれたとしても、企業の公式サイトからのリンク有無で真偽を判断することができます。しかし反対に、企業の公式アカウントや、企業の一社員の私的アカウントに対し、関係者を装った偽の個人アカウントを使った攻撃が行われる可能性が考えられます。こういった攻撃に対して知識のない社員を表に出すことはその危険を増大させます。
  7. 特別な力を持っているわけではない
    twitterでないとできないこと、ということは非常に少ないです。しかし今の日本のtwitterエコシステムで起きている現象は、同じものを作るのが非常に難しいほど発展が進んだ状態になっています。それを単に「人がいっぱいいる」というレベルに捉えてセールスの対象にすることはtwitterユーザからの失望を生むでしょう。反対に、これまでのWebマーケティングで行えなかったtwitter的なプロモーションを自社の手札の1枚に加え、総合的なマーケティングを進めることができる企業は有利に物事を進めることができると思われます。
  8. 短縮URLによる断絶
    twitterクライアントでは短縮URLのリンク先を解決してくれるものもあり、さほど不便は感じません。その一方で企業サイトでアクセス元の解析を行ってもtinyURLやbit.lyが表示されるだけになってしまいます。自社でtwitterアカウントを取得し、リンクの被クリック回数がカウントできる短縮URLサービスを使用するなどしなければ、アクセス解析の精度を下げることになります。
  9. ユーザと非ユーザの断絶
    twitterユーザは、好みの企業アカウントをフォローすることで最新情報が得られるなどのメリットがあります。しかしtwitterユーザでない人が企業アカウントのHTML版のページを見てもRSS以上のおもしろさがあるわけではありません。マネタイズの過程で「企業アカウントだけは外部ユーザも被フォローが見られる」などの実装が行われるかもしれません。
  10. フォローに関する数字が見えすぎる
    同じような業種、同じようなサービスをしていても企業により被フォロー数が異なってくるでしょう。これは成功した企業であればうれしいことですが、それ以外の企業にとってはプレッシャーになります。また、現在のところ新規入会者に対する「おすすめユーザ」の機能が被フォローの多いユーザをより多くする傾向が観測されています。こういったフォロー数資本主義が進めば最初に被フォロー数に差をつけられた企業のやる気が失せ、アカウントが休眠してしまうかもしれません。

+ タイムラインは、エンジニアとって非常に設計に気を使う仕組みだと思います。どこまでスケールアウトが可能な構成なのか、という点も気になっています。

yohei

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山口 陽平

山口 陽平

国内SIerに勤務。現在の担当業務は資金決済法対応を中心とした資金移動業者や前払式支払手段発行者向けの態勢整備コンサルティング。松坂世代。

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