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ITパスポート試験の勉強をどうしたものかと悩んでおられる方は多いのではないでしょうか。
まったくのカタギの方はITmediaの中でもplus+D界隈を回って帰ると思いますのでエンプラに近いオルタナティブブログに来てこのエントリを読んでもらえるかどうかはわかりませんが、自分なりにITパスポート試験について考えてみました。
なおこのエントリでは特に「○○社の××という本がおすすめだ」というような意見はありません。試験制度の概要と、本の選び方の一般論について自分の経験からアドバイスをまとめています。
まずはITパスポート試験の概要です。
ITパスポート試験は今回新設された試験です。対象は一般の人です。初級シスアドが一般的名企業のシステム部門、すなわち開発サイドでなくユーザサイドの人を対象にしていたのに対し、この試験はシステム部門以外の人の受験を想定しています。
例えば2進数や16進数などはコンピュータとしての基本的な考え方です。SEの中にはバリバリ2進数に慣れ親しんで65536という数字に思わず興奮してしまうという人だとか16進数の掛け算が暗算でできるという人も少なくありません。これらは普通の人には縁遠いものですが、ユーザ企業のシステム部門を担当する人、すなわち初級シスアドが想定していた人物像ならば多少知っておいて欲しいと思うところでした。
対してITパスポート試験の受験者はITについて興味を持ったり活用したいという気持ちのある方と思いますが、特にコンピュータの動作原理のレベルまで把握しておく必要はないかと思います(注意:ITパスポート試験に2進数関連の問題が出ないといっているわけではありません。)別に2進数などがわからなくてもCRMやSOAというやり方はわかりますし、インターネットだってできます。ITパスポート試験はそのへんのところを割り切って初級シスアドの小難しさを取り去った試験です。
試験のやり方ですが、QAサイトによると
165分の試験で100問の問題が出題されます。すべて多肢選択式(四肢択一)の問題で、経営全般(ストラテジ系)、IT管理(マネジメント系)、IT技術(テクノロジ系)の3つの分野から幅広く出題されます。
とのことです。また、内容については
出題される100問は、88問の小問(1問の中に1つの設問がある形式)、3問の中問(1問の中に4つの設問がある形式)から構成されます。中問はケーススタディ的な問題です。
とあります。ITパスポート試験紹介サイト <http://www.jitec.jp/1_00campaign/index.html>より。
ちなみに広報に真鍋かをりあたりを起用してくるかと思いきや、なんと堀北真希を起用してきました。気になったのは上のITパスポート試験紹介サイトの写真と堀北真希の公式サイトにある写真が一部かぶっていることです。同じ衣装で別カットの写真や、同じ写真がトリミングされて使われているようなところがありました。同時に見るとJITECの公式サイト内のコーナーなのに画像を無断転載して作ったような錯覚をしてしまうのがおもしろいです。
画像つながりで言えばJITECより配布されているITパスポート試験のシラバスがあるのですが、その中のサンプル問題にこんなのがありました。
これ、読んだらきちんとhttp://www.jitec.jp/となってるんですね。驚きました。 肉眼でQRコードが読める人はまずいないと思いますので、「答えはウです」とでも書いてあったらおもしろいと思いましたがまったく読めない可能性もゼロではないので冒険したらいけないんでしょう。しかし肉眼でQRコードが読めたら1問で50点くらいあげても良さそうな気もします。
さて参考書ですけれども、これまで初級シスアドに何度か挑戦して受からなかった人はそのままそれを使ったらいいと思います。新しく買う人は何を買ったらよいかわからず困っていると思います。
自分の経験からすると、まずは薄い問題集を買うことをお薦めします。これを答えを一切見ずに最後までやります。時間がなかったら「偶数の問題だけやる」など全体から均等に問題を抜き取って回答します。これは自分の能力のサンプリングです。正答率などを計算して自分の得意分野と苦手分野を分析します。
そして次に教本を選びます。これは厚いのがいいと思います。そして分析して把握した自分の弱みを補う本を選ぶといいでしょう。教本を3回くらい繰り返して勉強します。
そして厚い問題集を1冊買います。これは答えの解説を目安にして選びます。ポイントは2つあり、1つは解説が理解できること。もう1つは4択中、正解ではなかった3択の解説がしっかりしていることです。正解ではなかった選択肢も覚えることができると能率がぐっと良くなりますので、これは重要なポイントになります。
あとは繰り返しやるだけです。薄いのは会社の行き帰りなどの持ち歩き用で、厚いのは家用にしたら断片的な時間も勉強に向けることができます。会社用の机に厚いのを1冊追加して周りを威嚇してもいいと思います。もし追加で買う分については、基本情報技術者試験の新制度に対応したものを1冊買うか、制度の改定により価値が暴落してしまった旧基本情報か旧初級シスアドの問題集を使うとよいかもしれません。自分なら旧区分対応の書籍をヤフオクかマーケットプレイスあたりで買い叩いて風呂の中ででも読むと思います。
今Amazonで「ITパスポート試験」を検索してみると教本も問題集も400ページ前後というものが多いようです。あまり薄い厚いにこだわる必要はないと思いますが、個人的にはサンプリングして自分の実力を把握することは重要だと思いますので厚い問題集から何らかの方法で自己テストをしてみると良いでしょう。
特定の出版社に肩入れするわけではありませんし中身も見ていないので責任を持ったことは言えませんが(のでリンクは貼りませんが)AmazonのITパスポート試験関係の本の中で好きな出版社はアイテックと翔泳社です。アイテックは在学中の基本情報と入社直後のソフ開に合格することができた原動力です。その後、アプリとDBもアイテックの教本を中心にして合格しました。翔泳社はプロマネとアナリストの合格に役立ちました。というかプロマネとアナリストは翔泳社の教科書兼問題集を1冊ずつしか買っていません。それで両方ともその年の最年少で合格できたのだからラッキーな時代だったと思います。
そういうわけで
応用情報技術者とソフトウェア開発技術者の難易度はどちらが上になるでしょうか。
ソフトウェア開発技術者のおさらい
まずは基本データから見るソフトウェア開発技術者試験の全体像ですが、
- 合格者は年に1万人
- 合格率は20% (平成20年度秋のソフトウェア開発技術者試験の合格者が33037人中6225人で18.8%)
- 合格者の平均年齢は28歳前後
- 受かる人は中学でも受かる
- 30代後半から合格者が悪化する
という感じです。特に何の試験だとは言いませんが省庁の担当でない試験の中には金さえ積めばもらえるような資格、反対に言えば合格のために数十万円のセミナーの受講が事実上必須となった資格が多い中で6万人に1万人しか合格しない試験があるとはシブいことするものだと思います。それでは新試験制度の影響を考えてみましょう。
午前1、午前2の分割による影響
新試験制度により、午前試験が2つにわかれます。午前1の試験は共通となり、合格を2年間免除されます。これまでに経緯からするに2年間とは次の3回分と思われます。(現行、SW、AE、PM、ANの合格者はAE、PM、ANの午前試験を免除されるが、例えば2006年秋のAE合格者が午前免除となるのは2007年秋までであり、2009年秋は免除されない。)
これにより、まず午前1を突破して午前2と午後を後回しにするという受験が可能となります。1点集中の体力が不足気味な人、業務多忙でまとまった試験対策ができない人には楽になります。すなわち、若手不利、Not若手有利な傾向になると思われます。
午後試験が統合されて2時間30分の長丁場になることは若手の体力が有利とも考えられますが、日夜数時間に渡る大レビュー会などに親しんでおられる現場の方々におかれましては150分など煙草の1本分くらいにしか感じないものと思われます。
反対に、午前1試験の共通っぽいパートではカルトQとまでいかなくともややマニアックな出題が出ます。マニアックといっても業界の人にとっては常識レベル、学生レベルでも理系(特に情報系)なら知ってて当然、その他の学生は知ってたらすごい、中高生なら知っててオタクというような問題です。記憶に残っているところでは「耐タンパ性」ですかね。これらは現役バリバリで働いている人の得点の源ですので、新制度により若手有利、Not若手不利になる状況となりそうです。
範囲の変更による影響
これは2つのパートに分けて考えます。まずは変更がない分野についてです。現行のソフトウェア開発技術者の試験範囲から変わらない部分について試験の出題傾向が変わってくる可能性が高いです。原因はずばりITパスポート試験です。こちらは今まで対象としなかった層を対象にする試験です。これまでの経験からすると午前試験はあらゆる試験分野で一定の問題数が共有されるようです。DBの試験がソフ開に出たり、その逆もあります。ITパスポート試験の登場により大幅に問題プールが増やされ、そこから払い出される未見の問題が増えるでしょう。また、それらはこれまでと傾向の異なる可能性があります。こればかりは何も予測がつきません。これは業者の問題集も同じと思われます。業界の人が有利な問題が出るか、それともフレッシュな頭で学生が体系的に学んだ教科書的知識が有利となるか、どちらになるでしょうか。変に肩入れするつもりはありませんが、少なくともITECのソフトウェア開発技術者の教科書を5回くらい読めば漏らす分野を最小化できると思います。
そしてもう1点、追加される分野についてです。経営戦略、情報戦略、コンサルティングについての分野がパワーアップしてくるものと考えられます。これはやはり圧倒的に現職でSE的なポジションにいる方が有利になる分野と思います。一方で脱PG(典型的な)を目指すための資格取得という方の場合はつらい条件になるかもしれません。
初年度の影響
上でも書きましたが、過去問プールの大幅な見直しなど初年度ならではの不確定要素があります。これは何年も受験してきている現職の方にとっては萎える要素となりますが、反対に心機一転するきっかけともなるでしょう。また、いざというときの引き出しが広いのは現職でしょうから、学生や新米SEの受験者にとって数回分は厳しい展開が続くものと思われます。
最後に
先日センター試験が終わりましたが、大学受験などいろいろな分野で試験業者による分析が進みすぎる現象が発生していたように思います。情報処理技術者もその例外ではありませんでした。特にソフトウェア開発技術者の試験は過去問題を集中的に暗記することで午前試験が突破しやすい傾向にありました。また、その範囲が広大であることから丸暗記する時間と、柔軟な頭を持つ若い学生の受験者のほうが苦労せずに合格できているように感じることがありました。
そういう自分も分析などしておりますが、今日の私の興味本位の分析レベルなら当たるも八卦当たらぬも八卦の無責任な意見ですし、問題そのものには踏み込んでいないのでセーフかと思います。
今回の試験制度の改革により、合格者像に何らかの変化が出るものと思われます。今回の試験については改革したら改革しっぱなしではなく、改革し、合格者像に変化がおき、その変化が業界にどういったインパクトをもたらしたかを測定できることが望ましいと考えています。これまで合格できる実力はあったけど午前試験がつらすぎて不合格だった人が合格できてよかったね、とか、学生が必死に勉強して在学中に合格してくるから新卒の質が上がり先輩社員への刺激になってよかったね、とかいう話を期待します。
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