« 2009年1月13日

2009年1月14日の投稿

2009年1月16日 »

タイトルの2つの単語を見ていたら少し不安になりました。

  • 2010年
  • クリッパーチップ

オバマ大統領はクリッパーチップを復活させようとしてるんだよ!!

Ω ΩΩ<な、なんだってー!!

という冗談はさておき、アメリカでは2010年までに、日本では2013年までに暗号の鍵の長さやアルゴリズムを見直し、強度不足が見込まれる 暗号はそれ以後使わないようにしましょうという話がまとまっているそうです。暗号の2010年問題と言います。

暗号は普通に生活してたらほとんど実感しませんが、ITの世界を支える大切なインフラとなっています。オルタナブログでもよく見ると何度も取り上げられていますし、身の回りで暗号が使われているところと言えば無線LAN、携帯電話、ブラウザ(SSL)、地デジ、SUICAにedyなどキリがありません。

暗号絡みでニュースになった話題としてパッと思い出せるのは

  • 無線LANで危険性が指摘されて久しい暗号方式を使用する携帯ゲーム機があり、家の無線LANのセキュリティを携帯ゲーム機用に下げてしまうことが問題となっていた。新型機の登場でやはり新しい暗号アルゴリズムに対応した。
  • 200台のPS3で偽のSSL証明書の作成に成功する。(ただしmd5。md5は日本でもアメリカでも既に標準でない。)
  • 次世代DVDの双方(HD-DVDとBlu-Ray)の暗号が突破されてコピー可能に。
  • 改造により地デジを何度でも録画できてしまう録画機が出回る。
  • ある会社向けのサーバ証明書が第三者に発行されてしまうミスが発生。

などなどがあります。

1番目と2番目についてはアルゴリズムの穴と計算力の向上が暗号を突破した例です。3番目と4番目と5番目については暗号アルゴリズムが弱かったわけでも、関係者が鍵をもらしてしまったわけでもないのにセキュリティ上の問題が発生しました。(なんだか一休さんのトンチみたいな日本語ですが。)3番目については暗号を解くためのプログラムの実装があまりよくなかったようです。4番目については暗号を解く部分というよりも解いた後のデータの処理があまりよくなかったことが原因のようです。5番目については恐ろしい人的ミスとしか言いようがありません。

どれだけ完璧な暗号を作っても運用がよくなければセキュリティ上の問題が起きやすくなります。手元も本では暗号が破られる原因は技術が3割、運用が7割とありました。最近の暗号は理論が公開されて厳しい検証を受けていますから、そういう意味では最近の暗号はほぼ運用のせいで破られていると言っても間違いではないでしょう。現に2010年問題では鍵の長さなどを変えるだけでDESやRSAの基本アルゴリズムが引退するわけではありません。 と言っても暗号アルゴリズムがいつまでも生き続けることもなさそうですので、新しい暗号の開発は続けられています。例えばハッシュ関数は2013年に新しい標準技術を策定することを目標にアルゴリズムの公募が行なわれています。

こういった暗号の見直しに際してクリッパーチップのような話が復活しないだろうかと少し不安に思っています。単なる勘ですが、何の策も無しにイラク戦争(テロとの戦い)から手を引くというのは頼りないように感じますので、その予防策が導入されることが考えられるのではないでしょうか。例えばアメリカ国内で暗号を使う際は鍵を供託してください、という話が復活しないでしょうか。

最初は暇つぶしの妄想に考え始めたのですが、スラドで下のようなニュースを見ると国家が今以上に個人の暗号をコントロールするということがあり得ないとも言い切れません。むしろ地デジやCCCDなど情報のコントロールについて従順な傾向のある日本のほうが危ないかもしれません。

先の大戦では日本軍の暗号がダダ漏れ過ぎてアメリカ軍の偉い人は解読資料を毎日大量に読まねばならず「もう疲れた」と愚痴るほどだったと言います。現代の暗号オンチは敗戦でなく政府のビッグブラザー化を招いてしまうかもしれません。そうならないよう暗号に関する動向に注意していきたいと思います。

yohei

« 2009年1月13日

2009年1月14日の投稿

2009年1月16日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

山口 陽平

山口 陽平

国内SIerに勤務。現在の担当業務は資金決済法対応を中心とした資金移動業者や前払式支払手段発行者向けの態勢整備コンサルティング。松坂世代。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
カレンダー
2013年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
yohei
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ