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ゴルフのプレー中に発するかけ声に「ステイ」というものがあります。同じようなので「バイト」とか「チュー」というのがあります。

年末に高橋徹さんが「Still have a chance 」という言葉を紹介しておられました。ゴルファーの宮里藍さんの言葉だそうです。

それを聞いてタイトルの「ステイ」という言葉を思い出しました。ゴルファーの方ならご存知と思いますが、ゴルフではボールに「止まれ」というときに「ストップ」ではなくステイと言います。特に誰の言葉でもなく、「ナイスショット!」や「フォアー」と同じくただのかけ声です。言われてみると自分で打って飛ばしたボールにストップと叫ぶのは少しおかしい気もします。

「強く打っちゃったのは悪かった。でもボールさん。せめてグリーンの端でとどまって。お願い。」

という気持ちなんですね。同じようなニュアンスで「バイト」や「チュー」なんて叫ぶ事もあります。バイトもチューも噛みつけ、ということでボールに向かってグリーンに噛みつけとハッパをかけるニュアンスなのだと思います。クラブとボールとのインパクトは終わり、既に自分の手を離れて飛んでいっているボールに向かって「ストップ」と言わず、せめて「ステイ」してくれと叫ぶところがなんだかかっこよくてこの言葉が心に残っていました。

今年のような年は「ステイ」の年だと思っています。もはやこの景気後退の動きは決定的なものであり、大統領が変わったり政権が交代したりで素晴らしく効果的な政策が生まれたとしても、その日にすっきり復活してみんな笑顔でハッピーというようなものではないでしょう。むしろ不安材料が無くなってもしばらくオーバーシュート気味に低迷が続いてしまう可能性もあります。

そういった流れに対して「止まれー」と言うのは無理があります。景気後退の流れを止め、症状を軽くするための努力を否定するつもりは毛頭ありませんが、その努力が機関車を素手で止めるようなものになっては仕方ないと考えています。必要なのは反対向きに動き出した機関車に乗り込んでブレーキを引き、石炭をくべて前向きに走らせることです。蛮勇ではありません。無理なもんは無理です。

ですので今の後ろ向きな経済の動きに対しては無理な「ストーップ!」でなくせめて「ステイ!」と叫びたいところです。グリーン上で止まってさえくれれば、遠いところにつけてしまってもパターで挽回できる余地があります。まだロングパットで済むのです。ところがグリーンから落ちてしまい、そこがバンカーやラフだったりするともはやパッティングでは済みません。チップイン狙いのリカバリーショットとなってしまいます。

グリーンからボールが零れ落ちそうだという問題について、「ストップ」は自分のせいにせず棚に上げた感があります。「ステイ」は自分の非を一部認めて成り行きを見つめる冷静さがあります。ショットからボールが停止するまでは数秒しかありませんが、その数秒をイライラと過ごすか落ち着いて過ごすかで大きな違いがあるでしょう。

ましてやその次のショットは悪いライから打つかもしれないのです。既にショットは放たれており、どこにボールが止まるかは自分の力の及ばないところにあるわけですから、ハラハラするのは得なことではありません。かといって次の一打は止まってくれないと作戦が立てられませんから、特にすることもありません。慎ましく「ステイ」と祈っておくのがベターと言えるでしょう。できれば他人の(特に対戦相手の)ショットに対しても「ステイ」と言ってあげられるくらいの余裕が持てれば良いと思います。

政治めいた主張のようでもあり、ゴルフ雑誌の空きスペースを埋めるためのストックの記事のようでもありますが、これらは世の中に対する意見でなくて自分へのメッセージのつもりです。現状維持というぬるい気持ちでの「ステイ」でなく、環境が悪化しつつあることを認めて冷静になるためのステイ。と書くと「生きて帰るためのサイコードファイナル」みたいですが、2009年はその言葉を胸に頑張っていこうと思います。 

yohei

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山口 陽平

山口 陽平

国内SIerに勤務。現在の担当業務は資金決済法対応を中心とした資金移動業者や前払式支払手段発行者向けの態勢整備コンサルティング。松坂世代。

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