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この経済危機で大学4年生の内定が取り消されるという事が起きているようです。

 学生の将来のためを思って

「もしかするとうちの会社も『危ない』かもしれないので、あなたの将来を思って内定取り消しです」

なのか、それとも反対に

「うちの会社の生き残りのために内定を諦めてくれ」

なのか、どちらが中心でしょうか。聞いたところでは新卒採用には1人あたり100万円必要になると言われます。もっと安いところも高いところもあるでしょうが、負担が軽いものとは言えません。また、新卒を1年見送ると翌年の新入社員はすぐ上の先輩がいなくなってしまうなど、年齢別に見た社員のピラミッド構造に歪みが生じてしまいます。言うまでもなく学生とトラブルになる可能性もあります。

こうした背景の中で内定を取り消さざるを得なくなるということは、企業に切実な事情があってのことなのだと思います。それほどの事情ならやはり全社のように内定を取り下げてもらって幸せなのかもしれません。

さて、かく言う私は大学4年の冬に生まれつき病気を持っていたことが発覚しました。判明したきっかけは会社から受けるよう指示された「入社前健康診断」です。健康診断の1か月前にインフルエンザで病院にかかった時も異常は発見されず、私自身全然気付いていませんでした。そしてある日、人事の方から電話がかかってきました。

「健康診断の担当医から電話があった。内定とか入社後のことは一切心配しないでいいから、まず病院に行ってください。」

と。いきなりそう言われたので言葉通りに会社のことなど考える余裕もなく病院に行きました。そして1ヶ月ほど入院するわけですが、ベッドの上で1人落ち着いて考えてみるとだんだんと自分の将来が心配になってきます。「ああ。入社前に印象が最悪だ」とか「病人は他の人と区別されて社史編纂室のようなところに配属だろうか」などなど。

ところが配属されてみると別に邪険に扱われる事もなく普通に配属され、さらに上司は病気について予習までしてくれていました。おかげ様で今はすっかり病気も落ち着きました。

さて人事に入院を知らせると「内定を取り消すことはないから、体を治してください。4月1日に間に合わなくても心配いりませんから無理しないで下さい。」とのことでした。卒業旅行にも行けず、サークルの最後の合宿にも行けず、有り余る時間をベッドの上で過ごしたわけですが、私は入社後のことを考えて情報処理試験の勉強をすることにしました。病人特有の歪んだ思考で「入社はできたとしても、何か努力を見せないと会社を追い出される」と思い込んでいたからです。

その時に勉強した事は、今とても役に立っています。(入社後に少しだけ再入院したのですが、その時に今の妻(当時はただの同期)がお見舞いに来てくれたり。)むしろあの経験が無かったら、「大学を卒業して会社に入社する」ということを今ほど大切に感じられないだろうと思います。入院するのは二度と嫌ですが、今となってはその思い出も人生のワンシーンとなりました。

私は内定を取り消されずに済んだわけですが、その時に足掻いたことが今になって役立っています。この経済危機で内定を取り消されてしまった方々に置かれましても「人生どうなるものかわからない」の言葉を胸に、自分の将来を切り拓いていって欲しいと思います。

yohei

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山口 陽平

山口 陽平

国内SIerに勤務。現在の担当業務は資金決済法対応を中心とした資金移動業者や前払式支払手段発行者向けの態勢整備コンサルティング。松坂世代。

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