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民主主義は、多数決で運営されています。ベンチャー企業も会社法に基づく法人なので、多数決がよく使われます。ただ、ベンチャー企業の意思決定を多数決で行うと様々な弊害があります。

まず、斬新なアイデアが潰される、ということ。斬新なアイデアは個人の創意に由来があります。それに対して、組織的な検討を重ね、創意の背景に無関心な人々が勝手な意見を加えることで、尖ったアイデアは無難なものになっていきます。ましてや、みんなの意見を集約した見掛け倒しの集合知を多数決で決めると、誰の意見でもなくなってしまいます。最初の提案者は自分の提案とは違うといい、意見を述べた人は単に意見を述べただけ、ということになります。政治的決着が、玉虫色になる道理でもあります。

第二に、玉虫色の決着は、責任回避のロジックであり、誰も実行に対して責任を負わなくなり、ほとんどの場合、実行されずに闇に葬り去られます。そういうことを繰り返していると、わからない世界で勝負しているベンチャー企業は衰えていきます。正解かどうかはわからない他と違った(尖った)アイデアをスピーディーに実行してみることが、ベンチャー企業の成功法則です。ほとんどは失敗に終わりますが、失敗から得られるものが財産になっていきます。本当の責任は、失敗という結果ではなく、不実行というプロセスに生じています。

第三に、表面上は多数決でも実質は社長の意思で決まっています。実際に、社長の意思とは異なる意見を言える人が、ベンチャー企業の中にどのくらいいるのでしょうか?社内の人であれば、反対することで生じる他への影響を心配するでしょうし、社外役員といっても多くの場合社長の依頼で就任した訳ですから、反対はできません。結果的に、多数決は責任分散の手段になっており、社長の独裁制を隠蔽するツールになっています。#社長の独裁制が悪いという意味ではなく、隠蔽して誤用されることが悪いという意味です。

最後に、3番目の弊害とも関係あるのですが、多数決を多用すると社長の腰巾着が権力を持つということです。社長の意に反しても意見が通らないのであれば、受け身で社長の考えばかり意識している人の方がそれなりの地位を得ます。場合によっては、ユーザサイドの意見が軽んじられ、真剣に考えている人のモチベーションは、イエスマンに潰されます。小さくても派閥が出来てしまい、群れに属することが重要視され、尖った意見を言う人は孤立してしまいます。

しかし、実際には多数決が多用されます。以上の弊害があることを経営者は真摯に受け止め、自戒の念とすべきでしょう。群れたがる人々からは、革新的なアイデアは出て来ません。民主主義で多数決以上に大事なことは、少数意見の尊重です。革新的なアイデアが自由に出てくる環境を育みながら、実行段階では共感する心を生かしていく工夫に心を配ることが、経営者には求められていると思います。

tsuji2005

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辻 俊彦

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ベンチャーキャピタリスト。専門分野は、メディア系、ITサービス系。

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