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鉄板病 2007/11/21 BOOKS

おちまさとさんの最新作「鉄板病」は、最近の出来事を見る上で大変参考になりました。

鉄板病とは、「鉄板」(鉄の板。その堅さから転じて、手堅い、ハズレがない、間違いがないこと)なものだけを求め、「鉄板」でいたいと過度に欲する病気。初期症状として、常に正解ゾーンにいたい、人の考えを鵜呑みにする、損に敏感、記憶を喪失する、などが見られる。
と著者自身で定義づけられています。「ハズさない」「失敗しない」が合言葉になっている「鉄板ブーム」だと今の日本を捉えられています。

例えば、「レストランを決めるとき、グルメサイトのレビューを読む」という完璧志向(ハズさないように求めれば求めるほど、より一層ハズさないでいることが難しくなる)、「チーズフォンデュはおしゃれだと思う」という思考停止状態、「「どんだけ~!」を日常的に使っている」という分かったつもりになっている状態などを鉄板病とされています。

給食費を払わない親に関しても、

「払う?払わない?どっち?」と周りをキョロキョロ見回して、払わない人がぽつぽついるのを認めた途端、「払ったら損しちゃうじゃん!」と結論づけるのです。周りできちんと払っている親御さんのことはまるっきり無視します。払っていない人、自分より得をしている(かもしれない)人しか視野に入ってこないのです。(81ページ)

という明解な説明で、
給食費を払わない親たちにとって、正義は自分にあります。本人にとっては、損をしないための選択なのですから、完璧に正しいのです。ですから、自分の行為の正当性明確にさせるために、きっちりと理論武装します。「そもそも義務教育というのはですね」なんてことを滔々と語ったりします。(中略)つまり、払わずゴネていれば給食が出てきて「お得」だ、という形になってしまっています。(82ページ)

というユニークな現状認識をされています。給食費を払わない親の理屈がどうも理解できなかったのですが、この説明には一理あるな、と思いました。
「ゴネれば得」というところから始まった鉄板病的志向は、「ゴメないと損」という形にエスカレートし、さらには「ゴネるのがカッコイイ!」にまで変容していってしまいます。(84ページ)

また、小泉劇場に関しても、

小泉劇場が悪いのではなくて、それを嬉々として全面的に受け入れてしまった日本人に問題があったのです。(147ページ)

として、「断定的に言い切る人が好き」という傾向があった(146ページ)ことを挙げています。

次に、画一的な思考に陥りやすい鉄板病の治療法として、「イマジネーションを大事にするというスタンスが必要」(183ページ)とされています。また、一人の小ささに無力感を感じることなく、「ひとりの「やってみるかな」という行動は、連鎖したときにはとても大きな影響を与える」(193ページ)として、第一声を上げることの重要性を説いています。

最後に、

鉄板も大事だけど、挑戦もアリ。どっちもアリ、でいいんじゃないでしょうか?そういう文化でいいんじゃないかな、と思うのです。(219ページ)

という言葉で締めくくられています。鉄板病から遠いところにいるには、「志を高く持つ」ことが必要だと強調されいます。


tsuji2005

株式会社パイプドビッツの社長である佐谷さんのインタビューは、とても刺激的な内容でした。

インターネットのすごさはデータベースのすごさにあって、この業界でビジネスをする以上、データベースは避けて通れないなと。
つながっていることよりもデータベースのすごさに着目したのは慧眼だと思います。情報産業と呼ばれる所以でもあります。
世の中の事象の中には、正しい答えなんてないものばかりです。自分で答えを作る、答えを設計する、それからこの辺でいいかなというゴールイメージも自分で設定するわけです。締め切りが来た時点での到達点が評価される世界です。力があってもなくても、締め切りの時に出した答えが評価されます。どれだけ努力したかどうかは評価の対象になりません。
正しい答えを探すことや、締め切りのない仕事の価値のなさが的確に表現されていると思います。どれだけ努力したかどうかや力のあるなしを評価しがちですが、あまり意味のないことでもあります。
好きでやっている人は、労を惜しまないから強いです。どちらかというと、一生懸命やっているうちに好きになっていくというケースの方が多いのではないでしょうか。いずれにせよ、最初からお金のことばかり考えてやるようになったら、労を惜しまずに取り組むのが難しくなっていくように思います。
仕事を楽しむことの強みが、きちんと表現されています。労を惜しんでいるようでは、卓越した成果はあげられない、と思います。
任せてもらうためには確たる自信がなくても、リスクをとって「できる」って言わなければなりません。これを言って、実際にやりきった人が伸びるんですよ。リスクを取らないとチャレンジになりません。そしてチャレンジしないと成長しません。成長しないと面白くありません。
リスクを取り、チャレンジすることの楽しさが的確に表現されています。やった事がないことを「できる」って言えるのは、本当に重要だと思います。
tsuji2005

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辻 俊彦

辻 俊彦

ベンチャーキャピタリスト。専門分野は、メディア系、ITサービス系。

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