| « 2007年12月6日 | 2007年12月8日の投稿 |
2007年12月24日 » |
アジャイル開発やプロジェクトファシリテーションを実践している現場は、幼稚園や小学校とよく似た光景ややり方を目にすることがある。たとえば、「ニコニコカレンダー」だったり、「バグレゴ」だったり、「朝会」だったり、「プロジェクトホームルーム」だったり、「あんどん」だったり。
このエントリは、そのような場面を見て、「いい大人が、何をやっているのか!プロフェッショナルは黙って自分の仕事をせよ!」というような仮想議論(この意見を実は直接聞いたことがない)に対する仮想回答である。
ソフトウェア開発は、「ナレッジ創造(Knowledge Creation)」活動なのだ。よく分かっていないものを、アイディアとコミュニケーションでつないで、ドキュメントにしたり、テストやコードにしたり、マニュアルにしたり、している。この「よく分からないこと」というのは、要求にしても基盤技術にしてもそうだ。顧客は要求を完全に分かっているわけではなく、システムの基盤技術も今回初めて使うものかもしれず、やりながら学んでいくこと、そしてそれを形式知化していくことがソフトウェア開発だ。そして、それは、文章だけでは伝わらない。
あなたの人生の中で、「一番多くのことを学んだ」のはいつだろう?そう、「砂場」のころなんだと思う。幼稚園や小学校だ。多くのことを学んでいくときには、それにふさわしい「場」というのがある。モチベーションが沸き、仲間がいて、目に見える範囲に、さまざまなものが張ってあった。「一番多くのことを学んだ」場所に、ソフトウェア開発現場が似るのは当然である。ソフトウェア開発は、知識創造、すなわち、「学習」と「フィードバック」の場である。
先日、幼稚園の学芸会に参加した。子供が数ヶ月をかけて練習したことを、親や兄弟、親戚に向けて発表するのである。子供の成長をうれしく思うと同時に、自分たち自身も、そこから多くを学ぶ。地域のこと、先生のこと、こういった場作りのやり方、感謝の意味、家族の意味。ぼくは多くの気づきを得た。このブログもそこから動機を得て書いています。
このようなイベントだって、ソフトウェア開発でも同じだ。ソフトウェア開発の組織では、もっと、若いメンバーがいるプロジェクトが「新しく学んだこと」を組織全体でシェアしたり、それを先輩技術者と一緒喜ぶ場が必要だと思う。そして、先輩技術者も、そこから新しい技術や手法の息吹、そして、ひょっとすると忘れてしまった勇気や涙、感謝の気持ちを思い出そう。
みなさんも、社内で気づきの発表の場をぜひ持ちましょう。大きな会社だって、中くらいの会社だって、小さな会社だって、始められます。以下に参考例を。
今回オブジェクト倶楽部のライトニングトークスで選にもれた、小島さんの社内活動http://blog.shos.info/archives/2007/10/big_jolt_2.html
2007年夏のオブジェクト倶楽部で和田さんが発表した、
『TPSコミュニティ・クロニクル~改善活動は人を変え、組織の壁を越える~』 http://www.objectclub.jp/download/files/event/2007summer/Noriaki_Wada.pdf
企業経営、製品戦略の言葉のなかには、「闘い」の語彙が登場することがよくある。「打倒、○○」とか、「○○に負けるな」、「○○から崩せ」など。戦略という日本語がすでに闘いから来ている。経営を戦いとするメタファの中には、ある特定シェアを「取り合っている」、という意識があるのだろう。ゼロサムだ。そしてそのシェアを取ることが、企業のサバイバルだ。パイという言葉はシェアの円グラフから来ているのだろうが、パイを奪い合っている。この場合、競合他社との差別化、他社からの乗り換え戦略をとることになる。
もう1つの方向としては、パイ全体を増やす、というやり方がある。これは「共生」のメタファ。複数の企業で同じ考えを広げていく。特に若い市場などでは、パイ全体を増やすことの方がシェアを奪いあうよりも効果がある場合が多い。たとえば、UMLツール、という市場があった場合、まだUMLの普及自体が日本で遅れているため、UMLを盛り上げていくことが、自社のUMLツールでシェアを取っていくことよりも効果がある。
さらに、もう1つ、これまでにない市場を「創出する」、というやり方がある。これは、そんじょそこらではできない、とても難しい経営戦略だ。過去の MS や、現在の Google、など限られた天才起業家にしかできないと思う。
さて、チェンジビジョンは、「共生」 を考えたいと思う。たとえば JUDE は、UMLツール、という市場、あるいは、そこより広い、ソフトウェア開発の分析・設計ツール市場にいる。そして、そこからパイを奪うのでなく、それ自体をもっと広げたいと考えている。このアプローチの先には、「ぼくたちはよりよい世界を作っている」という使命感がある。この製品市場が大きくなることが、人々の何かを楽にしたり、楽しくしたりしている、という貢献感がある。(これがなければ、働くモチベーションも生まれない。)
ソフトウェアの分析・設計に、エクセルが非常によく使われている。もちろんエクセルが機能する場合は非常に多く、ぼくもよく使う。しかし、いろんな図や絵を描いて議論をする場合、しかも、その絵が多数あって「意味」を持って繋がっている場合は、専用のエディタを使わないと効率が圧倒的に落ちる。この絵でいう「注文」と別のこの絵でいう「注文」は同じだ、ということをツールが認識しないと、変更修正の一貫性が保てなくなる。UMLツールなら、このような意味(セ万ティクス)が縦横無尽に張られているから、一貫した図を描くことができる。もっと、UMLツールが現場で使われるとよいと思う。その意味で、チェンジビジョンは、JUDEのコミュニティー版を提供している。1998年からずっと、無償提供を続けており、今後も続ける。
さらに、市場の創造、をも考えていきたい。TRICHORDがこれにあたる、というと不遜になるが、そう考えている。リーンプロジェクト可視化ツール、だ。プロジェクト管理ツール「ではない」。チームが生産的に、協力的に、そして楽しく仕事ができるようになるツールを目指している。このカテゴリはまだ市場としてほとんどないに等しい。ここを作って行きたい。とても難しいことは覚悟の上。日本でやっているだけではだめで、世界規模で発信しなくてはならない。
事業とは顧客の創造である、あるいは、市場の創造である、といったのは、一倉定だったか、松下幸之助だったか。。。経営は、戦うことではなく、共生すること、さらにその先に新しい市場や考えを生み出すこと。その根本には、ぼくたちは、世界をよりよくするために、この仕事をしている、という誇りがないとだめだ。
» 続きを読む
| « 2007年12月6日 | 2007年12月8日の投稿 |
2007年12月24日 » |

顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
悩んだときの、自己啓発書の触れ方
考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
なんて素敵にフェイスブック
部下を叱る2つのポイント
第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命