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闘う経営と共生する経営

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企業経営、製品戦略の言葉のなかには、「闘い」の語彙が登場することがよくある。「打倒、○○」とか、「○○に負けるな」、「○○から崩せ」など。戦略という日本語がすでに闘いから来ている。経営を戦いとするメタファの中には、ある特定シェアを「取り合っている」、という意識があるのだろう。ゼロサムだ。そしてそのシェアを取ることが、企業のサバイバルだ。パイという言葉はシェアの円グラフから来ているのだろうが、パイを奪い合っている。この場合、競合他社との差別化、他社からの乗り換え戦略をとることになる。

もう1つの方向としては、パイ全体を増やす、というやり方がある。これは「共生」のメタファ。複数の企業で同じ考えを広げていく。特に若い市場などでは、パイ全体を増やすことの方がシェアを奪いあうよりも効果がある場合が多い。たとえば、UMLツール、という市場があった場合、まだUMLの普及自体が日本で遅れているため、UMLを盛り上げていくことが、自社のUMLツールでシェアを取っていくことよりも効果がある。

さらに、もう1つ、これまでにない市場を「創出する」、というやり方がある。これは、そんじょそこらではできない、とても難しい経営戦略だ。過去の MS や、現在の Google、など限られた天才起業家にしかできないと思う。

さて、チェンジビジョンは、「共生」 を考えたいと思う。たとえば JUDE は、UMLツール、という市場、あるいは、そこより広い、ソフトウェア開発の分析・設計ツール市場にいる。そして、そこからパイを奪うのでなく、それ自体をもっと広げたいと考えている。このアプローチの先には、「ぼくたちはよりよい世界を作っている」という使命感がある。この製品市場が大きくなることが、人々の何かを楽にしたり、楽しくしたりしている、という貢献感がある。(これがなければ、働くモチベーションも生まれない。)

ソフトウェアの分析・設計に、エクセルが非常によく使われている。もちろんエクセルが機能する場合は非常に多く、ぼくもよく使う。しかし、いろんな図や絵を描いて議論をする場合、しかも、その絵が多数あって「意味」を持って繋がっている場合は、専用のエディタを使わないと効率が圧倒的に落ちる。この絵でいう「注文」と別のこの絵でいう「注文」は同じだ、ということをツールが認識しないと、変更修正の一貫性が保てなくなる。UMLツールなら、このような意味(セ万ティクス)が縦横無尽に張られているから、一貫した図を描くことができる。もっと、UMLツールが現場で使われるとよいと思う。その意味で、チェンジビジョンは、JUDEのコミュニティー版を提供している。1998年からずっと、無償提供を続けており、今後も続ける。

さらに、市場の創造、をも考えていきたい。TRICHORDがこれにあたる、というと不遜になるが、そう考えている。リーンプロジェクト可視化ツール、だ。プロジェクト管理ツール「ではない」。チームが生産的に、協力的に、そして楽しく仕事ができるようになるツールを目指している。このカテゴリはまだ市場としてほとんどないに等しい。ここを作って行きたい。とても難しいことは覚悟の上。日本でやっているだけではだめで、世界規模で発信しなくてはならない。

事業とは顧客の創造である、あるいは、市場の創造である、といったのは、一倉定だったか、松下幸之助だったか。。。経営は、戦うことではなく、共生すること、さらにその先に新しい市場や考えを生み出すこと。その根本には、ぼくたちは、世界をよりよくするために、この仕事をしている、という誇りがないとだめだ。

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