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 「人生、捨てたもんじゃないなあ」

 ぼくのステージを見に来たカミサンがこうつぶやいた。出番が終わったら何人もぼくの名前を呼び、その中には息子もいた。握手をしたり、いっしょに写真を撮ったり。

 気持ちよかった。東京ドームのセンターステージに立って歌うのは。2万人のオーディエンス。

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 たった5分だったけど、大きなステージに立った人、立ちたい人の気持ちがわかった。

 みんなが酒を飲んでいる中で歌うというのは、大学のときの学園祭の野外ステージに近いし、赤坂BLITZではMac業界のイベントでバンドのボーカルとして歌ったこともある。デーモン閣下と同じバンドで。でも、今回はたった一人だ。自分を助けてくれるのは、2台のiPhoneと1枚のiPadだけ。それだけでおもしろいステージにしなくてはならない。

 衣装はいつものSgt. Peppersのポールの青いミリタリージャケット。新婚旅行でリバプールで買ったもの。それに同じ色のサイクルヘルメットを合わせた。

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 機材は、Fingeristではなく新しくした。iPhone 9Sだ。iPhone 4S + iPhone 5。裏に透明定規を両面テープで貼り、つなげたもの。これをPocketGuitar専用にする。

 事故が起きにくいように最善の注意を払う。PocketGuitarの調整で、開放弦を弾かないように、弦間はできるだけ長く。ギターソロは何度も練習。以前はボーカルと重なるところのソロは弾いてなかったが、今回はできるようにした。

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 iPad 2はGarageBand専用にする。弾くのはGarageBandのスマートピアノのみ。指1本なので間違いはないだろう。念のために音量は押さえ気味にしておく。

 新曲もやった。こちらはみんなが知ってるアニソンで。オヤジがやればウケルであろう曲。

 準備は万端だ。だった。でも、予定は狂うものだ。アクシデント・ウィル・ハプン。風邪ひいた。高い声が出なくなった。どちらかというと歌がウリなのに。楽屋で練習しているときに判明。

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 歌からファルセットの部分を排除した。裏返るのを避けるためだ。仕方ない。1時間前に判断した。それよりもギターソロを優先しよう。

 そして本番。司会から紹介されて、自分でもあがっているのが分かるくらい。ステージから観客を撮った写真がぶれていることからもそれが分かる。だいたいこれは動画を撮るつもりだったのだ。

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 1曲目の「Let It Be」。出だしからピアノを弾くの忘れた。Applayersの本選のときもそうだった。だから、ギターソロまではオケ状態。まあいいや、ボーカルに専念しよう。音を外さないように。

 歌詞を忘れた。ごまかすために、映画Let It Beでポールが歌っていた歌詞「There will be no sorrow」に置き換える。

 ギターソロ。何個か間違えたけど、開放弦で大音量でのミスはなかった。これまでではかなりいいほう。東京ドームに鳴り響くミストーンは次の曲で。

 でも、ステージからは一緒に歌ってくれている人たちが見える。これは気持ちいい。ポールもここでLet It Be歌ってたし。感慨深い。

 2曲目でラストの「ガッチャマン」。Let It Beからのつなぎは始まる1時間前にGarageBandでやった。分数が当初予定から短くなったため。途中にはさみこむつもりだったギター奔放ソロを削除。

 まあ、盛り上がった。こちらもアクションをまぜながら盛り上げようとしてみる。そして、最後のダブルチョーキングで響き渡るミストーン。フレット間違えた。でも、歌といっしょのところだから、そこを張り上げてやればいいか。

 終了後、段取っていたはずのMCとの会話はまるで違ったものとなり、ステージを降りる。観客からは「松尾、松尾」と呼びかけられる。たしかに俺は松尾だが。そして息子がニヤニヤしながら登場。ビデオ撮ったよ、と。

 終わった後のぼくの姿はジェット☆ダイスケさんが撮ってくれてる。わざわざ来てくれたんだ。感激!

松尾公也さんが東京ドームのステージに立った日

 演奏が終わったあと、ぼくの後にApplayersとして出演したtigerlilyさんと、その後のメインアクト、m-floのVERBALさん(Applayersのオフィシャルサポーターでもある)たちと打ち上げ。一段落してからカミサンと、その友人夫妻のところに行って音楽談義など。

 去年のこの時期はいろいろあって、かなり絶望的な気分でいたんだけど、こうやって楽しくお酒を飲めるようになった。好きなことをやって、カミサンにも楽しんでもらえた。

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 本当に人生、捨てたもんじゃないなあ。

 あ、そうそう。ぼくみたいな50過ぎたおっさんでもこんなミュージシャンデビューを夢見ることができる。iOSアプリを使ったパフォーマーになれば。このイベントにでることができたのも、Applayersコンテストで本選に残ったおかげ。賞がとれなくても、こういうチャンスはあるかも。締め切りは2013年の1月14日まで。iPad miniが発売されたのでちょっと延びた。ほら、チャンスはそこに転がっている。While You See A Chance, Take It!

koya

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プロフィール

松尾 公也

松尾 公也

Mac誕生前夜の1983年業界入り。
PC Magazine、PC WEEK、MacUserなどを経て、IT業界の裏道を歩みつつ現在に至る。

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