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2013年1月31日の投稿

2013年2月1日 »

公共データやビッグデータの利活用に関して、産業界の期待も高まっています。

公共データの戦略的利活用を推進するgコンテンツ流通推進協議会

gコンテンツ流通推進協議会は2012年2月27日、「官民連携による公共データの戦略的利活用に関する提言」を公表しました。

image
http://www.g-contents.jp/sub.php?item1=4&item2=10&page=410&type=1&mode=disp

本提言では、

国・行政機関等が所有する地理空間情報等公共データを機械判読可能な形式で公開する仕組みの整備が必要である。

とし、戦略性、迅速性、柔軟性の3つの視点から公共データの利活用の必要性を提言しています。

1.戦略性
行政情報は営利・非営利を問わず、積極的に利用し、新たな価値を生み出していくべきである、特に、その価値を最大化するための戦略を以て実施されるべきである。

2.迅速性
まず、現状のウェブの情報提供において、機械判読可能であることの原則を示し、個々のデータは元よりサイト全体も機械判読できるような仕組みとすることや、それに即した規約等の改定が必要である。そして、国自身が率先してこうした行政情報の利活用を行い、自治体や関係公共機関と協力しつつ、推進されるべきである。また、その実施にあたっては、個人情報や企業情報の活用、データの標準化、データの対価の考え方などを指針として整理することも必要である。

3.柔軟性
行政情報利活用促進のために著作権処理について明確にする必要がある。パブリックドメインとして利活用を促すか、または再配布やリミックスなどを考慮した著作権などを検討した上で、標準的な利用条件の下で、データ利用者が容易に判断できる配慮が必要である。また、国際的な枠組みの中でルール化が必要なもの(例えば、匿名情報の利用など)については、国際的な働きかけを行い、国民や我が国の産業界が不利にならないような活動が必要である。

提言の背景は、「災害支援」と「サービス利用」の2つの観点からその必要性をあげています。

「災害支援」においては、東日本大震災において国・自治体から提供される安否情報、被害情報、生活情報などの一次データは、PDFの提供により機械判別が困難であり、二次利用による情報の公開が著しく遅れ、災害支援に支障をきたしたという事象をあげています。

これらの課題を解決するため、地名、施設名などの位置を表す用語は、国・自治体間で標準化し、明確な著作権処理の下で、緯度経度座標との紐づけしたデータを作成・公開する仕組みが必要ではないかとしています。

「サービス利用」においては、これまで、サービス事業者は、地理空間情報サービスの展開において情報の網羅性と鮮度を維持するために、多額の費用をかけて対応をしています。その一方で、海外では、行政が所有する情報を機械判読可能な形で公開し、産業界に利用を促すことで、情報到達コストを圧縮し、サービス自体の高度化等に集中できる取り組みを進めている点をあげています。そのため、日本においても機械判読可能な標準的なフォーマットで提供することで、たとえば、空いている駐車場へ誘導するなどのサービスの高度化とともに、地域社会の利便性向上にもつながると指摘しています。

具体的に向けたアクションアイテムの提案は以下の4点となります。

(1) データ形式およびその表現方法の標準化または指針・ガイドラインの作成
(2) データ利用条件の明確化、および標準化
(3) データの提供元責任および利用者責任の明記
(4) データ更新条件や修正条件の明確化

本協議会の参加会員は、KDDI、ゼンリン、NTTドコモ、ソフトバンク モバイル、国際航業、アジア航測、日本電気、明電舎、昭文社、ゼンリンデータコム、NTTデータ、パスコ、トヨタ自動車、富士通など、SIベンダーから測量会社、地図会社、通信キャリア、コンテンツプロバイダー、旅行会社、カーナビなど50社に及ぶ幅広い企業が参画しています。

地理空間情報等の公共データは、新サービスの提供やユーザ向けのサービス利便性向上、そして災害支援情報として大きな力を発揮することが期待されます。

東日本大震災時のビッグデータ活用

東日本大震災は、ソーシャルメディアやマスメディアを通じて様々な大量の情報が広がりを見せました。拡散される情報は、正しい情報だけでなく様々な噂やデマ情報も飛び交うなど、情報の重要性を考えさせられる機会となりました。

「東日本大震災ビッグデータワークショップ - Project 311 -」では、2011年9月12日より、震災発生から1週間の間に実際に発生したデータをワークショップの参加者に提供し、参加者がそのデータを分析することで、今後発生する災害において、どのような対応できるか議論しサービス開発を行う取り組みが行われました。

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https://sites.google.com/site/prj311/

実際に民間企業から以下の1週間分のデータが公開されています。

  • 3月11日から1週間の朝日新聞記事(提供:株式会社朝日新聞社)
  • Google Trends (提供:グーグル株式会社)
  • 東日本大震災直後のテレビ放送テキスト要約データ (提供:JCC株式会社)
  • 3月11日から1週間のツイート  (提供: Twitter Japan 株式会社)
  • NHK総合テレビ大震災発災直後から24時間の放送音声書き起こし及び頻出ワードランキング (提供:日本放送協会)
  • Honda インターナビ通行実績マップデータ(提供:本田技研工業株式会社) 
  • レスキューナウの鉄道運行情報/緊急情報/被害状況のまとめ情報(提供:株式会社レスキューナウ)
  • 混雑統計データ(提供:株式会社ゼンリンデータコム)

実際に、位置情報付きのtweetリスト作成プロジェクトやTwitter からの被災時の行動経路の自動抽出およびその信憑性の検証、震災データからの情報抽出ツール開発プロジェクトなど20を超えるプロジェクトが、これらのデータを使いサービス開発の検討などがされています。

オープンデータ社会(1)オープンデータとは? 2013/01/21

オープンデータ社会(2)米政府におけるオープンガバメントの取り組み 2013/01/22

オープンデータ社会(3)世界の政府におけるオープンデータ戦略の取り組み 2013/01/23

オープンデータ社会(4)民間事業者の参入 2013/01/25

オープンデータ社会(5)米国政府におけるビッグデータ関連政策 2013/01/28

オープンデータ社会(6)日本におけるオープンガバメントの取り組み 2013/01/29

オープンデータ社会(7)公共データへの産業界からの期待 2013/01/31

MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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