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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

« 2010年12月6日

2010年12月7日の投稿

2010年12月8日 »

2010年は、クラウドコンピューティングというキーワードが注目された時期でした。2011年は、これまでのバスワード的なキーワードから、より具体的なクラウドとして議論されていくことになると考えています。私自身が注目したいクラウド関連のキーワードは、以下のとおりです。

クラウド政策

総務省が今年5月に公表をした「スマート・クラウド戦略」では、3つの戦略が掲げられていますが特に利活用戦略では、「霞が関クラウド」や「自治体クラウド」などの電子政府・電子行政クラウド、そして、教育クラウドや医療クラウドなどの公共クラウドの活用があげられています。海外では、米国に代表されるように政府のガバメントクラウドの取り組みが進んでおり、日本の今後の具体的な取り組みに導入に向けた取り組みが注目されます。昨日(12月6日)に「ジャパン・クラウド・コンソーシアムについて」でもとりあげた産官学のオールジャパンのクラウドの取り組みも成果が期待されます。

クラウドマイグレーション

これまでは、クラウドには理解をしていたものの様子見が多く、2011年は多くの利用企業がクラウドを検討・導入するフェーズに入ると考えられます。そのため、クラウドをどのように導入していければいいのか、クラウドを導入するための、アセスメントやコンサルティングや中長期ロードマップ策定など、マイグレーションに向けたニーズが顕在化してくることが考えられます。そのため、マイグレーション周辺のビジネスは、大きなビジネスチャンスといえるでしょう。参考ですが、今年7月に「クラウドマイグレーションについて」というブログも書いてみました。

クラウドブローカー

数年前から、米国などで注目されたクラウド事業者間の仲介役となるクラウドブローカーですが、RightScaleやEucalyptusやCloud.comなど、日本市場への参入も見られるようになりました。今後、様々な管理プラットフォームのビジネスが顕在化していくことが予想されます。

ハイブリッドクラウド

クラウドブローカーの部分と少し関係するところがありますが、これまで、パブリッククラウドプライベートクラウドの形態での議論が中心でしたが、利用企業がクラウドの導入を進めるにつれて、クラウド間の連携ニーズが高まり、ハイブリッドクラウドというキーワードが一般化することが予想されます。参考ですが、先日、TechTargetで「ハイブリッドクラウドの実現に向けて」という記事を寄稿させていただきました。

コミュニティクラウド

クラウドの導入の流れは、プライベートクラウドといったように企業内の枠組みだけでなく、クラウドの最適化が進むと、企業グループや業界などの枠組みが広がっていくと考えられます。例えば、IBM等が構築したごみ処理向けのクラウドも一つの例でしょう。将来的には、スマートグリッドを利用したスマートコミュニティ実現のための、コミュニティクラウドも注目されていくことになるかもしれません。

クラウド(データセンター)特区

政府の政策の一つでもありますが、政府は重点施策として、データセンターの国内立地の推進に向けて、コンテナ型データセンター設置のための、建築基準法や消防法などの規制緩和の取り組みを進めています。果たして、グーグルに代表されるような外資系事業者が国内にデータセンターを設置するのか、海外発のトラフィックが右肩上がりに増える中、クラウド(データセンター)特区の取り組みがどこまで、成果を出すことができるのか、注目されます。11月に「総合特区での「データセンター特区」の提案状況について」でこれまでの特区の取り組みについてまとめてみました。

クラウド国際戦略

クラウドの流れは世界規模での世界分業です。そのため、国際競争力の視点が必要不可欠となります。安全保障やセキュリティに対応した法制度やガイドラインの整備、ネットワークの中立性など、国際ルールの整備。そして、日本発のクラウドサービスのアジア展開や海外でのデータセンターの設置、日本へ情報を誘致するための海底ケーブルの敷設など、世界市場を視野にいれた対応が必要となってくるでしょう。また、ODAやPPPなどで新興国などに、日本のクラウドを展開するといったアプローチも考えられます。クラウドの標準化についても、ベンダロックを展開している事業者もあり実現性が難しいところもありますが、本格的な議論や検討が進んで行くと考えられます。

クラウドエコノミー

クラウドビジネスを展開していく上で重要なのは、ビジネスモデルを構築し、収益をあげていくことです。規模の経済や、付加価値戦略、オープン戦略など、様々な戦略が考えられます。2011年は、特に提供事業者にとってのクラウド経済圏(エコノミー)のあり方がより真剣に議論されていく年になるのかもしれません。11月に「クラウド・エコノミーの時代」でも少しとりあげさせていただきました。

モバイルクラウド

スマートフォンやタブレットに代表されるように、モバイルデバイスが今後さらに進化していくことが予想されます。また、LTEのサービス提供も始まり、モバイルブロードバンドがさらに進み、モバイルクラウドの考え方が一気に注目される年になるでしょう。

その他、Hadoopに代表されるクラウド・テクノロジー、CSA等で検討されているクラウドセキュリティ、コンテナなどのクラウドデータセンタークラウドプラットフォーム(PaaS等) 、ソーシャルメディア×コンシューマクラウド、などなど、様々なクラウドがあると考えています。乱立しているクラウドですが、2011年は、各々もう少し踏み込んで議論されていく年になるのではないかと考えています。

MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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