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ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

iPhoneやiPadのセキュリティポリシー策定から解放される方法

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おはようございます。

二日連続の早朝強雨。日照りの夏から一転ですね。今朝は9時頃に17mm/hの雨との予報。通勤電車が乱れそうです。

さて、今朝はiPhoneの普及が進み、iPadでもありだなと思った、個人のiPhone/iPadを会社が情報インフラとして使ってしまうという新しい現象について。

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■会社貸与でなく個人のiPhoneを使ってしまう発想

「なんと新鮮な発想なんだ!」

目から鱗が取れるような驚きで、今年の6月に『個人のiPhoneを会社が利用してしまおうという逆転の発想』というエントリーを書きました。iPhoneが社員の中で普及してきているので、それを会社メールやスケジュールの閲覧用マシンとして流用してしまおうという発想があるお客様から出てきたのです。

当時は、「まだ先進的な意見かな」と考えていたのですが、ここのところ、iPhoneやiPadのポリシーを策定して苦労している人々のお話を、聞けば聞くほど、思うようになりました。

「これもありだな・・・」と。

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■個人のスマート端末で会社情報が扱える感覚

iPhoneやAndroidなどのスマート端末を、自分で買って使おうという人々は、イノベーターやアーリーアダプターたちです。会社情報が手元の端末で使えたらさぞかし便利だろうと考える人たちが多いです。

そもそもスマート端末は、国内でのパケット料金は固定制、自宅でのWi-Fi利用率が高いという使い方をしています。そこに会社の情報が相乗りしても、「便利なアプリが一つ増えたな」くらいの感覚でとらえます。

それゆえ彼らの端末に、会社情報が扱えるように何か加えて展開する際には、抵抗が少ないどころか積極的な協力すら得られます。実例として、タブレットの世界的なメーカーであるワコムさんのCACHATTO採用事例から引用させてもらいます。

森山様─────
 CACHATTOのユーザー数は120名で、そのうちiPhoneユーザーは25~30名です。iPhoneと携帯電話の両方から利用しているユーザーもいます。会社で支給しているiPhone端末は20台で、営業と開発の社員がほとんどです。

 弊社では前から携帯電話でCACHATTOを使っています。そこに、社員からiPhoneでCACHATTOを使ってみたい、営業日報のSFAをiPhoneで利用したいとの要望が出てきました。CACHATTOサポートセンターからのサポートもあり、iPhoneであればSFAが効果的に使えることが分かりました。そこで、営業用にiPhoneをまとめて購入し、SFAをPCで見る時と同様の画面で有効に利用しています。

http://www.cachatto.com/case/case17.html

これはつまり、iPhoneを個人で持っていた5~10人が引っ張って、iPhoneを会社の公認端末にしてしまったということです。このインタビューは1年も前のことなので、きっと現在の端末数はもっと増えていることでしょう。個人持ちのiPhoneも混在して運用しているというところが面白いです。

それには次に提示する理由がありました。

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■個人持ちの端末を使うための要件

データを端末に残すのか残さないのか

これが大きな分かれ目になります。もちろん、両者ともに通信経路が暗号化されていることは大前提です。

残す方式: 会社端末にデータを保持する例として、BlackBerryやActive Syncなどで、端末にメールやスケジュールデータが残る方式をとります。すると、リモートワイプや端末ロックの方法などのセキュリティポリシーを縛る必要性が高まってきます。持ち出しPCの発想ですね。これはこれで、電波の通じないところでも各種データが取り扱えるのでとても便利です。しかし、データが残るが故に、紛失時の対策を事前にしておくことが必要になります。

残さない方式: 端末にデータを残さない方式であれば、シンクライアントのアプリにデータの表示と消去を任せればよく、セキュリティの設定は格段に容易になります。さらに思い切って、個人の端末を使って、会社の情報にアクセスしてもらうということすらも実現できます。

上記のワコムさんで個人持ちと会社貸与のiPhoneが混在していた例は、端末にデータを残さない、シンクライアント型だったからこそ無理なく実現できていたということです。

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■iPadを会社貸与端末として渡すのは正当化が難しい?

「iPadに関しては個人に管理を任せることにしました。
 シンクライアント型なので、会社があれこれ手を出すより、
 使っている人に任せてしまう方がよさそうなので。」

先日、CACHATTOを検討しているあるお客様を訪問してヒアリングしたところ、このような意見でした。iPhoneでも多数のアプリで遊べてしまうあたりの解釈がなかなか大変なわけですが、iPadともなると、電話機能が無く、より個人が主体、趣味の領域も多く入ってきます。

ゆえにiPadを会社から貸与することの正当化は若干難しいようです。ただそこに、アプリの一つとして会社の情報が扱えるものがあれば、それはそれでありだという意見でした。これも端末にデータを残さないという点があってこその着想です。

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■補助を出せば社員も会社もWin-win

例えば、個人のiPhoneで会社のメールやスケジュールを使うという人たちに、携帯端末の補助を出すようにしたらどうでしょう。1000円とか2000円とか。これは、会社から端末を供与するよりは格段に安いです。

社員としても、自分のスマート端末代に少しでも会社から補助が出るのであれば、これはこれで嬉しいことですね。会社側にとってもバージョンアップやアプリのダウンロードのためのアカウント管理から解放されます。

逆転の発想というのか、柔軟というのか。世の中っていろいろな考えが混じり合いながら、少しずついい方向に改善されていくのだな、と思いました。お客様にはいろいろと教えていただけます。楽しくなってきてしまいます!

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