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ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

iPhoneですら会社に導入するのが抵抗される理由

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★先日の『XperiaはiPhoneより大手法人に向いていると思う理由 』に対してmitoさん、hiroさん、方波見さんらからコメントをいただきました。ありがとうございます。そこで、企業における新携帯端末導入の実態について触れてみるといいのかと感じ、本エントリーを書きます。

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iPhoneやAndroid、さらにはiPadなど、様々な新端末が出てきて、ガジェット好きにはたまらない日々が続いています。お財布が痛いですよね。そして当然のことながら、これらの新端末を会社の業務で活用して、業務効率化へとつなげたいと思うわけです。

ところが、それが意外とスムーズに進まない理由があります。この現象は、繰り返すICT※の歴史の中でも何度かありました。その時々に先端ユーザーが「使うべき」と強く思い描き、そのメリットに同意できた人たちが行動をすることで実現してきました。※ ICT(Information and Communication Technology)

・電子メールかパソコン通信を業務に使いたい
・LANを導入してプリンターやファイルサーバーを置きたい
・リモートアクセス用のパソコンを導入したい
・グループウェアを使い情報をシェアしたい
・i-mode携帯で業務ができるようにしたい

新しいことをトライしようと一部の人たちが提案すると、必ず、現行システムを安定稼働を任されている人たちとの、せめぎ合いが発生します。それでも「企業は変化をさせていく必要がある」との考えを持つ経営層理解者からの支持を得ながら、これらのICT変化は少しずつ進んできました。

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今、続々と出てきている魅力的な端末の変化に対する様々な企業の反応も、実は上記と同じパターンです。特に、セキュリティへの要望が比較的少ない中小企業よりも、大企業で顕著です。

例えば、社内のガジェット好きの先端ユーザーが強く「iPhoneを業務に使いたい」と主張しています。中小企業であれば、メリットが分かれば即導入です。ところが大企業になると、システム運用を任されている人たちからは、「使いたいのは分かるけど、安全性とかが不安だし、運用の手間が増えるのはどうかね・・・」と、戸惑いと抵抗が発生するのです。

もちろん、そのような中でもじわりじわりとiPhoneへの対応を進めてきている先端企業も多数あります。タブレットの世界的メーカーであるワコムさんでのiPhoneを採用するまでの経緯も参考になると思います。従来から携帯電話でリモートアクセスを実現してきたのですが、iPhoneに利用を広げて、業務が効率化したとの例です。

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システムは4-5年スパンでの長期運用、それもセキュリティ守りながら安定稼働させることが前提です。目の前の利便性には見えない、裏側の懸念点をクリアしなければ導入に踏み切れないのです。いくつかそれら懸念点を挙げてみましょう。

・同一端末が入手できる期間が短い (1年前の同一機種が入手できない)
・端末の仕様や安全性がそれぞれ異なり変わる (指紋認証など)
・導入作業を実施する必要がある (今や携帯もPC並に手間がかかる)
・異なる端末での同一セキュリティレベルをどう保証するのか
・新端末へと変化したときへのプログラム対応はやってくれるのか

さらに、パソコンであればシステム部が導入しますが、携帯電話は総務部の管轄だったりもします。携帯電話でのリモートアクセスでも、責任部署やコスト負担についての議論が大変なのです。そこに、iPhoneやAndroidでのメリットやセキュリティ特性について、総務部とシステム部の双方の方々に納得してもらうのは、これまた難儀であることもわかりますよね。

自分も含め、新しいガジェットを業務に活用することに興味津々な人々からすれば、導入が遅々として進まないということにはストレスがたまります。しかし、こういった裏があるということにも配慮をする必要があります。

物事は熱心に進めていれば、必ずよりいい方向に動いていきます。だってわくわくするじゃないですか。だから、信念を持って、新しいやり方を啓蒙していきましょう!

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※20100607 08:40 「てにをは」を1部修正しました。

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