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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

米国債金利がある閾値を超えるとNVIDIAバブルが逆回転し始める可能性について

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米国債金利が上昇しています。

はい。しかも今回の上昇は、かなり注目した方がよい動きです。

8月21日の米国債は、10年債が約4.7%台、30年債が約5.3%まで上昇しています。30年債は一時5.34%と2007年以来の高水準に達しました。

特に気になるのは、単純な「景気が強いから金利上昇」という話ではないことです。現在は主に、

  • 米国の財政赤字・40兆ドルを超えた政府債務への懸念
  • 原油高によるインフレ再燃リスク
  • Fedがインフレをどこまで抑え込むのかという不透明感
  • 長期国債を保有することへのタームプレミアム上昇

が重なっています。米財務省は長期債の買い戻しを増やして金利上昇を抑えようとしていますが、それでも長期金利が再上昇している点が重要です。

私はむしろ30年債の5.3%台を注視します。

10年債4.7%だけなら「政策金利が高いから」である程度説明できます。しかし30年債が5.3%まで売られているということは、市場が「米国に30年間お金を貸すなら、かなり高い利回りを要求する」と言っていることになります。

そして、これはAI業界を見る上でもかなり重要です。

米国債30年 ≈ 5.3%
→ 企業の資本コスト上昇
→ AIデータセンターの巨額ファイナンスのハードル上昇
→ NVIDIA GPUを大量購入するハイパースケーラー/ネオクラウドの投資採算ライン上昇

という経路があるからです。

しかもAPは今回の金利上昇要因の一つとして、AIデータセンター建設のためのテック企業による巨額借り入れまで挙げています。

これは以前から追っている「NVIDIAがAIデータセンターの金融機能まで担い始めている」という話とも、かなりきれいにつながります。AI設備投資ブームと米国債市場が、資本市場を介して直接ぶつかり始めていると見ることもできます。

そして次の重要な境界線は、おそらく**米10年債5%**です。Pictetも10年債5%を、債券と株式の相対的な魅力が大きく変わり得る水準として論じています。

ここを超えて定着すると、単なる「金利上昇」ではなく、AI・半導体・データセンター株のバリュエーションそのものを再計算する局面になってきます。今の4.7%台は、その意味でかなり面白いところまで来ています。

この動きはかなり速いので、米10年債が5%に接近・突破したら知らせるようにもできます。

知らせるようにセットしてください。

セットしました。米国10年国債利回りを1時間ごとに確認し、5.00%以上になった場合だけお知らせします。

5%未満の間は通知しません。

監視中米10年債5%ウォッチ
AI・半導体・データセンター株のバリュエーションそのものを再計算する局面 とはどういうこと?

かなり重要な意味があります。

私が言った「AI・半導体・データセンター株のバリュエーションそのものを再計算する局面」とは、簡単に言えば、

「NVIDIAが成長するかどうか」ではなく、「同じ利益を出していても、その会社の株はいくらまでなら買えるのか」が変わる

ということです。

たとえばNVIDIAが同じ100ドルを稼いでも

株価は、突き詰めれば「その企業が将来生み出すキャッシュフローを、現在価値に割り引いたもの」です。

ここで米国債利回りが非常に重要になります。

仮に安全性の高い**米10年国債が3%**しかもらえない世界なら、

「NVIDIAなら大きく成長する。多少PERが高くても株を買おう」

となりやすい。

ところが米国債が**5%**になったら、

「ほぼ信用リスクのない米国債で5%もらえるのに、なぜ高いPERを払ってNVIDIA株のリスクを取るのか?」

という比較が始まります。

そこで投資家が要求する株式の期待収益率も上がります。

イメージとしては、

米国債3% + 株式リスクプレミアム5% → 要求収益率8%

だったものが、

米国債5% + 株式リスクプレミアム5% → 要求収益率10%

になる。

これだけで、将来利益の「現在の価値」はかなり下がります。

AI株には特に効きます

ここが普通の成熟企業との違いです。

AI関連企業の評価には、

「2030年にはものすごく儲かる」
「2035年にはAI市場が巨大になる」

という遠い将来の利益が大量に織り込まれています。

ところが金利が高くなるほど、遠い将来のお金ほど現在価値が小さくなります。

極端に単純化して、10年後の100ドルを現在価値にすると、

割引率 10年後の100ドルの現在価値
5% 約61ドル
8% 約46ドル
10% 約39ドル
12% 約32ドル

つまり、

AI市場の将来予測を1ドルも変更していないのに、金利だけで企業価値が大きく変わり得る。

これが「バリュエーションの再計算」です。


そして、今のAIブームにはもう一つ重要な問題があります。

金利上昇
→ AIデータセンター建設資金が高くなる
→ データセンターの要求利回りが上がる
→ GPUを買って得られる収益の採算ラインが上がる
→ AIインフラ投資案件の選別が厳しくなる

という実体経済側の経路です。

たとえば1000億円のAIデータセンターを借入で建設するとします。

資金コスト4%なら年間40億円。

6%なら年間60億円。

単純化しても年間20億円違う

しかもAIデータセンターはGPU、電力設備、冷却、ネットワーク、建屋など非常にCAPEXが大きい。したがって金利上昇はかなり効きます。

ここからが、私は一番面白いと思っています。

NVIDIAにとって「悪い」と単純には言えません

AI需要そのものが強ければ、NVIDIAのGPU需要は残ります。

しかし資金調達環境が厳しくなると、

「AIなら何でも投資する」

から、

「本当にGPU投資を回収できる案件だけ投資する」

へ変わります。

すると市場は、

「GPUを何台買ったか」

より、

「そのGPUから何ドルの売上・FCFを生み出せたか」

を見るようになります。

これはハイパースケーラーにも同じです。MicrosoftAmazonGoogleMetaが巨額AI CAPEXを続けても、「AI投資額が大きいから評価する」ではなく、AI CAPEXに対してどれだけ利益を生み出したのかがさらに厳しく問われます。

だから「米10年債5%」を見ているわけです。

これは5.00%を超えた瞬間にAI株が暴落する魔法の数字ではありません。

むしろ、

リスクなしで5%前後取れる世界でも、このAI企業に今のPERを払う価値があるのか?

という問いが市場全体で強くなる水準、と考えると分かりやすいです。

そして今回の局面では、株価の割引率上昇と、AIデータセンターそのものの資金調達コスト上昇が同時に起きる。ここが2022年の単純な「高PERグロース株売り」より、AI産業を見る上では面白いところです。

つまりあなたは、株式市場崩壊の要因が二つ複合していると言っている?
>株価の割引率上昇と、AIデータセンターそのものの資金調達コスト上昇が同時に起きる。

はい。ただし「株式市場崩壊の要因が二つある」とまで断定するより、AI相場を逆回転させ得る二つの経路が同時に強まっている、という意味です。

重要なのは、この二つが独立しているのではなく、相互に増幅し得ることです。

第1の経路は金融市場側です。

米国債金利上昇
→ 株式の割引率・要求収益率上昇
→ 将来利益の現在価値低下
→ 高PERのAI・半導体株ほどバリュエーション圧縮
→ 株価下落

これは企業業績が悪化しなくても起こります。NVIDIAの利益予想が変わらなくても、「その利益にPER 40倍を払うのか、30倍なのか」という再評価だけで株価は大きく動きます。

第2の経路はAI産業の実体経済側です。

長期金利上昇
→ 借入・社債・プロジェクトファイナンスのコスト上昇
→ AIデータセンターのWACC上昇
→ GPUクラスタの投資回収条件が厳しくなる
→ 採算性の低いAI DC計画の延期・縮小
→ GPU、HBM、ネットワーク、電力・冷却設備などへの発注鈍化
→ AI関連企業の利益予想低下

こちらはPERではなく、PERの「E=Earnings」そのものを傷つける可能性があります。

つまり、

① PERが下がるリスク × ② 利益予想Eが下がるリスク

なのです。

株価を非常に単純化して

株価 ≒ EPS × PER

と考えると分かりやすいです。

たとえばAI企業の予想EPSが10ドル、PERが40倍なら400ドルです。

金利上昇によってPERが40倍→30倍になるだけなら300ドル。

ところが同時にAI設備投資が減速して、予想EPSまで10ドル→8ドルへ下方修正されたら、

8ドル × 30倍 = 240ドル

になります。

400→240ですから、40%下落です。

これが私が警戒している組み合わせです。

そして、さらに厄介なのは第三段階まで発生する可能性があることです。

AI株下落
→ AI企業・ネオクラウドなどの資金調達環境悪化
→ AIインフラ投資抑制
→ NVIDIA等への発注期待低下
→ 利益予想下方修正
→ さらにAI株下落

というフィードバックループです。

したがって構造を一本につなぐと、

米長期金利上昇
→ ① AI株のPER圧縮

→ ② AIデータセンターの資本コスト上昇
→ AI CAPEX減速
→ 半導体需要期待低下
→ EPS予想低下
→ 株価下落
→ 資金調達環境悪化

となります。

ただし、ここから「だから米国株は崩壊する」と結論するのはまだ早いです。

最大の反対材料は、AI投資の中心がMicrosoftAmazonGoogleMetaのような、非常にキャッシュ創出力の強い企業だからです。金利が多少上がっただけで一斉にデータセンター建設を止める企業群ではありません。

だから本当に危険なのは、「10年債5%」単独ではありません。

私なら、

長期金利上昇 + AI CAPEX成長率鈍化 + AI収益化の期待低下

この三つが同時に起き始めたときを、AI相場の本格的なレジーム転換として警戒します。

特に現在のAI相場では、NVIDIAの受注だけを見るより、Microsoft、Amazon、Google、MetaのCAPEXガイダンスが下方修正されるかを見る方が、早期警戒指標として非常に重要です。

言い換えると、金利は「導火線」になり得ますが、火薬はAI CAPEXです。

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