米国債金利がある閾値を超えるとNVIDIAバブルが逆回転し始める可能性について
米国債金利が上昇しています。
かなり重要な意味があります。
私が言った「AI・半導体・データセンター株のバリュエーションそのものを再計算する局面」とは、簡単に言えば、
「NVIDIAが成長するかどうか」ではなく、「同じ利益を出していても、その会社の株はいくらまでなら買えるのか」が変わる
ということです。
たとえばNVIDIAが同じ100ドルを稼いでも
株価は、突き詰めれば「その企業が将来生み出すキャッシュフローを、現在価値に割り引いたもの」です。
ここで米国債利回りが非常に重要になります。
仮に安全性の高い**米10年国債が3%**しかもらえない世界なら、
「NVIDIAなら大きく成長する。多少PERが高くても株を買おう」
となりやすい。
ところが米国債が**5%**になったら、
「ほぼ信用リスクのない米国債で5%もらえるのに、なぜ高いPERを払ってNVIDIA株のリスクを取るのか?」
という比較が始まります。
そこで投資家が要求する株式の期待収益率も上がります。
イメージとしては、
米国債3% + 株式リスクプレミアム5% → 要求収益率8%
だったものが、
米国債5% + 株式リスクプレミアム5% → 要求収益率10%
になる。
これだけで、将来利益の「現在の価値」はかなり下がります。
AI株には特に効きます
ここが普通の成熟企業との違いです。
AI関連企業の評価には、
「2030年にはものすごく儲かる」
「2035年にはAI市場が巨大になる」
という遠い将来の利益が大量に織り込まれています。
ところが金利が高くなるほど、遠い将来のお金ほど現在価値が小さくなります。
極端に単純化して、10年後の100ドルを現在価値にすると、
| 割引率 | 10年後の100ドルの現在価値 |
|---|---|
| 5% | 約61ドル |
| 8% | 約46ドル |
| 10% | 約39ドル |
| 12% | 約32ドル |
つまり、
AI市場の将来予測を1ドルも変更していないのに、金利だけで企業価値が大きく変わり得る。
これが「バリュエーションの再計算」です。
そして、今のAIブームにはもう一つ重要な問題があります。
金利上昇
→ AIデータセンター建設資金が高くなる
→ データセンターの要求利回りが上がる
→ GPUを買って得られる収益の採算ラインが上がる
→ AIインフラ投資案件の選別が厳しくなる
という実体経済側の経路です。
たとえば1000億円のAIデータセンターを借入で建設するとします。
資金コスト4%なら年間40億円。
6%なら年間60億円。
単純化しても年間20億円違う。
しかもAIデータセンターはGPU、電力設備、冷却、ネットワーク、建屋など非常にCAPEXが大きい。したがって金利上昇はかなり効きます。
ここからが、私は一番面白いと思っています。
NVIDIAにとって「悪い」と単純には言えません
AI需要そのものが強ければ、NVIDIAのGPU需要は残ります。
しかし資金調達環境が厳しくなると、
「AIなら何でも投資する」
から、
「本当にGPU投資を回収できる案件だけ投資する」
へ変わります。
すると市場は、
「GPUを何台買ったか」
より、
「そのGPUから何ドルの売上・FCFを生み出せたか」
を見るようになります。
これはハイパースケーラーにも同じです。Microsoft、Amazon、Google、Metaが巨額AI CAPEXを続けても、「AI投資額が大きいから評価する」ではなく、AI CAPEXに対してどれだけ利益を生み出したのかがさらに厳しく問われます。
だから「米10年債5%」を見ているわけです。
これは5.00%を超えた瞬間にAI株が暴落する魔法の数字ではありません。
むしろ、
リスクなしで5%前後取れる世界でも、このAI企業に今のPERを払う価値があるのか?
という問いが市場全体で強くなる水準、と考えると分かりやすいです。
そして今回の局面では、株価の割引率上昇と、AIデータセンターそのものの資金調達コスト上昇が同時に起きる。ここが2022年の単純な「高PERグロース株売り」より、AI産業を見る上では面白いところです。