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【YouTuberの仕事と稼ぎ方はどう変わる?(3)】YouTubeチャンネルは売買できる?価格相場・譲渡方法・注意点を解説

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【YouTuberの仕事と稼ぎ方はどう変わる?(3)】YouTubeチャンネルは売買できる?価格相場・譲渡方法・注意点を解説.png 「YouTubeチャンネルって、売れるんですか?」

そう聞かれると、多くの方は驚かれます。でも、答えは「売れます」です。しかも、すでに日本では年間1,500件を超えるウェブサイトや事業が売買されていて、売りに出されている案件のうち約半分がYouTubeチャンネルなのです。

第1回では、事務所に囲われる時代が終わったこと。第2回では、AIによって「作ること」の値段が下がり、「積み上げた実績」の価値が上がることをお話ししました。最終回は、その積み上げた実績が実際にいくらで取引されているのか、そしてこれから3年でこの市場がどうなるのかを見ていきます。

※この記事では、1ドル=160円で計算しています。

そもそも、なぜチャンネルが売買されるのか

理由は単純で、買ったほうが速いからです。

ゼロからチャンネルを立ち上げると、まず収益化の条件(登録者1,000人と、直近1年の総再生時間4,000時間)を満たすまでに、多くの人が数か月から数年かかります。しかも途中で挫折する人が大半です。日本国内で登録者1,000人以上のチャンネルは約22万9,000(2025年12月時点の第三者調査)。そのうち10万人以上は約1万1,000、100万人以上になると700弱しかありません。ものすごく細いピラミッドです。

一方、すでに動いているチャンネルを買えば、登録者もYouTubeからの評価も、初日から引き継げます。企業が自社メディアを作りたいとき、ゼロから3年かけるより、実績のあるチャンネルを買って中身を育てるほうが合理的な場面は確実にあります。

売る側にも理由があります。「動画作りに飽きてしまった」「本業が忙しくなった」「思ったより伸びない」----そんなとき、これまでは「更新をやめて放置する」しか選択肢がありませんでした。でもそのチャンネルを必要としている人がいるなら、譲ることでお金に換えられます。やめる=消す、ではなく、やめる=売るという選択肢が生まれたわけです。

実際の相場は、意外と身近な金額です

では、いくらで売れるのでしょうか。

国内最大手のサイト売買サービス「ラッコM&A」の公表実績を見ると、年間の成約は2023年が1,470件・約10億円、2024年が1,678件・約11.9億円、2025年が1,578件・約11.5億円。サービス開始から2026年7月時点までの累計は6,858件・約48.5億円です。

そして、掲載されている案件のうち48.5%がYouTubeカテゴリ。いまや最大のジャンルです。 国内のチャンネル・サイト売買はこの規模

価格帯は、意外と小さいところが中心です。30万円未満が44%、30万〜100万円未満が28%。成約金額50万円未満の取引が全体の約65%を占めます。相場の目安としては「月間の利益の12〜24か月分」あたりが一つの目安とされ、登録者1万人未満なら10〜30万円程度、収益化済みで安定して稼いでいるチャンネルなら50万〜1,000万円程度が観測される範囲です。

「思ったより安い」と感じたかもしれません。ただ見方を変えれば、月に3万円稼ぐチャンネルが、40万〜70万円ほどの値段で売れるということでもあります。趣味で始めたものが、それだけの資産になっているという事実は、もっと知られていいと思います。

もうひとつ注目すべきは買い手の顔ぶれです。同社のデータでは、売り手の84%が個人であるのに対し、買い手の30%が法人。「個人が育てた資産を、企業が買い上げる」というお金の流れが、はっきり見えてきています。

日本は、アメリカの5年〜10年うしろを走っている

この市場を考えるうえで参考になるのが、アメリカの状況です。

アメリカでは「Spotter(スポッター)」という会社が、クリエイターの過去動画が将来生む広告収入を買い取るビジネスを確立し、累計9億4,000万ドル(約1,500億円)を735以上のチャンネルに投じたと公表しています。子ども向け動画の「Moonbug」は約30億ドルで買収され、人気YouTuberのMrBeastの持株会社は50億ドルの評価がついたと報じられました。チャンネルはすでに、機関投資家が値札をつける金融商品になっているのです。

それに比べると、日本の市場はまだ小さな萌芽期です。ただ、これは裏を返せば「これから伸びる余地が大きい」ということでもあります。

調査レポートの試算では、国内のチャンネル流通額は2025年時点で年5〜15億円(中心値10億円)。ここから2030年に向けて、控えめに見て約20億円、中位のシナリオで約37億円、大きく伸びれば約76億円まで拡大すると見込まれています。 2030年に向けた3つのシナリオ]

この予測を後押しする材料もあります。日本企業のM&A(企業や事業の売買)件数は2024年に4,700件と過去最多を更新し、そのうち後継者不足を背景とした事業承継型のM&Aは前年比31%増でした。「事業を売り買いすること」への心理的なハードルが、社会全体で下がってきているのです。

ただし、危ない取引もあります

ここからは注意点です。チャンネル売買には、まだ整備しきれていない部分があります。

まず知っておくべきは、Googleのアカウントそのものは譲渡できないというルールです。ではどうやって引き渡すかというと、「ブランドアカウント」という仕組みを使って、チャンネルの管理権限を新しい持ち主に移します。ちなみに権限の移行には7日間の待機期間があり、また広告収入を受け取るアドセンスのアカウントは譲渡できないため、支払い先の切り替えは別の手続きになります。このあたりを知らずに個人同士で取引すると、確実にトラブルになります。

実際に起きているトラブルは、たとえばこんなものです。

  • お金を先に払ったのに、チャンネルを引き渡してもらえない
  • 引き渡し後に、売り手がパスワードを再設定してチャンネルを取り戻す
  • 登録者数が、機械的な水増しで作られたものだった
  • 収益のスクリーンショットが加工されていた
  • 買ったあとで、過去の動画に著作権侵害の申し立てが発覚した

弁護士や各サービスは、「契約書を交わさない取引」「前払いを要求する取引」はほぼ詐欺とみなすべきだと注意を促しています。エスクロー(第三者が代金を一時預かりし、引き渡しの完了を確認してから売り手に渡す仕組み)と本人確認を備えた仲介サービスを使うのが安全です。

もうひとつ、日本ならではの難しさが「属人性」です。日本のYouTubeは演者さんの人柄やキャラクターへのファンが多いため、チャンネルを買っても中の人が変わればファンが離れてしまうリスクがあります。逆に言えば、顔出しなしで運営できるチャンネルや、外注で回せる仕組みのあるチャンネルほど、売り買いしやすく値段もつきやすい。アメリカが「人ごと引き抜く」買収なのに対し、日本は「仕組みを買う」市場になっているのは、この違いによるものです。

これから3年で、市場はどう変わるか

最後に、2029年ごろまでを見通してまとめます。

1. 「チャンネル=資産」という考え方が普通になる。 第1回で見たとおり、事務所に守ってもらう時代は終わりました。第2回で見たとおり、AIが増えるほど積み上げた実績の価値は上がります。この2つが合流する先が、チャンネルの資産化です。

2. 取引の安全インフラが整う。 いま市場の成長を止めているのは、買いたい人の不足ではありません。「安心して売れる場所がない」ことです。収益データをYouTubeの公式APIから直接表示する、本人確認をする、代金を預かる、権限移行の完了を見届ける----こうした当たり前の仕組みが整うかどうかが、そのまま市場の伸びを決めます。

3. 法人のお金が本格的に入ってくる。 すでに買い手の30%が法人です。テレビCMの予算が動画に流れ、企業が自社メディアを求める流れは、これから3年でさらに強まるでしょう。

そして最後に、これを読んでいるあなたに一つだけ。

もしいま、更新が止まったままのチャンネルをお持ちなら、それは「失敗した趣味」ではなく、値段のつく資産かもしれません。逆にこれから始める方にとっては、ゼロから育てる以外の入口も存在します。

YouTubeは20年かけて、総収入9.6兆円という巨大な経済圏になりました。その収入の55%は、いまも世界中のチャンネル運営者に分配され続けています。チャンネルを持つということは、その分配を受け取る「席」を持つということです。席は、譲ることもできます。

全3回、お付き合いいただきありがとうございました。

主な参照資料:ラッコM&A公表成約実績、kamui tracker(エビリー)国内チャンネル統計、Google公式ヘルプ(ブランドアカウントの所有者変更)、レコフデータ(国内M&A件数)、Spotter社発表、調査レポート「YouTube市場の過去・現在・未来」(2026年7月)。2030年の市場規模は明示した前提に基づくシナリオ試算であり、公式統計ではありません。金額は1ドル=160円で換算。


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