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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

つまらなければ3秒で縦スクロールされてしまうTikTokの衆院選2026。参政、国民民主、自民、維新、中道改革連合はどう戦っているのか?

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これは新しいタイプのジャーナリズムではないか?という読後感のある、読み応えのあるTikTok衆院選2026のレポートです。長文が苦にならない人はおもしろがって読んでいただけると思います。TikTok上で現在進行形で進んでいる、ある意味で歪曲された、ある意味でめちゃめちゃ恣意的なショート動画の選挙プロパガンダが、どのようなものであるかを知るのに良いレポートです。

私はもうTikTokはふだん見ていないので(もっぱら情報収集目的でX)、TikTokでこんな光景が展開しているのか?と驚くことしきり。

実験的な試みとして、Gemini + Bananaで作成したイラスト風のスライドを多少挿入してみました。(作成しておもしろくないものは省きました)お楽しみ下さい。

2026年衆議院総選挙におけるデジタル・ポリティクスの地殻変動:TikTokが規定する「アルゴリズム民主主義」の全貌

1. 序論:12日間の「超短期決戦」と情報の非対称性

2026年1月27日に公示され、2月8日に投開票を迎える第51回衆議院議員総選挙は、日本政治史上において極めて特異な選挙戦として記憶されることになるでしょう。高市早苗内閣総理大臣による「電撃的な解散」によって設定されたわずか12日間の選挙期間は、戦後最短級の短期決戦であり、この物理的な時間の制約が、有権者の情報取得行動を劇的に変容させています

かつて「ネット選挙」と呼ばれた現象は、候補者が自身のウェブサイトやTwitter(現X)でテキストベースの政策を発信する「Web 1.0 / 2.0」的な段階にありました。しかし、2026年の現在、その主戦場は完全に「動画」と「アルゴリズム」に移行しています。特に、若年層から現役世代にかけて圧倒的な接触時間を誇るショート動画プラットフォーム「TikTok」は、単なるエンターテインメントの場ではなく、政治的リアリティを構築する主要なインフラとしての地位を確立しました。

本レポートは、TikTokを中心としたソーシャルメディア空間における各党の戦略、有権者の反応、そしてそこで醸成される「空気」を、提供された膨大なデータとOSINT(オープン・ソース・インテリジェンス)分析に基づき、網羅的かつ客観的に分析するものです。

特に、TikTok上での再生回数で他を圧倒する「参政党」、巧みなSNS戦略で政策論争をリードする「国民民主党」、そして過半数維持と政権の正統性をかけて戦う「自由民主党」の3党を主軸に据えつつ、歴史的な再編を果たした「中道改革連合」や、地域政党からの脱皮を図る「日本維新の会」の動向についても詳細に言及します。

現代の選挙戦において、有権者の投票行動を左右するのは、精密に積み上げられたマニフェスト(政権公約)の厚みではなく、スマートフォンの画面を縦にスクロールする親指を止める「最初の3秒」のインパクトです。この「アテンション・エコノミー(関心経済)」の論理が、いかにして日本の民主主義を変質させ、あるいは新たな形へと進化させているのか。本稿では、表面的な再生数の多寡にとどまらず、その背後にある構造的な変化と、各党が描くデジタル戦略の深層を解き明かします。

1.1 「切り抜き動画」という新たな政治的通貨

2026年の選挙戦を理解する上で不可欠な前提知識として、「切り抜き動画(Kirinuki)」の存在が挙げられます。これは、長時間の記者会見や街頭演説、インターネット番組などから、ハイライトとなる数分間を第三者が編集・抜粋し、字幕や効果音を付加して再投稿するコンテンツ形式を指します。

データによれば、YouTubeやTikTokにおける政治関連動画の総再生数のうち、実に約90%が政党公式チャンネルではなく、こうした「第三者」による投稿で占められているという衝撃的な事実がありますこれは、政党が発信する「公式のメッセージ」よりも、有権者や支持者、あるいは収益目的のクリエイターによって文脈が再解釈され、感情的に加工された「非公式のナラティブ」の方が、遥かに強い伝播力を持っていることを意味します。

この構造は、情報の「民主化」であると同時に、極めて危険な「断片化」をもたらします。複雑な外交問題や財政議論が、60秒の動画尺に収まるよう単純化され、しばしば対立を煽るようなタイトル(「論破」「激怒」「放送事故」など)と共に拡散されることで、政治的熟議よりも情動的な反応が優先される土壌が形成されています。各党のTikTok戦略の成否は、この「切り抜き文化」をいかに味方につけ、あるいはコントロールできるかにかかっています。

1.2 生成AIと「嘘つきの配当」

さらに2026年選挙の特徴として、生成AI技術の汎用化に伴うディープフェイクの脅威が現実化している点が挙げられます。特に高市首相をはじめとする主要政治家の「偽動画」が出回ることで、有権者は「目の前の動画が本物かどうか」を常に疑わなければならない状況に置かれています

これは「嘘つきの配当(Liar's Dividend)」と呼ばれる現象を引き起こします。すなわち、本物の不祥事や失言の映像が流出した際にも、政治家側が「それはAIで作られたフェイクだ」と主張することで、責任を回避しやすくなるというパラドックスです。TikTokのアルゴリズムは、真偽にかかわらず「エンゲージメント(反応)」が高いコンテンツを拡散する性質を持つため、ファクトチェックが追いつかない速度で情報が消費されていく現状があります。

プラットフォーム 政治的役割 コンテンツの特徴 ターゲット層
TikTok 世論形成の「着火点」 1分以内のショート動画、ミーム、音楽 10代〜30代、無党派層
X (旧Twitter) 議論の「戦場」 テキスト、引用リポストによる論争 政治関心層、メディア関係者
YouTube 理解の「深化」 長尺動画、対談、解説 全世代、コア支持層
Instagram イメージの「定着」 ストーリーズ、リール、写真 女性層、若年層

2. 参政党:アルゴリズムが生んだ「デジタル・ポピュリズム」の覇者

TikTokというプラットフォームにおいて、参政党は単なる一政党の枠を超え、ひとつの「現象」となっています。2025年の参院選前後から続くその勢いは2026年の衆院選でも衰えるどころか、より洗練された形で展開されています。再生回数において他党を圧倒する彼らの強さは、偶然の産物ではなく、極めて計算された組織戦略とアルゴリズムへの適応の結果です。

2.1 圧倒的な再生数と「シェア・オブ・ボイス」の支配

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客観的なデータに基づくと、政党名を含む動画の再生数において、参政党は約9億3952万回という驚異的な数値を記録し、第2位の自由民主党(約7億4360万回)に大差をつけてトップに君臨しています。れいわ新選組や国民民主党もSNS活用に長けていますが、TikTokという特定のフィールドにおいては参政党が「絶対王者」の地位を築いています。

この「シェア・オブ・ボイス(発話量のシェア)」の支配は、選挙戦において極めて重要な意味を持ちます。TikTokの「おすすめ(For You)」フィードは、ユーザーの興味関心に基づいてコンテンツを自動再生しますが、参政党関連の動画が圧倒的な量で供給されることにより、政治に無関心なユーザーのフィードにも彼らの主張が頻繁に露出することになります。これは、従来の街頭演説やテレビCMでは到底到達し得なかった層へのリーチを可能にしています。

2.2 「3つのトライアングル」戦略の完成

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参政党の強さの源泉は、立命館大学の柳原准教授らが分析する「3つのトライアングル」戦略にあります。これは、以下の3つの要素を有機的に結合させ、相互に増幅させるシステムです。

  1. リアルな活動(地上戦): 全選挙区に候補者を擁立し、全国各地で頻繁に街頭演説やタウンミーティングを開催しますこれは単なる支持の訴えではなく、「動画の素材作り」としての側面を強く持ちます。

  2. 他メディアへの露出(空中戦): 地上戦での熱狂や、SNSでの盛り上がりがマスメディア(テレビ、新聞)に取り上げられることで、「いま参政党がキテいる」という社会的証明を獲得します。

  3. 自社SNS(サイバー戦): リアルな活動の映像を即座に「切り抜き動画」として拡散し、それを見たユーザーを再びリアルの場へと誘導します。

特に重要なのは、神谷宗幣代表が語る「堅実に積み上げ、時にバズる」という方針です。突発的なバズ(流行)だけに頼るのではなく、党員組織という「足腰」を鍛えつつ、バズが起きた瞬間にその風を捉えて一気に党勢拡大に繋げるという、組織論とデジタル戦略が融合したハイブリッドなアプローチが採られています。

2.3 コンテンツの変容:「陰謀」から「教育」へ

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2026年の参政党のTikTok戦略において特筆すべき変化は、コンテンツの質的な転換です。初期の参政党の動画は、街頭で既存政党やグローバリズムを激しく糾弾する、いわゆる「怒り」の感情に訴えかけるものが主流でした。しかし、衆院選に向けて彼らはより広範な支持層、特に保守的な中間層を取り込むために、「ビジネス系」や「教育系」の文法を取り入れ始めています

  • 専門家対談: 医療、食、教育、防衛などの分野で専門家を招き、スタジオで落ち着いて議論する形式の動画が増加しています。これは「陰謀論的」とレッテルを貼られがちな党のイメージを払拭し、「政策立案能力のある政党」としてのブランディングを図る狙いがあります。

  • 「日本ファースト」の知的再構築: 神谷代表の演説も、単なる排外主義的なアジテーションではなく、歴史や地政学的な文脈を踏まえた「教養コンテンツ」としてパッケージングされています。TikTok上では「学校では教えてくれない真実」といったフレームで拡散され、知的好奇心を刺激された若年層がファン化する流れを作っています。

2.4 「切り抜き部隊」による分散型プロパガンダ

参政党の動画拡散を支えているのは、熱心な支持者たちによる自律分散的な「切り抜き」活動です。党は著作権に関するガイドラインを緩和し、支持者が自由に演説動画を編集・投稿することを推奨しています。これにより、党本部が制作コストをかけることなく、数千、数万という「広報担当者」が勝手に魅力的な動画を作成し、それぞれのネットワークで拡散してくれるという、極めて効率的なプロパガンダ・マシンが構築されています。

彼らの動画は、「感動的なBGM」や「テロップの強調」といった演出技術が高く、視聴者の感情を揺さぶることに特化しています。例えば、候補者が涙ながらに日本の未来を憂うシーンや、神谷代表が聴衆の質問に即答するシーンなどが、ドラマチックに編集され、「政治家=悪・無能」というステレオタイプを持つ有権者に対して「この人たちは本気だ」という印象を植え付けることに成功しています。

3. 国民民主党:「手取り」ミームが生む経済的リアリズム

国民民主党は、参政党とは対照的に、徹底した「経済的リアリズム」と「政策のミーム化」によってTikTokでの存在感を高めています。玉木雄一郎代表率いる同党は、SNS活用がうまいと定評がありましたが、2026年衆院選においてはその戦略が結実し、特定の政策ワードを社会現象化させることに成功しています。

3.1 「もっと手取りを増やす」のミーム化

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国民民主党の最大の功績は、「もっと手取りを増やす(Motto Tedori wo Fuyasu)」という極めてシンプルで強力なスローガンを、TikTok上の「ミーム(模倣・拡散される文化的遺伝子)」にまで昇華させたことです

  • 痛点への直撃: 「103万円の壁」の引き上げや社会保険料の軽減といった政策は、就職氷河期世代や、アルバイトで生計を立てる学生、手取りの少なさに悩む若手社会人(Z世代・ミレニアル世代)の生活実感に深く突き刺さります。

  • 解説動画との親和性: 複雑な税制や社会保障の仕組みを、「なぜあなたの手取りは増えないのか?」という切り口で60秒以内に解説する動画は、TikTokの「学習系コンテンツ」の需要と完全にマッチしました。玉木代表自身がホワイトボードを使って解説する動画や、インフルエンサーが「これマジでやった方がいい」と紹介する動画が爆発的に拡散されています

3.2 玉木雄一郎という「合理的インフルエンサー」

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党首である玉木雄一郎氏のキャラクターも、TikTokのアルゴリズムに愛される要素を備えています。彼は従来の政治家像である「偉そうな先生」ではなく、「筋トレ好きの近所のお兄さん」あるいは「頼れる実務家」としてのペルソナを確立しています。

  • 対決より解決: 「対決より解決」という党のスタンスは、TikTokユーザーが好む「論破」文化とは一線を画す、「建設的な提案」のスタイルとして受容されています。他党を激しく攻撃するのではなく、「こうすれば日本は良くなる」というポジティブなメッセージは、政治的対立に疲れた無党派層にとって清涼剤のような効果を持っています

  • 炎上への耐性と活用: 玉木氏は、外国人材の医療制度利用問題などで批判(炎上)を受けた際も、逃げることなくSNS上で直接反論を行ったり、詳細な解説動画を投稿したりしています。この「レスポンスの速さ」と「逃げない姿勢」は、デジタルネイティブ世代からの信頼獲得に繋がっています。炎上すらもアテンション(注目)の一形態として取り込み、政策拡散の燃料に変えてしまう「転んでもただでは起きない」強かさがあります。

3.3 連立政権入りを巡る「匂わせ」戦略

高市首相が国民民主党との連立を示唆する発言を行ったことに対し、玉木氏が是々非々の態度を崩さないことも、TikTok上でのエンゲージメントを高める要因となっています。 ユーザーたちはコメント欄で「玉木は大臣になるべきか」「自民党に取り込まれるな」といった議論を活発に行い、これがアルゴリズムによる動画の評価を高め、さらに拡散されるという好循環を生んでいます。政治的な駆け引き(政局)を、ドラマの次回予告のように消費させることで、有権者の関心を持続させているのです。

3.4 ターゲット層の明確化:現役世代への一点突破

国民民主党のTikTok戦略が優れている点は、ターゲットを「現役世代」に絞り込んでいることです。高齢者向けの政策(年金など)よりも、若者や働く世代の「財布の中身」に直結する話題に特化することで、TikTokの主要ユーザー層との共鳴を最大化しています。これは、「全方位外交」でメッセージがぼやけがちな他党との差別化要因となっています。

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4. 自由民主党:高市早苗による「個人的ポピュリズム」と組織のデカップリング

政権与党であり、過半数獲得を目指す自由民主党のTikTok戦略は、非常に逆説的かつハイリスクな構造の上に成り立っています。それは、党そのものの不人気さを、高市早苗という強烈な個人のカリスマ性で覆い隠す「デカップリング(切り離し)」戦略です。

4.1 「鉄の女」高市早苗の偶像化

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各種調査において、自民党の政党支持率は20%台と低迷しているにもかかわらず、高市内閣の支持率は70%前後という驚異的な高水準を維持しています。このねじれ現象(高市プレミアム)は、TikTok上で顕著に可視化されています。

  • ファンカム(Fancam)的消費: TikTok上には、高市首相の国会答弁や外交舞台での振る舞いを、映画のような劇的なBGMと共に編集した動画が溢れています。これらは政策の内容よりも、彼女の「強さ」「揺るがない姿勢」「女性初の宰相としてのオーラ」といった美的・感情的側面に焦点を当てています。

  • ナショナリズムのファッション化: 「日本を守る」というメッセージは、高市氏のアイコンと共に、一種のファッションとして消費されています。これは参政党のナショナリズムとも共鳴しますが、自民党の場合は「政権与党の正統性」という権威が加わることで、より安定志向の保守層や、強いリーダーを求める層に刺さっています。

4.2 組織の「隠蔽」と個人の「露出」

自民党の公式TikTokアカウントや公認候補者の動画では、あえて「自民党」という看板を目立たせない傾向が見られます。裏金問題や旧統一教会問題などで傷ついた党のブランドイメージを避け、あくまで「高市早苗と共に戦う候補者」としての個人を前面に出す戦術です。

これは「デカップリング」戦略と呼ばれ、有権者に「自民党は嫌いだが、高市さんは支持する」という認知的不協和の解消を促すものです。TikTokのアルゴリズムは、組織(ロゴや党名)よりも「人の顔」を認識して拡散する傾向があるため、この戦略はプラットフォームの特性とも合致しています。

4.3 「TikTok禁止」と「公式利用」の矛盾

自民党のデジタル戦略における最大の矛盾は、安全保障上の懸念からTikTokの利用制限を議論しつつ、選挙戦では若者へのリーチのために公式アカウントを活用している点です。 このダブルスタンダードは、コメント欄で頻繁にツッコミを受けます。「中国にデータ抜かれるって言ってたのに使ってるじゃん」という皮肉は定番の反応ですが、党としては「背に腹は代えられない」という現実的判断が優先されています。この矛盾を抱えながらも運用を続ける姿勢そのものが、なりふり構わぬ選挙戦の厳しさを物語っています。

4.4 「早苗ノミクス」とFinTok(金融TikTok)の共犯関係

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経済政策において、自民党はTikTok上の金融インフルエンサー(FinToker)を味方につけています。「自民党が勝てば株価は上がる、負ければ暴落する」というシンプルかつ恐怖に訴えるナラティブが、投資に関心のある若年層の間でミーム化しています 「日経平均7万円説」などの景気の良い話と高市氏の映像がセットで拡散されることで、自身の資産形成を重視する層に対し、消去法的に自民党を選ばせる動機付けを行っています。

5. 中道改革連合と日本維新の会:第三極の明暗

自民・公明の連立解消という歴史的転換点において、野党第一党の座を争う中道改革連合と日本維新の会は、TikTok上で対照的な反応に直面しています。

5.1 中道改革連合:「野合」ミームと昭和的感性の限界

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立憲民主党と公明党が合流して結成された「中道改革連合」は、TikTok上では結党直後から激しい逆風に晒されています。

  • 「野合」のレッテル貼り: イデオロギー的に距離があると見なされていたリベラル(立民)と宗教的保守(公明)の合併は、TikTokユーザーの目には「数合わせの野合」「選挙互助会」と映っています特に「中道(Chudo)」という略称をもじって「中核派(Chukaku-ha)」と揶揄するような、悪意あるミームが拡散しており、党のブランディングを著しく毀損しています。

  • ビジュアルの古臭さ: 彼らの発信する動画は、テレビの政見放送のような堅苦しいスタイルが多く、TikTokの文脈(早回し、縦型、エフェクト活用)に適応できていません。ユーザーからは「昭和の匂いがする」「センスが古い」といった辛辣なコメントが寄せられ、若年層へのリーチにおいて致命的な遅れをとっています

  • 政策の埋没: 「食料品消費税ゼロ」という本来であればTikTokでバズりやすい政策を掲げているにもかかわらず、上記のネガティブなイメージや党名の違和感が先行し、政策の中身まで議論が到達していないのが現状です。

5.2 日本維新の会:「ダブル選挙」が生む相乗効果と吉村人気

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一方、日本維新の会は、大阪府知事・市長の「出直しダブル選挙」を衆院選にぶつけるという奇策により、関西圏を中心にTikTok上で圧倒的な存在感を示しています

  • 吉村洋文のインフルエンサー力: 吉村洋文代表(大阪府知事)は、政治家としてトップクラスのフォロワー数と発信力を持っています。彼が「大阪都構想への再挑戦」や「身を切る改革」を訴えて街を練り歩く姿は、視覚的に分かりやすい「改革者」のストーリーとして機能しています

  • 地域的エコーチェンバー: 大阪を中心とする関西エリアでは、維新の動画がアルゴリズムによって優先的に表示される「地域的エコーチェンバー」が形成されています。これにより、関西のユーザーにとっては「維新一色」の選挙戦に見える状況が作られており、地盤の固さをデジタル上でも補強しています。

  • 自民との接近: 維新が自民党との連立を視野に入れていることに対し、TikTok上では「補完勢力」という批判と「現実的な改革」という評価が入り乱れていますが、少なくとも中道改革連合よりは「新しい政治」のイメージを維持することに成功しています。

6. クロス・セクション分析:2026年選挙を貫くテーマ

各党の個別戦略を超えて、2026年のTikTok選挙全体を貫くいくつかの重要なテーマが浮かび上がります。

6.1 アテンション・エコノミーと情報の劣化

12日間という超短期決戦は、政策論争の質よりも「いかに目立つか」を競うアテンション・ゲームを加速させました。TikTokのアルゴリズムは、冷静な分析よりも感情的な「怒り」や「感動」、あるいは「笑い」を優遇します。その結果、各党とも複雑な政策を極限まで単純化したスローガン(「手取りを増やす」「日本を守る」「消費税ゼロ」)を連呼せざるを得なくなっています。これは有権者への分かりやすさを提供する一方で、財源論や実現可能性といった重要な議論を捨象する副作用をもたらしています。

6.2 世代間対立の煽動

TikTok上の政治言説は、明確に「世代間対立」を煽る傾向にあります。「高齢者が国を食い潰している」「若者の負担を減らせ」といったナラティブは、現役世代のルサンチマンを刺激し、高いエンゲージメントを生みます。国民民主党や維新の会、参政党はこの感情を巧みに汲み取っていますが、これは社会の分断を深めるリスクも孕んでいます。

6.3 「AI政治」の幕開け

本選挙は、AIによる選挙予測や情勢分析が一般化した最初の選挙でもあります。同時に、ディープフェイクによるネガティブ・キャンペーンが水面下で進行しており、有権者は「自分の目で見ている映像が真実とは限らない」という高度なリテラシーを要求されています。

7. 結論:アルゴリズムが選ぶ日本の未来

2026年衆院選におけるTikTokの役割は、単なる広報ツールから、政治的リアリティそのものを構築するプラットフォームへと変貌しました。

  • 参政党は、デジタル空間における組織戦と感情動員のモデルケースを完成させました。

  • 国民民主党は、政策をミーム化することで、無党派層の生活実感に侵入することに成功しました。

  • 自民党は、党のシステム疲労をリーダー個人の人気で覆い隠すという、綱渡りの空中戦を展開しています。

  • 中道改革連合は、デジタル・マナーへの不適応により、その規模に見合った存在感を発揮できていません。

2月8日の投開票結果がどうあれ、日本の政治はもはやTikTokのアルゴリズムを無視しては成立しない段階に突入しました。それは「熟議の民主主義」から、瞬間的な共感と視覚的インパクトが支配する「アルゴリズム民主主義」への不可逆的な転換を意味しているのかもしれません。私たち有権者は、流れてくるショート動画の向こう側にある意図と構造を見抜く眼力を持てるかどうかが、かつてないほど問われています。


表1: 主要3党+2勢力のTikTok戦略比較マトリクス

政党 キーワード デジタル戦略の核 主要ターゲット層 TikTok適合度 懸念点
参政党 教育・覚醒

トライアングル戦略


(地上戦×切り抜き×拡散)

保守層、健康・食に関心のある層、現状不満層

極めて高い


(圧倒的再生数)

支持層の先鋭化、陰謀論的イメージの払拭
国民民主党 手取り・解決

政策ミーム化


(「もっと手取りを増やす」)

Z世代、就職氷河期世代、無党派層

高い


(実利による訴求)

党勢拡大に伴う組織の緩み、連立協議の影響
自由民主党 高市早苗・安定

デカップリング


(リーダー個人への集中)

岩盤保守層、安定志向の若者、投資家層

中〜高


(高市人気に依存)

党不祥事の再燃、リーダーのスキャンダルリスク
中道改革連合 食料税ゼロ

伝統的広報


(テレビCMの延長)

旧来のリベラル層、創価学会員

低い


(「野合」批判、「昭和」感)

SNSでの不人気、支持基盤(学会・連合)のハレーション
日本維新の会 改革・再挑戦

ダブル選挙シナジー


(吉村知事の露出最大化)

関西圏有権者、アンチ既得権益層


(地域差が激しい)

全国展開の停滞、スキャンダル(国保逃れ疑惑等)への追及

表2: 衆院選2026に関連する主要なTikTokハッシュタグとトレンド

ハッシュタグ 関連政党 内容・文脈 感情的傾向
#もっと手取りを増やす 国民民主党 税制改正や社会保険料減免の訴え 期待・共感
#高市早苗 自民党 国会答弁の切り抜き、ファン動画 熱狂・憧れ
#参政党 参政党 街頭演説、独自の歴史・健康観の拡散 連帯・覚醒
#野合 中道改革連合 立民・公明の合流に対する批判 嘲笑・怒り
#103万円の壁 全般(主国民) アルバイト収入制限の撤廃議論 切実・不満
#吉村洋文 日本維新の会 大阪ダブル選挙、改革アピール 支持・地域愛
#AIフェイク 全般 政治家ディープフェイクへの注意喚起 警戒・混乱

引用文献

  1. 衆院選に1200人超が立候補予定、与党が過半数の233議席 ..., 1月 27, 2026にアクセス、 https://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/20260125-GYT1T00151/
  2. 第51回衆議院議員選挙 2026年, 1月 27, 2026にアクセス、 https://go2senkyo.com/shugiin/28030
  3. 衆院選2026:Xの議論をAI OSINTで徹底分析:中道改革連合 ..., 1月 27, 2026にアクセス、 https://blogs.itmedia.co.jp/serial/2026/01/2026xai_osintx.html
  4. 「切り抜き動画」が選挙を動かす時代へ!参政党躍進から読み解く, 1月 27, 2026にアクセス、 https://go2senkyo.com/articles/2025/07/21/119019.html
  5. 【参院選】登録者数に再生数..."躍進"の背景は?各党YouTube戦略を ..., 1月 27, 2026にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=jth3tdRm1iI
  6. 【LIVE】参政党東京街宣 有楽町駅前広場 令和7年11月26日(水)18, 1月 27, 2026にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=GihESCspNYs
  7. 参政党、参院選の「日本人ファースト」からキャッチコピー変更 ..., 1月 27, 2026にアクセス、 https://news.livedoor.com/article/detail/30433782/
  8. 【LIVE】参政党年末東京大街宣 新橋SL広場 神谷宗幣 吉川りな 安藤 ..., 1月 27, 2026にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=ks_ixBU0qto
  9. 第51回衆議院議員総選挙に当たって(談話) | 新・国民民主党, 1月 27, 2026にアクセス、 https://new-kokumin.jp/news/business/20260127_1
  10. 国民民主党、103万の壁を178万円に引き上げへ SNS上では喜びの声 ..., 1月 27, 2026にアクセス、 https://search.yahoo.co.jp/realtime/search/matome/bbaf9bbff0d94d91b8d334e4cba35c10-1766049610
  11. 衆院選に先立ち、N高政治部ほか全国の高校生が「ネット党首討論 ..., 1月 27, 2026にアクセス、 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000098.000076533.html
  12. 国民・玉木代表、「中道」めぐる発言報じた日経記事に「誤解を ..., 1月 27, 2026にアクセス、 https://news.livedoor.com/article/detail/30424675/
  13. 玉木雄一郎 | 新・国民民主党 - つくろう、新しい答え。, 1月 27, 2026にアクセス、 https://new-kokumin.jp/tag/tamaki-yuichiro
  14. 【SNSで話題の事実解説】 玉木代表が激論し炎上した来日外国人の ..., 1月 27, 2026にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=QBrLMtTePOo
  15. 高市首相、自維連立政権を問う選挙のはずなのに国民民主に ... - アゴラ, 1月 27, 2026にアクセス、 https://agora-web.jp/archives/260126231402.html
  16. トランプ氏の真の狙いと戦略を徹底解剖&日韓首脳会談を速報 - TVer, 1月 27, 2026にアクセス、 https://tver.jp/episodes/epgpri458y
  17. 衆議院選挙:「233」「243」「261」...衆院選で注目の議席数, 1月 27, 2026にアクセス、 https://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/20260127-GYT1T00093/
  18. 【最新議席予想】高市人気で自民党に追い風、中道改革 ... - YouTube, 1月 27, 2026にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=7PW5_Nmfp_0
  19. 「自民党もTikTokを開始」平井卓也元デジタル相が表明 国内で月間 ..., 1月 27, 2026にアクセス、 https://japan-forward.com/ja/japans-ruling-party-to-launch-tiktok-account-in-june/
  20. 自民党がTikTok 公式アカウント開設「若者への訴求力」の裏に潜む ..., 1月 27, 2026にアクセス、 https://rocket-boys.co.jp/security-measures-lab/ldp-launches-tiktok-account-national-security-concerns/
  21. 「TikTok」など・・・中国発のアプリの制限検討 自民党(20/07/28), 1月 27, 2026にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=5S2Aja_Kic0
  22. 【市川レポート】衆院解散の観測報道で日本株急騰~今後の展開について考察する, 1月 27, 2026にアクセス、 https://www.smd-am.co.jp/market/ichikawa/2026/01/irepo260113/
  23. 立憲民主党・公明党の新党「中道改革連合」を紹介する"替え歌 ..., 1月 27, 2026にアクセス、 https://www.jprime.jp/articles/-/40077?display=b
  24. 立憲・公明の新党を紹介する"替え歌ダンス"動画に国民から呆れ声 ..., 1月 27, 2026にアクセス、 https://news.livedoor.com/article/detail/30410009/
  25. 【26眾院選】中道改革連合舉行成立大會=政見主張「今秋」消費稅歸零, 1月 27, 2026にアクセス、 https://www.nippon.com/hk/news/yjj2026012200722/
  26. 高市首相の冒頭解散に乗じて大阪知事選・市長選のトリプル選挙に ..., 1月 27, 2026にアクセス、 https://www.news-postseven.com/archives/20260118_2087446.html?DETAIL
  27. 【ライブ】大阪・吉村知事会見|出直しダブル選挙へ ... - YouTube, 1月 27, 2026にアクセス、 https://www.youtube.com/live/Kd1RK2rre2c
  28. 【LIVE】大阪・出直しダブル選挙へ 維新 吉村洋文代表・横山英幸副 ..., 1月 27, 2026にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=SljEfjdBqxs
  29. 大阪ダブル選へ 兵庫県内議員の反応は「少し違う気がする」, 1月 27, 2026にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=SOnmFJzOD_c

『ホリエモンAI選挙』公開----2026年衆議院選挙のAI予想データをメディア向けに無償提供開始(引用元明記のみで利用可), 1月 27, 2026にアクセス、 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000099.000142396.html

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