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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

都市交通の破壊的イノベーション?インフラ輸出品目としてのBRT(上)

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最近、BRTに関する記事をよく見ます。BRTはBus Rapid Transitの略。直訳的にはバス高速輸送。中身は鉄道輸送とバス輸送の折衷的な公共輸送システムです(正確な定義は後で述べます)。最近BRT関連のニュースが多いというのは、言うまでもなく、東日本大震災の被害に遭った三陸沿岸のJR山田線、大船渡線、気仙沼線の復旧に関連して、コストのかかる鉄路復旧ではなくBRTを選択してはどうかという提案が出されているからです。各地域で賛否両論があり、ここではその是非を論じません。

読売新聞:鉄道復旧かBRT導入か、被災地で議論進まず(2012/3/5)
日経コンストラクション:BRTで仮復旧の気仙沼線、JR東日本が整備に着手(2012/5/23)
朝日新聞:BRT拒否を通知 山田線沿線4市町村(2012/7/10)
岩手日報:JR山田線のBRT断念へ 沿線4首長が拒否(2012/7/10)
岩手日報:JR東が大船渡線のBRTを正式提案 最大6割が専用道(2012/7/14)
河北新報:JR大船渡線のBRT路線案を提示 JR東日本(2012/7/14)
河北新報:気仙沼BRT来月下旬運行 工事早期完了にめど JR東(2012/7/14)

■ジャカルタのBRTに驚く

上記の記事で触れられているBRTは、いわば日本独自のBRTと言ってよく、新興国や欧米の都市などで導入されている、本来的なBRTとは一線を画します。

私の場合、昨年ジャカルタを訪問した際に、都心部の専用レーンを走る、やや新鮮な公共交通システムを実見して「これがBRTというものか」と驚いた経験があります。新鮮というのは、バスに乗り降りするための「駅」があり、駅には地上1メートルほどの高さの「プラットフォーム」があり、「プラットフォーム」とバスの乗降口との接続は、あたかも日本の電車のプラットフォームと乗降口の接続のように機能していて、「おお、こんなやり方もあるのか」と思わせるものだったからです。

少し写真と動画を撮ってあるので掲げてみましょう。一見は百聞にしかず。見ると納得できます。

これがBRTの駅。ジャカルタの都心中の都心と言ってよい地区にある駅です。乗客はドアが閉まった駅構内で待っています。

Jakartabrt00_3

次にバスが近づいてきて乗客を降ろし、乗せて出発していく様(動画)。最初に止まったところで下ろして、次に少し進んで別な乗降口から乗客を乗せているようです。

なお、走っているのは分離帯で一般車が入ってこれないようになっている専用レーン。ジャカルタの渋滞は有名ですが、渋滞時にもBRTだけはすいすい走っています。補足すれば、ジャカルタ市内には無数の一般バス路線があり、ものすごく運行歴の長そうなバスがたくさん走っています。

BRTの駅構内はこういう感じ。この駅では両サイドに乗降口があります。

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駅構内で待っている人。ふだんは乗降口のドアが閉まっています。

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乗り降りする時はこんな感じです。このプラットフォームは地上から1メートルぐらいの高さがあります。つまり、BRT用バスの乗降口も地上から1メートルぐらいの高さがあるということで、すなわち、普通のバス停では乗客の乗り降りはできない構造になっています。

Jakartabrt03

以上を見ると、ジャカルタのBRT(正式名称「トランスジャカルタ」)は、日本でおなじみの電車のシステムと輸送媒体としてのバスとをうまく折衷させた仕組みであることがよくわかります。調べてみると、これが本来的なBRTのようですね。
(続く:新興国にとってBRTが現実的である理由 - インフラ輸出品目としてのBRT(中))

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