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抽象的な方針の言語化が大事な時代。あるいは筆力を高める方法

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常々「〇〇力を高めるには○○するしかない」という命題を主張しているが、今日は筆力の話。
筆力は典型的に「書けば書くほど、品質の高い文章が短時間で書けるようになる」というタイプの能力だ。「書く力を高めるには書くしかない」

そのため、学生から社会人にかけての累積執筆量(どれくらいの分量書いてきたか?)が重要になる。

白川の場合、
①入試(400字で述べよ、的な)
②大学のレポート(これは文系としては標準的かな?)
③ガチ卒論
④空白期(codeと仕様書を書いていた)
⑤同僚への長いメッセージ
⑥日誌(人に見せない。個人用)
⑦1冊目の本
⑧ツイッター
⑨ブログ
⑩2冊目以降の本
という感じだ

学生時代は多くの読者にとってもう済んでしまったことなので、いったん忘れる。
社会人になってから他の人に「量」で差をつけたものを挙げると
⑤同僚への長いメッセージ
⑥日誌
⑧Twitter
⑨ブログ
この辺だろう。
(本はどちらかというとこれらの結果でしかない)

長いメッセージと日誌については以前ブログに書いた。

マービン・バウワーは「メモ」でプロフェッショナル集団を作った、あるいは意見メールのススメ

日報を書き続けることの意味、あるいは結局ひとを育てるのは自分だということ


この2つは(僕にしては珍しく)ちゃんとした自己研鑽っぽい行動だと思う。
でも今日のテーマ「筆力を高めるためには量を書け」ということに照らすと、量に一番貢献しているのは⑧Twitter、⑨ブログ、だ。
※Twitterには、僕にとって単に"141字以上書けるTwitter"でしかないfacebookも含まれる。
※量で言えばTwitterが圧倒的に多い。ブログは量は少ないが、一応整理して書いているので、筆力への貢献度は高い


ここで注意してほしいのはTwitterを読んだり書きなぐるのは、一般的に「仕事ではなく、就業時間中にやるのはサボり」と思われているということだ。
僕ですらある程度そう思い、後ろめたく感じている。でもやっているけど。

ただ15年単位で考えると、就業時間中にTwitter界隈でサボっていたことで鍛えられた筆力は会社に大きな利益をもたらしている。
あくまで結果として。

筆力が会社の利益にどう貢献しているかといえば、一番分かりやすいのは僕が書いた本がマーケティングツールになっていることだ。
(※参考 マーケティングコンテンツの作り方、あるいはエバーグリーンコンテンツとは


でもそれだけではない。先にリンクを貼った「同僚への長いメッセージ」について書いたブログを読んでもらうと理解できると思うのだが、これは会社の価値観(組織カルチャーや仕事への取り組み方など)を言語化する作業なのだ。
あくまで僕個人の意見なので、それには賛成の人も気に食わない人もいるのだが、それを土台として議論をし、すり合わせることができる。
価値観について一切コミュニケーションしない、たいていの組織よりもずっと強い。
ちなみに最近はあまり「同僚への長いメッセージ」を書いていないが、このブログにや本に近いことを書いているので、似たような機能は期待している。


そういう「同僚への長いメッセージ」は非公式な発信。一方でそれらの価値観を議論してすり合わせた上での「会社として公式の文書」もたくさん作っている。

例えばPrincipleと呼ばれる会社方針書。(これも以前ブログで紹介した

他にもかなり多くの価値観や考え方が文章として書き起こされている。
例えば15年くらい前に僕が書いた「OJTを受け入れる側の心構え」というメモは今でも新入社員をプロジェクトで育成する重要なガイドラインになっている。ちょっと角度を変えて「中途入社社員が入社後あたるであろう壁の乗り越え方」なんていう文書もある。

他社でもこれらのカルチャーとかワークスタイルみたいなものはあるが、このように文章に落ちていない会社がほとんどだと思う。
なぜうちの会社で、これらの文書化が進んでいるかといえば、身も蓋もない言い方をすると、CEOの榊巻とCOOの白川の言語化能力が異様に高く、モヤッとしたことも(モヤッとしたことこそ)文書化しまくっているからだろう。


このように、
・ウチの会社ではAみたいなことは推奨されるが、Bは許容されない
・うちの会社のビジョンはこう
・もっとこういう会社になろう
みたいなことを文章で発信し、社員全員の頭の中を揃える、ということは、これからの企業で極めて重要になっていく。今まで以上に。

なぜ今まで以上に重要になったかといえば、ふわっとした商売が主流になってきたからですね。
例えば「キャベツを安く仕入れて売る」とか「雪道に強いタイヤを安く作る」などの商売をやる上では、別に会社の価値観みたいなものを言語化しまくる必要なんて薄いんですよ。
せいぜい「薄利多売!」とか「品質重視!」とか「安全は全てに優先する!」みたいな、シンプルなスローガンがあればいい。それを組織に完全に浸透させることは昔から重要だが、メッセージがシンプルなので、別に筆力はいらなかった(短文コピーライティング能力はあったほうが良さそう)。

でもいま多くの企業が直面しているビジネス環境って、もっとふわっとしている。
「お客様にとって正しいことをやろうとすると、ウチの売上減るな・・」とか。
「ノウハウを惜しげもなく無償で提供していると、中長期的にモトがとれる」とか。
「いくら忙しくても自己研鑽に時間を割くべきだ。なぜなら・・」みたいな感じで。

そういう状況だとシンプルなスローガンは無力で、もっとしっかりした方針が必要だし、それを社員全員がしっかりと理解するためには噛んで含めるような文章にしなければ伝わらない。
社員がこれらを理解していないと不安になったり、上司の方針への不満が焼き鳥屋で爆発したり、経営が社員から見切りをつけられたりする。

僕自身は熱心なフォロワーではないけど、サイバーエージェントの藤田さんなんかもこの手の「ふわっとした状況で、方針を言語化することの重要性」をかなり意識していそうですよね。そうしないとアベマへの巨額投資とかできないでしょう。社員がついてこないから。


長くなって、何が言いたいのか少し散漫になってきたので、言いたいことを箇条書きにして終わろうと思う。
a)会社方針などの抽象的な考え方の言語化が大事な時代になった
b)それには高い"筆力"が必要
c)筆力を高めるには書きまくるしかない
d)だから、就業時間中にTwitterとかブログを書くのは、将来への投資としてアリ
e)会社方針の言語化しまくりは、今度の本「社員ファースト経営」の重要テーマの一つ。
f)たぶん3月か4月に出るから買ってね。


※ちなみにこの文章は人事評価を書くのがあまりに嫌で、それへの逃避として40分くらいで書きました。結果として人事評価は全く進んでいないので、後ろめたく感じています。

+++++参考過去記事
企業内でもアテンションの奪い合いへ、あるいは社長メッセージをスルーする時代

+++++新刊情報
たぶんタイトルは「社員ファースト経営」になると思う。
今は原稿整理を編集さんが終わり、写真を追加してゲラを作り始めてもらったところ。
ゲラチェックは結構楽しいので待ち遠しい。

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