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グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

リブート第18回「アクティブ・ラーニング(子供たちが学びに向かう姿)の視点からの授業改善 学期末の子供たちの感想編」

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教育現場のICT活用について伺いました(2016/08/25初公開分をリブート)

リブートシリーズ・・・2013年から不定期で掲載してきた「教育・授業・ICTに関するインタビューシリーズ」を、今に合わせて「再構成」していく企画です。


この春まで中学校で教諭をされておられた望月陽一郎 先生に教育とICTを学校現場でどのように実践されてきたのか、お話を伺っています。

【望月陽一郎先生・略歴】
元中学校教諭(理科担当)。大分県教育センター情報教育推進担当主事、指導主事、大分県主幹等を経験されています。


【前回の概要】望月先生は「アクティブ・ラーニング(今は「主体的・対話的で深い学び」」について、以下のようにまとめてくださいました。

【望月先生が考える アクティブ・ラーニング(今は「主体的・対話的で深い学び」)とは】

子供たちが授業に集中し「面白い」「わかった」と取り組んでいるなら、先生が話をずっとしていようが、グループ活動していようが、アクティブ・ラーニング(以下、ALと略す)の状態」といえると思います。

  • 先生が一方的に話すのではなく、グループで対話をする活動を取り入れる

という、「見た目の手法」ではなく子供たちがずっと学びに取り組もうと思うように「教科・単元設計を『見通しをもって』考え」「子供たちの感想・授業評価から常に授業を見直して修正し続ける」工夫ある授業作り、が、「AL(今は「主体的・対話的で深い学び」)の視点からの授業改善」と考えています。

今回はAL(今は「主体的・対話的で深い学び」の視点から望月先生が行った授業改善を踏まえ、生徒たちはどのように感じていたのか伺いました。

学期末の子供たちの感想(先生への通知表)

―AL(今は「主体的・対話的で深い学び」及び、望月先生が行われた授業改善の取り組みは、読者の皆さまから大きな反響をいただきました。ありがとうございました。

今回は「望月先生の授業を受けた子どもたちは、授業をどのように感じ、受け止めていたのか」知りたいと思います。差し支えのない範囲で、教えていただけますか。

望月先生:毎時間の授業でリフレクションを行っていますが、学期末にも学期全体のリフレクションを書いてもらい、子供たちに感想(先生への通知表)をまとめてもらっています。項目としては、

  • 小テストについて
  • 実験・観察について
  • テレビ、iPad活用について
  • リフレクションについて

などで、それぞれについて記述してもらっています。

―「先生の説明がわかりやすかった」「授業に熱中できた」「理科の授業が楽しかった」「よく理解できた」などが多かったのではないですか?

望月先生:まとめてみると、そういう抽象的な表現ではなくもっと具体的な記述が多くありました。みんな記入欄いっぱいに書いてくれていましたね。

◯小テストについて

復習になった。

自分のわかっていないところがわかった。

・定期テストにつながった

などが多くありました。リフレクションシートと一体化(A4一枚に小テスト回答欄も含まている)させ、返却したあとはポートフォリオ(ファイリング)させているので、こういう回答が多かったと考えられます。

◯実験・観察について

―以前おききしたように、「iPadで先生の手元を拡大表示していたので、見やすくてよかった」などが多かったのでしょうか。

【関連記事】リブート第12回「理科の授業におけるICT活用術 ‐中学校教諭・望月陽一郎先生のお話より‐」:教育ICT研究室よりhttp://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2018/01/ictscience.html

望月先生:1~3年生全体を通して一番多かったのが、

・安全に気をつけて説明してくれたので、無事に実験をすることができた

でした。また、

毎回実験や観察があってよかった。

・先生が自作してくれた器具で実験したことが多かったので、実験の仕組みなどがよくわかった。

などの回答が多かったですね。

理科では、デジタルで見せる教材ではなく実際に実験することが、内容の定着や理解につながりますね。また、安全指導をすることで、生活につながっていきます。

そのために、ガスバーナーの使い方ひとつに時間をかけたり安全面で問題をみつけたらその班は中止させたりするなど、安全(なぜ気をつけなければいけないかその理由)を重視してきたことを、子供たちに評価してもらったと思います。実験の説明場面などでは、ICTを活用し時間短縮しました。

―なるほど。リアルな体験が大事ですよね。

◯テレビ、iPad活用について

―これについては、以前から言われていた「iPadとテレビを組み合わせて、実物を投影してくれたのでわかりやすかった」「グループ2台活用がよかった」などが多かったのではないでしょうか?

望月先生:昨年(2016年当時)は、Microsoft・NECさんの協力でグループ2台活用や「ランダム・フラッシュカード」を使うことができましたが、今年(2016年当時)はなくなったので使えていません。

・教科書を拡大して大切なところに線などを引いてくれるので、どこが大切なのかわかりやすい

・時間短縮になって、いろいろな活動ができた

・テレビだと、先生と黒板が重ならなくて見やすくてよかった。

などが多かったですね。

ベーシックな部分が子どもたちに喜ばれていたのですね。

◯リフレクションについて

―「リフレクションのおかげで、先生がぼくたちのわからないところを次の時に補足してくれるのがわかりやすい」は多くなかったですか?

望月先生:子供たちが「自分を振り返る」という意味で、

授業を振り返ることができる。

・自分が次に気をつけることがわかる

・理科の質問を書くと、答えてくれる

よかったところに線を引いて返してくれる。

などが多かったです。これらを見ていくと、子供たちが理科の授業にどう取り組んできたか・どう捉えてくれたか、授業評価してくれた結果が見えてくると思います。表面的な理解より、「深く学んでいる状態」に近づいていると感じています。

―まとめていただき、ありがとうございます。やはりALとは、何かの手法ではなく「主体的」「対話的」かつ「深い学び」であることが伝わりました。望月先生のご指摘のように子どもたちの頭の中がアクティブであるのが「ALであり、また「子どもたちがどう感じているかを忘れてはならない」ことも押さえていきたいと思います。

授業や教員向けの研修等でお忙しい中、今回もありがとうございました。

まとめ

メディアの記事では、「アクティブ・ラーニング(AL)型授業」とか「アクティブ・ラーニング(AL)の手法」と表記されていることがよくあります。望月先生が以前からご指摘してくださっているように、指導者目線ではなく、子どもたちの目線・子どもたちを主体として考える必要があると受け止めました。

私自身も、ジグソー法などのグループワークをしたり、ICTを取り入れた授業を行えばALになるといったりする風潮はどうだろうか? と感じています。

グループワークをすれば子どもたちの身体は確かに動いてはいる(アクティブ)のですが、教員・講師の目線で考えてしまうと、本質からズレてしまいかねないように思います。

子どもたちが本当に深い学び・深い気づきができているかどうかを常に確認しながら、授業を進める必要性を感じました。この記事が皆さまのご参考になる事を願っています。

「アクティブ・ラーニング(今は「主体的・対話的で深い学び」)」についての補足

今回は、望月先生が行ったAL(今は「主体的・対話的で深い学び」の視点で行った授業改善に対して子どもたちがどのような評価を行ったのか、お話しいただきました。望月先生の実践はこれまでのインタビューで具体的に紹介しています。

リブート第16回 アクティブ・ラーニング(子供たちが学びに向かう姿)の視点からの授業改善 その1
http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2018/03/active-learning01.html

「行っている授業改善」について質問をしました。

  • リフレクション(振り返り)シートのポートフォリオ
  • KPシートバンクシステム

具体例は、上記リンク先をご参照くださいね。

リブート第17回 アクティブ・ラーニング(子供たちが学びに向かう姿)の視点からの授業改善(その2)
http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2018/04/active-learning02.html

「教科の中で行うプログラミング学習」等について質問をしました。「小学校でのプログラミング教育の必修化」に関心がある方に特にオススメです。

  • 理科授業における「プログラミング学習」
  • 「プロジェクション・ワークシート」の取り組み

具体例は、上記リンク先をご参照くださいね。

>>リブート19回「リフレクションシートから見る『主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)』の視点」(5月1日公開予定)につづく

Reboot Produced by Yoichiro Mochizuki

参考記事

先導先生 - DiTT(デジタル教科書教材協議会)
※望月先生の45の取組みが紹介されています。

編集履歴:【前回の概要】の冒頭の一文と関連記事へのリンク(箇条書きの部分)、引用文を囲んでいた「---」を削除。※元記事と内容が重複していたため。

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