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ダメ会議を変える!会議の基本動作②「終了条件を確認せよ」

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会議の基礎について体系的に解説する、「会議の8つの基本動作」シリーズ第3回目

一回目は8つの基本動作の全体像を解説し、前回は「基本動作1. 決まったこと、やるべきことを確認する」について解説した。今回は「基本動作2」である。

  1. 決まったこと、やるべきことを確認する(済)
  2. 会議の終了条件を確認する(いまここ)
  3. 時間配分を確認する
  4. 議論を可視化する
  5. 4つのPを押さえて会議を準備する
  6. 全員から主張を引き出す
  7. 対話を促し合意形成する
  8. 振り返りをする

基本動作②「開始時に、会議の終了条件を確認せよ」

前回は"会議の最初"にやるべき動作の話だったが、今回は"会議の終わり"にやるべきことを確認したい。

よくある会議の始まり方を見てみよう。

「―― さて、定刻になりましたので始めます。...まず、お手元の資料を御覧ください...」
「―― みんな揃ったな?集まってもらったのは、先日発生した問題について意見を聞かせてもらうためだ。A君どう思う?...」

こんな始まり方に身に覚えがないだろうか?
一見普通の始まり方に見えるが、どちらも致命的にマズイ状態だ・・・。

なぜなら、どちらも「どうなったら会議が終わるのか」さっぱりわからないからだ。

「意見を聞かせてもらいたい」と言うが、どうなったら会議終了と言えるのか?

・参考程度に数個意見が出たらそれでいいのか
・大小問わず全部出しきったら終わりなのか
・意見を出して、有力な案を一つ選んだら終わりなのか

どれを目指すかによって、やることも参加者の意識も変わる。
スポーツで言えば勝利条件だ。
 「決まった時間内で相手より一点でも多く取ったら勝ち」
 「先に一定の点数を取ったら勝ち」
色んな勝利条件があるが、それぞれで戦い方も異なるだろう。

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会議がどうなったら終わるのかわからないまま議論を続けるのは、

どうなったら勝てるのかわからないまま、ボールを蹴っているのと同じ状態なのだ。こう書くといかに致命的な状況かわかるだろう。

では会議における勝利条件はどうやったら明らかにできるのだろうか?

"会議のゴール ≒ 終了条件"を確認する

やるべきことは極めてシンプル。会議の開始時に"会議のゴール ≒ 終了条件"を確認する。これだけでいい。
よく会議の教科書には、「目的を明らかにせよ」と書いてあるけど、これはおすすめしない。「共有することが目的だ」「議論することが目的だ」と、「すること」を目的に挙げる人がいるが、これでは全く意味が無い。目的というざっくりした言葉に踊らされて「すること」を目的に上げてしまう。
スポーツで言えば
 「ボールを蹴ること」
 「ボールを相手のコートに入れること」
という状態だ。これが目的です、と言われるとめちゃくちゃ違和感がある。

だからゴールは「状態」で考える必要がある。どうなったら会議が終われるのか?を考えるのだ。どうなったら勝利できるのか考えるのだ。

そもそも、会議は何らかの状態変化を起こすためにやっているはずだ。散々会議をやったけど、やる前とやった後では何も変わらなかったね。なんて会議はありえないだろう。会議することで、どういう状態に変化できればいいのか?どういう状態を作り出せばいいのかを考える必要がある。そのため「終了状態」を考えると、的確なゴールを設定しやすくなる。



具体的な例で終了条件を考えてみる

少し詳しく例を見てみよう

あなたは、上司から業務における課題と原因を調べるように指示を受けた。部下を集めて、まず課題について議論しようと思う。

この状況で、会議のゴール≒終了条件をどう考えればいいのだろうか?

~~~
ダメな例
×「課題を議論する」
これは手段に過ぎない。井戸端会議じゃないのだから、議論することは目的ではない。状態で考えられていないのでNG。

イマイチな例
△「課題が出た状態」
これは状態で表現されているが、具体性がない。どうやって「課題が出た」と判断すればいいのか分からないのでイマイチ。

良い例
◯1 「大小問わず参加者が感じている課題が、出きった状態」
◯2 「部をあげて解決すべきだと思う課題が、出きった状態」
◯3 「課題を出しきり、重要度の高い3つの課題に絞りこんだ状態」

どれも状態で考えているし、終了条件に達したか確認し易いのでgoodだ。参加者に「部を挙げて解決すべきだと思う課題はだいたい出ていますか?」と確認すればいいのだから。そして、終了条件の設定の仕方によって参加者の意識も、質問の観点も、発言の粒度も変わるのがわかるだろうか。

1と2では、発言する課題の粒度が全く変わってくる。論点も変わる。1なら「どうやって漏れ無く細かい課題まで拾い出すか?」がカギになるだろうし、2なら、「部として取り組むべきかどうかを、どう判断するか」が議論のポイントになるだろう。

終了条件が設定されることで、参加者は自然と終了条件に合致する状態を作りだそう!と思うようになり、ベクトルが揃う。逆に終了条件が不明確だと何をどのくらい議論すればいいのかわからないから、好き勝手に話し始める。だから、議論が発散するのだ。ここが上手く設定できればそれだけで、スムーズな会議が作れるだろう。



確認したらこう使え

さらに、終了条件を確認したら、議論が脱線していないか、終了条件に照らし合わせて考えると効果的だ。

会議に出ていて、「この議論、今するべきなのかな?」「話が横に逸れている気がするけど、この話続けたほうがいいのかな?」と感じることはないだろうか?いわゆる脱線である。あきらかな脱線なら議論を元に戻せばいいのだが、多くは脱線かどうかの判断がむずかしい。下手に「これ重要な話ですか?」なんて口出すと、「バカヤロウ!めちゃ重要だぞ」なんて怒られたりして。

そんな時に、終了条件があれば判断が楽になる。
「この議論は、終了条件を満たすために必要なんだろうか?」と考えればいい。終了条件の達成に貢献しない議論は脱線である。どんなに重要な話であってもどこか他所でやってもらったほうがいい。


会議のゴールを明らかにする。一見当たり前のように聞こえるが、実は奥が深い。

上手に終了条件を設定できると、全員のベクトルがぐっと揃う。そうなると会議のスピードは軽く3倍になるだろう。下手な図解や付箋に挑戦するより、ずっと確実で効果がある。

次回は「基本動作3」について解説する。


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