男性社員1年育休をとる10(完):経営者にとってのメリット・対応すべきことのまとめ
社員30人弱の会社で1年4カ月にわたって育休を取った翻訳事業部の男性社員Aさんを通して、私たちアークコミュニケーションズが学び、得たことはなんだったのかを9回にわたって振り返った。
友人に「なぜ4年も前のことを今さら書くの?」と聞かれたのだが、育休後4年たった現在のAさんの状況を知っていただいた上で育休のことを書いたほうが、これから取得しようとする男性陣も、受け入れる会社にも参考になると思ったからだ。
また私たちも、少し客観的に振り返って、どうすればさらによくなるのかを振り返ることが出来ると思った。
「育休を取ることに男性と女性に違いがあるのですか?」という質問もいただいたのだが、概ね変わりはないと思う。
しいていえば、育休をとる男性社員の数が少ないので周囲がびっくりすることと(事業部長は、最後までAさんが育休を取ると言っているのは冗談だと思っていた)、復帰後に子供を産むことによる体調不良のリスクがないことだろう。(数年に渡って体調不良が続いた身としては羨ましい・・・)
数多くの育休の情報がある中、小さな組織を率いる経営者側の視点で書いた人は少ないはず。
思いもかけずに10エントリーになってしまった「男性社員1年育休をとる」のまとめも、その観点から。
<育休社員を応援するメリット>
○小さな組織において、一人のスタッフがもたらすインパクトは大きい。育休はコスト増なくして体制が変えられ、新しい風が入った。
○仕事の棚卸が出来たこと。会社はスタッフが何をしているのか可視化出来たし、俗人的なことを排除し、業務の効率化にもつながった。本人にとってもプロセスの整理・ドキュメント化を行うチャンス。
○体制が変わることで今までAさんの陰に隠れていてその輝きに気がつかれていなかったスタッフが脚光を浴びるようになった。
○長い目でみたら、会社として教育費もかけず、その間給与も払わずして、Aさんがバージョンアップした
○景気がよくなり、これからますます採用難である。優秀な(これから優秀になるかもしれない)社員をプライベートな理由で手放すリスクが減る
<経営者が対応しておくとよいこと>
○労務の知識を増やすこと
社会保険が育休中は免除されたり、雇用保険から育児休業給付金が出るなど、国の支援がある。また法令違反を犯さないためにも、育休に関する労務知識を身につける必要あり
○育休を見守るスタッフの不安を取り除くこと
育休取得者が担当している仕事をどのように対応するのか、関係者と認識をあわせることが大事だ。長期なら代替要員は必須だし、短期ならその間その仕事はあきらめるのか、誰かがカバーするのかなど。
新入社員に行う入社オリエンテーションやフォローの3割くらいはやってよいと思う。復帰後のキャッチアップの速さが違ってくるはず。
私にとって今回はたまたま「産まれたばかりの子供の親として働くこと」がテーマだっただけで、今後は「介護が必要な子どもとしてして働くこと」だったり、「異国の地でも自分の能力を最大限に発揮すること」だったり、「トップアスリートとして働くこと」だったり、チームに多様性をもたらせればもたらすほど、解決すべき課題はたくさんある。