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男性社員1年育休を取る3:24時間子供といたら精神的にまいってしまわない?

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アークコミュニケーションズの翻訳事業部の男性社員Aさんが育休をとるらしいと社内に情報が流れだしたとき、ワーママたちは心配した。

前職で育休を4カ月とって復帰した女性マネージャーは、「育休を取ることには反対しないけど、2~3か月で十分だよ。長すぎない?メンタルにやられない?」

別の女性社員は、「私はずっと専業主婦で子育てしてきたけど・・・・24時間子供とだけ向き合うのはしんどいですよ」

私も、「最初は働くために子供を保育園に預けていたけど、今や子供を保育園に預けるために働いているようなもんだものね~。保育園でプロに育ててもらう時間があったほうが安心。」などと発言した。

Aさんは笑いながら言った。「どうして女性陣の皆さんは、ご自分と僕が一緒だと思うんですか!僕は大丈夫ですよ!せっかく男の僕が育児に向き合おうと思っているのにそんな水をさすようなことを言わないでくださいよぉ」

全くもってその通りである。
Aさんの育休取得に、女性陣は決して反対していたわけではない。むしろ賞賛していた。
だが、やはり無意識に「女性でも大変な子育てを男性のあなたがやるのは大変よ」と思っていたということだろう。

男性学(男性が男性だから抱えてしまう問題を扱う学問)を研究している武蔵大学社会学部助教の田中俊之さんのコメントが当時の私たちの状況を言い当てている。

男が変わらなければワーママの問題は解決しない(日経DUAL)より抜粋

結婚や出産を機に仕事を辞めて、子育てが一段落してからまた仕事を始める人が少なくないため、女性の労働力率はM字型のカーブを描きます。有名な話なので聞いたことがあると思います。
ところで、男性の労働力率がどのような形になっているのかをご存じでしょうか? 男性の労働力率は台形です。学校を卒業後に働き始め、定年退職の年齢に達するまでほぼ水平な直線を描いています。男性学の視点からすれば、こうした男性の働き方が問題として認識されていないことが問題です。

先日、「それで育休中に本当にメンタルにやられなかったの?」と聞いたら

「いや~、やっぱりつらい時ありましたよ。言葉を話せない子供を相手に、あぁ、他の皆は今頃働いているんだなぁ、なんて思ったら焦りまくりでした」

「イクメンという言葉は存在してはいましたが、図書館行ったって男は僕だけですよ。お母さんたちの視線もつらかった」(これも田中さんが取りあげている:平日にぶらぶらする男性は「怪しい」か


「まぁ、今、子供をある程度放任できるのは、あの時ずっと向き合っていたって自信があるからですけどね」

当たり前ながら子供と向き合って得られることは大きい。しかし、勤め先に行かないことで、失ったかもしれないことを考え出すと、焦りは大きくなってしまう。

5年たってしまえば、な~んだ、あの時休んだ1年は大したことなかったじゃない、と思えるのだが、育休中は、そう思おうとしているだけで、不安だらけだったそうだ。

私(会社サイド)はと言えば、Aさんのことだから大丈夫、と思ってはいたもののやはり心配していた。心配したからと言って何かサポート出来ることはほとんどない。そういう中、唯一出来ると思ったことは万が一の時には、育休を切り上げることだ。

Aさんはほぼ毎日のようにブログを書いていたので、Aさんに変調があれば絶対ブログに現れると思った。上司としてプライバシーにはあまり踏み込まない方がよいと思っていたので、私自身はブログを読まず、スタッフには、「Aさんが急にブログを書かなくなったり、何か気になること書き出したら教えて」と言った。
そして、唯一上がってきた報告は、「保育園入るの・・・・難しそうですよ。これは・・・復帰伸びますね」だった。(前エントリーで書いたように育休は切り上げるどころか16か月まで伸びることになるのだった

後日、Aさんには、「当然僕のブログを読んでいると思ってました。読んで構いませんよ」と言われた。だから彼の育休明けに安心して読んだりしていた(笑)

さて、あの時育休を取ったのが女性社員だったらここまで心配しただろうか?
1年にわたって育休を取った人が身近にいなかったから、1年という長さが気になっただけかもしれない。もし、私のように仕事がとっても好きな女性が1年育休を取ると言ったら、大丈夫かと、同じように心配しただろう。だが、いかにも子育てが好きそうに見える女性社員に対しては、正直心配しなかっただろう。
となると、男性社員だからとひとくくりに考え心配したのは、ジェンダーバイアスか。
いやいや、そもそも「いかにも子育てが好きそうな」は、ジェンダーバイアスではないかもしれないが、単なる偏見で、こちらのほうが問題だ。誰が子供と向き合う時間が長いと幸せで、誰が長いと精神状態が悪くなるのか、なんて誰もわかりやしないのだ。

5年たった今、男女を問わずスタッフに育休をとると言われても、昔のように心配しないだろう。一番の理由は、私自身の子育ての経験値が5年分アップしており、子育てに余裕が出来たからだろう。
あの時、Aさんをあんなに心配したのは、ママ歴1年で、やはり、「自分だったら耐えられないかもしれない」という私の不安から来ていたような気がするのだ。

ということで、男性社員から育休取ると聞いて不安に思った7つのうちの第二関門である「24時間子供といたら精神的にまいってしまわない?」は、会社として何か出来ることはなく、通り過ぎてしまった。受験生の母の気持ちのようなものだった。

つづく

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