オルタナティブ・ブログ > マリコ駆ける! >

翻訳・WEB・キャリアを極める?楽しく正しく新しい会社経営&オリンピックへの道?

男性社員1年育休をとる6:シナリオ通りいかない会社経営

»

アークコミュニケーションズの翻訳プロジェクトマネージャーAさんの2009年3月時点で描いた育休取得シナリオ~育休を2010年1月から10か月とり、後任は正社員で雇って自分は翻訳営業となること~は素晴らしいものだった。

そのシナリオ通りに進めば万々歳だったのだが、そうならなかったからこそ、後日談としてブログを書いているのだ。計画通り行ったことよりもそうでないことを伝えた方が経営者の皆さまには参考になるかと思いまして。

Aさんが育休をとる直前の決算期(2009年9月)、アークコミュニケーションズ設立以来、初めての減収減益だった。翻訳事業部は2%程の減収だったが、他の事業部をテコ入れしたかったこともあり、翻訳事業部に対して何か対策をとる優先順位は低かった。
Aさんがこれからいなくなるのに、何かを大きく変えるリスクを負いたくなかったのもある。リーマンショックの一時的な影響と思いたかったし、いつものように日本の年度末である3月に売上が大きくあがることも期待した。
つまり、「様子見」したのである。

Aさんが2010年1月から育休をとってから、状況はさらに悪くなっていく。3月になっても売上は大きくあがらなかった。前年を再び下回る減収減益がぷんぷん匂ってきたのが、2010年の4月頃。
困ったことに一番不調だったのが、Aさんが所属する翻訳事業部だった。

この頃Aさんはメディアに取材されたり、育休について講演したり、アークコミュニケーションズのPR活動を育休のさなかにしてくれていたわけだが、私はもんもんとしていた。

当時私が感じていたことを要約すると
「リーマンショックで海外からの日本への投資が減り、今まで外資系企業からいただいていた和訳の仕事が減った。反面、日本企業の海外進出熱が高まりだし、英訳の需要は増えた。従来の顧客層が外資系企業ベースなので、新規営業活動を行わないと新しい英訳需要を取り込めない。しかし、営業のAさんは育休中だ」

「新規顧客開拓をするための営業がいる」と心底思った。(Aさんに前年の3月に営業職を提案された時は、正直そこまで思っていなかった) 
事業部長とも何度も相談したが、今から新しい営業を雇うリスクより、半年後に復帰するAさんに期待して待つのが現実的と判断した。当時の心境は、「Aさんが育休を早く切り上げて営業してくれないかなぁ」だったのだとは思う。

ここから半年は守りの経営である。経営者の性格にもよるが、新しい手を打たずにじっと守るのはつらいものだ。
結局、翻訳事業部はAさん復帰直前の9月期に前年比22%ダウンにもなってしまった。
経営者としてアマアマだ。

さぁ、2010年10月から始まる新年度はAさんで巻きなおしを図ろう!と思ったら・・・
男性社員1年育休をとる2で書いたよう、Aさんは保育園に子供が入れなかったということで、いつ復帰するのか自体が不透明になってしまった。そこから3か月は「今月も保育園入れませんでした」報告を受けて、毎月毎月、営業活動開始が伸びていくのであった。

今振り返っても、経営者としての判断が先送り先送りで、過去の私にカツを入れたい。
Aさんのせいとは全く思っていない。「Aさん」というもっともらしい言い訳が私の中で容易に形成され、体制を変えることに躊躇してしまったのだ。

ということで、今回の経営者の方への教訓は、「経営判断において育休社員がいることを言い訳にしてはいけない」ということくらいでしょうか?

さて、それでどうしたのかは次回で。

つづく

<関連エントリー>

男性社員1年育休を取る:第一声を聞いたとき経営者として感じた不安は7つ

男性社員1年育休を取る2:本人も会社も経済的に大丈夫なの?

男性社員1年育休を取る3:24時間子供といたら精神的にまいってしまわない?

男性社員1年育休をとる4:育休中の後任はどうするのか?

男性社員1年育休をとる5:育休中の後任はどうするのか?その2




Comment(0)