男性社員1年育休をとる5:育休中の後任はどうするのか?その2
翻訳プロジェクトマネージャーである男性社員Aさんが長期に育休をとるにあたって、後任として有期の契約社員を採用するより派遣社員採用のほうが現実的だろうなぁなどと考えていたら・・・
私の想像を超えた思いもかけない提案がAさんから来たのだった。
「僕の後任を正社員で雇ってください。僕が教育します」
「えっ??うち増員出来ないよ。そうしたらあなたのポジションはなくなるのに、復帰後どうするの?」
「営業になります。営業になって自分の食いぶち分を増やしますよ」
今思っても、いや~ちょっとAさん格好良すぎだ。
こんな格好良い意思表示、聞いたことがない。
会社に迷惑を出来るだけかけないように、自分で退路を断ったのである。
あまりに格好良すぎて朝日新聞にまで取り上げられた。
あの提案を私の立場で出来たかというと・・・正直出来なかったと思う。
育休明けのリハビリが必要な期間に、今まで経験のない営業職をさせる。それも今までアークコミュニケーションズになかったポジションでだ。(当時弊社には営業専門職がいなかった。皆、兼務で、反響営業活動のみをしていたのだ)
復帰明けに異なる職種につかせるというのはあることだろうけど、うまくいかなかった際には、一歩間違えればマタニティハラスメントと捉えられかねない。(男性にこの言葉があてはまるのかは不明だが)
Aさんには「あなたに出来るだけ長く教育してもらえるように、出来るだけ早くいい人雇おうよ!今は売上が下がっているけど、それくらいの出費は覚悟するし、何よりも、将来この人雇ってよかったぁ~って思える人をお金と時間をかけて探そう」と言った。
そして・・・Aさんが募集要綱書いて、Aさんが面接して、そして、いい人を雇った。6月のことだ。当初の予定とは異なり、業界未経験者の女性Bさんを採用したが、今や大黒柱だ。
有期採用であれば業界未経験者のBさんを絶対採用しなかったと思うので、とてもよい巡りあわせだった。
そしてAさんには、育休取得前から営業職についてもらった。Bさんが予想通り順調に立ち上がり、Aさんの手が離れたのだ。売上が停滞していたので、翻訳プロジェクトマネージャーのキャパが余っていたという理由もあったが、少しでも早くに営業職についてもらったほうが、育休明けに少しでもスムーズに仕事に復帰してもらえるはずだ。
他の社員にとっては、Aさんが制作部隊からいなくなる予行練習にもなった。
Aさんは、営業として何をすればよいのか、なんとなく感じをつかめたので育休前に営業職を経験してよかったと言っていた。
しかし、私は具体的にAさんに何をしてもらえばよいのか、つまり、どうしたら売上という成果につながるのか、正直すっきりしなかった。でも、それは育休明けに一緒に考えればいいや、と問題を先送りにした。
何はともあれ、Aさんの提案のお陰で、私が感じていた7つの不安のうち、以下の3つを一気に解決した。
3. 彼の代替要員はどうしよう?契約社員を雇う?派遣サービスを使う?
4. 頭数合わせたってパフォーマンスは下がるぞ。どうするんだ?
5. 他の社員はどう思うんだろう?負荷がかかるのは間違いない。どう受け入れてもらおうか。
5については私も他の社員に対して丁寧に説明したつもりだが、結局、後任に出来るだけいい人を探す、そして引き継ぎ時間を長くする、この二つで後任を即戦力化することに尽きる。
もちろん、Aさんの素晴らしい心遣いと覚悟は、他のスタッフが快く育休を受け入れるのに一役かったが。
12月末の納会の日が、育休前のAさんの最後の出社日だった。Bさん曰く、何の不安もなくAさんの育休を見送ったそうだ。素晴らしい~~!
では、Aさんの描いた素晴らしいシナリオ通りにことが進むかというと・・・
そう簡単に世の中はいかないのですよ(笑)
つづく
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