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4月から始まる新年度のキックオフを計画している会社で、中長期的な目標としてIPOが適切かどうかという議論があった。投資を受けている手前、IPOは無視できないという気づかいもあるのだろうが、黒字にもなっていない企業が目標としてIPOを掲げるのは、最近の市場の状況を考えると、かなり滑稽な話である。

ベンチャー企業が成長していく際のスピードは、想像をはるかに超えるものがあり、期待していない訳ではない。しかし現状、IPO準備の負荷は非常に重くなっており、Jsoxも含めると、企業の成長力を一気に殺して仕舞いかねないものがある。実際にIPOを果たした企業が、公開後の株価の下落に苦しみ、成長が止まってしまう例は数多い。

残念なことではあるが、ベンチャービジネスの成長と公開後の情報開示に備えたIPO準備とは相反する部分も多い。ベンチャー企業は、事業計画の説明やアライアンスの交渉を行う際、アイデアの新奇性を保つため、NDA(機密保持契約)を結ぶ。文字面から見ても分かる通り、公開企業に求められるディスクロージャー(情報開示)とは、正反対の趣旨を持つものである。

もちろん、公開後のディスクロージャーに関してはルールがあり、何でもかんでも開示しろ、ということではなく、新規ビジネスを粛々と進めることは十分可能である。ただ、そういうことに不慣れな会社がIPO準備を始めた場合、専門家と称する証券会社やIPOコンサルの指導を誤解してしまい、ビジネスで大事にすべきことを見誤ってしまうことが多いのは、よく起こっていることである。

IPOを目標としてしまうと、IPO準備の錦の御旗の下に、ビジネスの成長を阻んでしまう施策が次々と打ち出され、業績自体が低迷することもよく起こる。そもそも、赤字の会社が黒字になったり、スタートアップの会社が売上1億円を超えるまでは、それ相当の時間が必要である。順調に行っても3年くらいは必要だ。そうなる前に、IPOを目標に掲げてしまうと、赤字が増えて、売上は伸びない状態に陥る。

IPOの門が狭き門になっている現状では、年間1億円以上の利益を継続的に挙げられる体制を築くことを優先すべきであり、軽々にIPOを会社の目標とすべきではないと考えている。重要なのは、継続的に利益を挙げていく体制なのであって、見ず知らずの株主に説明できる体制ではないことを、赤字会社やスタートアップ企業は再認識する必要があるのではなかろうか。

tsuji2005

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辻 俊彦

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ベンチャーキャピタリスト。専門分野は、メディア系、ITサービス系。

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