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ビジネスはコミュニケーション、基本的に物々交換の世界である。貨幣経済の時代になって、物の価値はお金に置き換えられているものの、ビジネスの実体が変わっている訳ではない。ビジネスが成り立っている以上、価格に関して安いも高いもない。お互いが交換価値に合意して始めて、ビジネスが成立する。

実際に等価性を評価される物の価値は、あくまでも主観的な価値である。貨幣経済になり市場が成立すると、あたかも客観的価値が存在するかのような印象を受けるが、あくまでも相対的なものであり、ビジネス成立の根拠を自由意思に基づく契約行為だとすると、物の価値は極めて主観的な価値の等価交換ということになる。

そういう意味で、わらしべ長者の物語は、ビジネスの本質を突いていると言える。客観的には等価性を感じない物を次々と交換していくことで長者になっていく話である。わらが、ミカンになり、布になり、馬になり、家になった。彼自身、交渉上手だった訳ではなく、主観的価値では合意を積み重ねながら、客観的には価値の高い財産を手に入れ、長者と呼ばれるようになった。一物一価の法則などは市場の公平性を擬装するフィクションである。

同じような表現で、トレードオフという言葉がある。ビジネス戦略でもよく使われ、メリット・デメリットと関連して語られる。MBA方式に則れば、メリット・デメリットの価値は一物一価で計測可能なものとなる。基本的に、その場合の尺度はお金である。お金を失っても挑戦すべきことがある、みたいな価値は認めがたい論理である。

ベンチャー企業が新しいチャレンジをしようとする際に、企業側は成功した場合のバラ色の物語だけを語るため、それを聞いた世間知らずのキャピタリストは、失敗した場合のデメリットを強硬に主張して、冷や水を浴びせる。本当にそれでいいのだろうか???

ベンチャー企業の取り組みは、社会に新しい価値を提供しようとする取り組みである。過去の成功モデルがない分、失敗する確率が高く、デメリットは子供でも思いつく明白なものである。ただ、成功して、より善い社会になる事業であれば、リスクマネーを賭す価値がある。そこには、起業家の主観であるビジョンがあり、その価値は、お金では置き換えられないプライスレスなものである。

起業家には、大いなる志を持ち、社会に新しい価値を提供するべく果敢な挑戦を続けていって欲しい。そういう挑戦のために費消されるお金は、現状の尺度では無駄使いに見えるかも知れないが、社会に大きな富を生み出すことは、「わらしべ」から始まっていることが多いのである。
2008.2.23

tsuji2005

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辻 俊彦

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ベンチャーキャピタリスト。専門分野は、メディア系、ITサービス系。

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