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日本経済新聞電子版についてはオルタナブロガーの間でも関心が高く、岩永さん妹尾さんが関連エントリを書いています。いまさら電子版開始のニュースだけではすでに出遅れた感がありますので、オルタナティブな切り口で書いてみます。

はじめに価格を確認しておきます。以下のプランがあります。

日経Wプラン

朝夕刊セット版地域

5,383円

日経新聞購読料(4,383円)+1,000円

全日版地域

4,568円

日経新聞購読料(3,568円)+1,000円

電子版月ぎめプラン

4,000円

電子版海外月ぎめプラン

4,000円

一言で言えば、紙の新聞と併読なら追加で1,000円、電子版だけなら4,000円になります。支払方法はクレジットカード決済です。

この価格設定について、「印刷や宅配のコストが不要になる電子版なのに安くない」とか「良質なコンテンツはタダではない」と言った議論があります。ITメディアの記事によると「本紙とセットなら格安という価格設定の背景には、最大の収益源である本紙の読者をWeb版に流出させたくないという意図がある」のだそうです。

果たしてこの価格は紙の読者を囲い込むことだけが目的でしょうか。私はちょっと斜めな見方をしています。

先日の日曜の新聞に載っていた「日本経済新聞電子版を知っていただくために」を読みました。以下の記述がありました。

日経Wプランをお申し込む際、販売店へのご連絡はいりません。パソコンの登録画面で申し込まれたお客様の住所などをもとに、ご契約中あるいは新規ご契約の販売店を日経側で特定し、日経Wプランの読者であることを販売店に連絡します。

日経Wプランをお申し込み後、販売店が現在の新聞のクレジットカード決済を解消します。……翌月分から新聞購読料と合わせて日経とのクレジット決済に移行し販売店は集金しません。ただし日本経済新聞以外の購読料は販売店にお支払いください。

つまり、電子版を申し込むと、日経新聞と直接のクレジットカード決済になって、販売店による集金や自動引き落とし・販売店のクレジットカード決済はなくなります。

これは購読者の情報とお金の流れが、今までの「購読者→販売店→新聞社」から、「購読者→新聞社→販売店」に変わることを意味します。「新聞の直販」です。極端な話、販売店は新聞社から言われた先に新聞を届けるだけの機能になってしまいます。今までにない大きな変化ではないでしょうか。

少子化と若者の新聞離れ(?)で、これから新聞の発行部数が増えるとは思えません。現在の購読者が高齢化して世代交代していくことや、電子デバイスや通信環境がさらに進歩することで、紙の新聞はいっそう部数が減ることが想定されます。私のきいた話では、日本経済新聞は新聞の電子化に向けてかなり本気のようです。

仮に、長期的に購読者のほとんどが電子版のみに移行してしまうとしたらどうでしょうか。販売店は大打撃ですが、日経新聞社としては紙の新聞で4,383円だった売上が、電子版のみで4,000円になるだけです。差額は、新聞を印刷して販売店に届けるコストや販売店に払うマージンがなくなることで、十分元が取れるはずです。これは電子版単体の価格が紙と変わらないレベルに設定されているからできることです

「紙に電子版を追加したら5,383円です」と考えるのではなく、「紙を止めて電子版だけにしてくれれば383円値引き(4,383-4,000)しますよ」と考えると、意味が変わってきます。

短期的には「最大の収益源である本紙の読者をWeb版に流出させたくない」ことは確かですが、実は「読者が電子版に移行してもかまわない」という戦略が、この価格に込められているのではないかと考えています。

以上は私の斜めな見方です。日本経済新聞がどう考えているかはわかりません。答えが出るのは何年後でしょうか。

テクネコ

経済産業省がインターネットのサイトを通じてIT政策に関する国民の意見を広く募集した「経済産業省アイディアボックス」が、予定通り3月15日をもって無事終了しました。

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最終的に登録ユーザ数3,799人、投稿されたアイディア数936件、アイディアに対するコメント5,974件と、昨年11月に行われた「電子経済産業省アイディアボックス」を上回りました。

量的に成功した一方で、経済産業省のIT政策と関係のない他省庁や地方自治体管轄のアイディアが投稿されたり、一部で荒らしに近い発言が出たりと、利用者側のスキルやモラルが問われる状況が見られました。システムの使い勝手についての意見や要望も上がっています。

また、参加者の性別、年齢、職業に偏りがあり、これだけで国民の意見をすべてカバーするわけではありません。

改善すべき点はまだまだありますが、システム的にも人的にも大きなトラブルなく終了したことは、大成功だったと考えます。今回のアイディアボックスのような取り組みは、いわゆる「お役所」的な動きの対極にあるものです。ここで失敗すると、前例を重視するお役所で二度と日の目を見なくなってしまうリスクがありました。

寄せられた意見の中には、アイディアボックスの常設や他省庁・政党での採用を求める声があります。アイディアボックスのような取り組みが、全省庁や全国的なものになることで、よりよい政策が出てくる可能性があります。

今回のアイディアボックス上の議論は、産業構造審議会情報経済分科会における検討に活用されることになっています。ネット上で議論するだけでなく、今後の政策がどうなるのか、注意深く見守っていきたいところです。

日本のオープンガバメントはこれからです。

関連リンク

テクネコ

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加藤和幸

加藤和幸

株式会社テクネコ 代表取締役。
ITを売る側と買う側の両方の経験を活かして、CRMとCMSのコンサルティングを中心に、お客様の”困った”を解決します。

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