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高速道路の無料化の社会実験が継続していますが、その是非はともあれ、社会実験という考え方は非常に良いと思います。

政治の判断の多くは、いろいろな調査を積み重ねた上で総合的に考えていると思いますが、実際は「やってみないとわからない」ものがあります。実施後の効果の精度を上げるために、より詳しい調査なんかをやっていると、実施は先延ばしになり、今のような速いスピードで変化する世界についていけません。また実施後に実施前の調査と違う結果が出ても、調査結果の問題に責任転嫁するだけになりかねません。

社会実験は、「結果はどうなるか分からないけど、とりあえずやってみて効果や問題点を見る」ということを合意の上で実施することなので、実施後の結果を客観的に判断することができれば、結果によっては本実施を見送ったり、やり方を変えるということが、比較的簡単にできます。現在の高速道路無料化の社会実験も、やっぱり影響が大きいので「やめた」という結果になることもあり得ます。もし社会実験というコンセンサスがないと、実施を始めた後で、撤回することは容易ではないでしょう。また、社会実験という実施方法は、実験結果を見ましょうということなので、実施後の調査も確実に行われて、その結果が公表されるということも、大きな意味を持ちます。

社会実験は、あくまで実験ですので、実施範囲や実施期間が限定されます。しかし、この限定によるメリットがあります。限定することで、実験の比較対象を意識的に作ることができるのです。地方の高速道路の無料化の実験では、似通った条件の2つの路線を選んで、片方を無料化して、もう一方を有料のままとすると、それぞれの比較ができます。期間の限定の場合は、実施機関を短期間にすることで、直前の同等の期間と比較することが可能になります。

では、この社会実験を道路の無料かだけでなく他の分野に応用したらどうかということを考えてみます。経済の問題と同様に大きな問題となっているものの一つに教育の問題があります。そこで、すでに終わってしまいましたが「ゆとり教育」について考えてみます。もし「ゆとり教育」を社会実験として実施したらどうだったかということです。

正確には違うかもしれませんが、私が認識している現状は「ゆとり教育は失敗だったので、ゆとり教育はやめて、元に戻した」ということです。確かに「ゆとり教育」で基礎学力が低下したという事実はあります。一方、ゆとり教育で得ようとしていたものが得られたかどうかはよくわかっていません。授業時間を減らすのなら基礎学力が低下するのは明らかですので、基礎学力が低下するのは最初からわかっていたことです。問題は、想定以上に学力が低下してしまったことで失敗と認識されているのか、基礎学力と引きかえに得るはずのものが得られなかったから失敗と認識されているのかが明確でないことです。

もし、ゆとり教育が社会実験として実施されていたらどうでしょうか? 日本全国一律に実施するのではなく、限られた地域で実施されていたら、現在のように日本全国で一律に学力が低下するということはなかったはずです。また、期間を限定して実施して、社会実験としての結果を詳細に調査していれば、もっと早い段階で問題が明確になって修正できたかもしれません。さらに重要なことは、社会実験として実施されれば、ゆとり教育を推進する人たちが、途中で問題点を修正しながら、ゆとり教育を成功に持っていけたのではないかということです。

現在の学力低下の問題は、ゆとり教育が原因とされることが多いのですが、それが本当に教育の問題なのか、世代的な問題なのかは、よくわかりません。ゆとり教育の問題なら、元の詰め込み教育に戻せばいいだけですが、世代的な問題ならば、実は元に戻しただけでは問題は解決していないことになります。日本全国で一律に長期間にわたってゆとり教育を実施したために、その検証がすぐにできないのは大きな問題です。今後はもっと社会実験の考え方を取り入れ、教育のような時間がかかる政策は、リスク分散するとともに、検証のメカニズムを最初から組み込んでおく必要があると思いました。

ゆとり教育を例にとって書きましたが、他の政策でも同様です。社会実験と位置づけて、時間をかけるのではなく、さっさと実施してみて、だめなものは撤回していくくらいのスピードで動かした方が良いものがたくさんあります。法人税減税も一部地域だけで限定的にやってみて効果を見るくらいのことをやっても良いのではないかと思います。

Katsushi Takeuchi

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竹内 克志

竹内 克志

電子機器のハードウェアとソフトウェアの融合を模索中。
日本およびアメリカで一貫してソフトウェアの製品開発を担当。ソフトウェアに限らずテクノロジー全般に興味を持つ。

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