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個人的には、コンピュータとソフトウェアは、人間の創造性を高める支援という部分に対する期待が大きい。コンピュータが計算などの単純作業を迅速に行ってくれることは直接的には人間の創造性を高める訳ではないが、単純作業の無駄な時間をなくして、創造性を高めるために時間を有効に使えるという意味では、人間の創造性を高めていると言えるだろう。

ところが、GUI (Graphical User Interface) が浸透した頃から、コンピュータに「美しいアウトプットを作るもの」としての役割が加わった。DTP (Desk Top Publishing) は、それまで雑誌や新聞のようなプロフェッショナルに限定されていた美しい印刷物の制作を、コンピュータとプリンターだけでできるものに変えてしまった。

しかし、美しいアウトプットを作ることを目的として進化したソフトウェアは、必ずしも創造性を高めることに役に立っていないことが多い。たとえば、Microsoft Word は、単純に文章作成を支援するソフトウェアから、様々なフォントや効果を駆使することのできる「美しいアウトプットを作るソフトウェア」に変わってしまった。文字や、図形の一つ一つに様々な属性がついて、さまざまな表現が可能になっているが、それらの機能に邪魔されて、単純に文章を作るという機能は損なわれてしまった。そのため、ソフトウェアエンジニアの中には、文書を作るときにも、"エディタ" と呼ばれるソフトウェアを使う人も多い。下手に Word を使ったりすると、フォントやページ区切りなど、文章を作る段階では無関係な、複雑な機能に惑わされて、文章を作ることに専念できないからだろう。

こうして考えてみると、現在のソフトウェアは、私がソフトウェアに期待してきた、創造性を高めるという役割を超えて進化してしまい、逆に創造性を阻害する状況に陥っているように思える。機能を整理して創造性を高めるためのツールとしての役割に限定することで、新しい世界が見えてくるのではないかと思う。

Katsushi Takeuchi

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竹内 克志

竹内 克志

電子機器のハードウェアとソフトウェアの融合を模索中。
日本およびアメリカで一貫してソフトウェアの製品開発を担当。ソフトウェアに限らずテクノロジー全般に興味を持つ。

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