« 2008年10月21日

2008年10月30日の投稿

2008年10月31日 »

社会の中でリスクに対する注目度が高くなってきたことで、リスクをゼロにしようとする動きが増えてきているように見える。しかし、不確実性が存在する社会や技術の中で、リスクゼロを目指すことは、コストが無限大にかかるということを許容しているのと等しい。「リスクを最低限にせよ」という指示と「リスクをゼロにせよ」という指示は非常に近いものに見えてしまうが、実際はこの2つの指示は根本的に違う指示であることを認識する必要がある。現実社会では「リスクをゼロにせよ」という指示は、精神論でしか意味を持たず、逆にリスクについてきちんと考えることを放棄させる。たとえば上司が部下に向かって「絶対大丈夫だな?」という質問に対して「はい」と答えるのは、精神論としての意味しか持たない。

一時期、どこかの生命保険会社のTVコマーシャルに、「外に出かけると、交通事故にあうかもしれないし、他の危険もたくさんあるので、外に出たくない。」と言っている主人公の家に UFO が落ちて怪我をするというような内容のものがあった。家にいるから絶対に安全と考えている人たちに、「どこでも危険はある(リスクをゼロにはできない)ので、生命保険に入りましょう。」というメッセージを伝えていて、リスクの本質をついていると思っていた。ただ、その生命保険会社が倒産するかもしれないというリスクまで含めて考えると、その保険会社の保険に入るのがリスク管理の方法として適切かどうかは、わからない。結局はリスク管理には一つの答えは存在せず、それぞれの人がリスクについて考え、最適なリスク回避手段を選ぶ必要がある。

官製不況といわれている、建築基準法、金融商品取引法、貸金業法の改正は、どれも消費者のリスクを下げることを目指していて、実施時点では大きな反対はなかったが、リスクを必要以上に下げようとした結果、不要なコスト増を引き起こしてしまった。官が介入すると、ほとんどの場合コストが増加して社会全体に経済的な悪影響を与える。その経済的損失を含めても実施しなければいけない法律の改正かどうかを、総合的に考えているように見えない。たとえば、金融商品取引法の改正で、金融機関から送付されてくる書類は、確実に以前の数倍の量になっている。そんな量の書類が、利用している金融機関の数だけ送られてきても、ほとんどの人は読まずにゴミ箱に投げ入れるだけであろう(私はそうしている)。もし、この施策の効果測定をすると効果が出ていないことが明確になるに違いない。そうすると次なる「消費者保護で消費者のリスクをゼロにするための施策」が行われ、そうこうしているうちに経済はがたがたになってしまうという恐れがある。

消費者保護のための施策をすべて「良いことだ」と無批判で支持するのではなく、施策によっては「それは過保護だ」とか、「その程度のリスクを避けるために払うコストとしては高すぎる」いうような意見が、もっと多く出てきても良いと思う。

Katsushi Takeuchi

« 2008年10月21日

2008年10月30日の投稿

2008年10月31日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

竹内 克志

竹内 克志

電子機器のハードウェアとソフトウェアの融合を模索中。
日本およびアメリカで一貫してソフトウェアの製品開発を担当。ソフトウェアに限らずテクノロジー全般に興味を持つ。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
カレンダー
2013年3月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
takeuchi
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ