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いろいろと周りも年末進行で動き始めてますます忙しくなってきましたが、12月のJASRAC許諾済VOCALOIDサイト(ブログ形式にする予定)のオープンに向けて打ち込み作業を継続しています。やった人はわかると思いますが、MIDIの打ち込み作業はいったんはまり出すとノンストップになってしまいがちなので、1日1時間までと制限をつけてやっています(小学生のゲーム機みたいです(笑))。
MIDI環境なんですが、昔持ってた機材は売ってしまったり、陳腐化してしまったり、置く場所がなかったりするので、オーディオI/FとしてE-MU 1616を買いました。ついでに、PCもQ6600のクアッドコア環境に組み替えました。E-MUの1616にはソフトウェアサンプラーのEmulator X2とかCubase LEとかWavelab Liteとかがバンドルされているので、当面は追加ソフトもハード音源もなしで充分やっていけそうです(Cubase LEだとクアッドコアが活かせないんですけどね)。ということで、わが家における初音ミクの経済効果は相当なものです(笑)。
何でこんな強力な環境(DTMとしてはミッドレンジだと思いますが)が必要かというと、初音ミクをVSTi Realtimeで直接駆動しているからであります。CubaseでVOCALOIDとMIDIトラックの同期をさせるには大きく以下の3つの方法があります。
- Vocaloid EditorからWaveにはき出してCubaseでオーディオトラックにインポート
- Vocaloid EditorとCubaseをRewireで同期
- CubaseからVoloidをVTSインスツルメンツとしてプレイ
1、2だとVocaloid EditorとCubaseを往復しなければいけないので細かい作業が結構めんどうくさいです。3だとすべてCubaseの中で完結できるので、Cubase慣れしてる自分としてはやりやすいです。特にシャッフル系の曲で初音ミクをしっかりグルーブさせようと思うと、音符ごとにタイミングとゲートタイム(Duration)をかなり微調整する必要がありますが、そういう時にも便利です。ただし、かなり重いです(前のPCのNorthwood 3.2Gでは歯が立ちませんでした)。
あと、やってみるとわかりますが、VSTiだと歌詞の流し込みが結構めんどくさいです。MIDIトラックの巻き戻しと歌詞が連動していないので、巻き戻しのたびに歌詞のポインタを設定しなければなりません。ということで、曲の部分部分ごとにVSTiの出力をオーディオトラックに録音して、OKになったら次に進むというやり方を取っています。ある意味、本当にアイドル歌手のレコーディングのような方法です。
あと、VSTiでやると、音符ごとにベンドやポルタメントの細かい設定ができませんが、自分的には、ミクの発声は素(ビブラートもベンドもポルタメントもなし)にして、Cubase側からベンダーで操作した方が自然にできそうな気がしているので特に問題ありません。
とまあ、そういう方針でやっているわけですが、最近、ニコ動でFly Me To The Moonを英語で歌わせてたりするすごい作品があるようですね(Vocaloid Editor使用)。英語の音素がないからダメとか、Vocaloid Editorだと微調整しにくいからダメとか言ってる自分が恥ずかしい気もします。あー、もう少し時間が欲しいよー。
MIAUの津田大介さんが、ダウンロード違法化の問題として以下の点を挙げられています(ソース)。
“ダウンロード違法化”によってもたらされるメリット、つまり著作権侵害対策という目的とその実効性に比べて、“ダウンロード違法化”がもたらす副作用によってもたらされるデメリットの方が大きくて、バランスが良くない
この考えには全面的に賛成します。法改正は常に実効性と副作用を前提で考えるべきです。法律とは理想のあるべき姿を決めるものではありません。あくまでも現実的制約の中での最適解を求めるものでべきです。ある行為が社会秩序的に望ましくないからと言って、その行為を直接的に違法化することが必ずしも最適解に結びつくとは限りません。一般に、制度設計を考える上で、「副作用」は重要なキーワードだと思います。
これは、あたかも、情報システムの設計において、インプリメンテーション(実装)を考えないアーキテクチャが意味がないのと同じだと思います。「実装上はいろいろ問題があっても美しいアーキテクチャを求めるべき」というアーキテクトがいたとしたらかなりトンデモでしょう。
そして、著作権法では、今までに、いろいろな利害関係者の思惑によりきわめて頻繁な改正が行われてきており、既に多くの悪しき副作用が顕在化しています。中山先生の「著作権法」から例を取ると以下のような指摘があります(p237「貸与権の問題点」)。
貸与権は全ての著作物におよぶため、例えばレンタカーのエンジンに組み込まれているプログラム著作物の複製物にも貸与権が及ぶのか、ということが問題となる。
もちろん、自動車メーカーが貸与権侵害でレンタカー会社を訴えるということはないでしょうし、仮に訴えたとしても、裁判所は黙示許諾とかの理由付けで何としてでも侵害にはしないでしょうが、原理的には権利侵害が継続的に行われているという気持ち悪い状況です。
もともとは貸レコードの規制を目的としていた制度設計が、すべての著作物に貸与権という物権的な強力な権利を与えるという形で法制化されてしまったために、おかしなことになってしまった例だと思います。
これに関して急に思い出したのでついでに書いておきますが以前のエントリーで中山先生の以下のような発言を引用しました(太字は栗原による)。
「特許法などは既に非親告罪となっているが、特許権は一部のプロだけが関係するものであるのに対して、著作権は日本国民全体の問題になってきている。語弊 があるかもしれないが、厳密に言えば著作権侵害をしたことがない人はおそらくいないだろう。国民のすべてが何らかの形で侵害に関与しているという状況で、 著作権侵害を非親告罪として良いのかといった点については、これから慎重に議論していきたい」
この引用ですと、「国民のすべてが何らかの形で侵害に関与している」を、「誰もがソフトウェアの違法コピーを行ったり、Winnyを使用したりしている」という意味に取ってしまう人がいるかもしれません。しかし、ここでの中山先生の真意は、著作権法の相次ぐ改正による副作用によって、社会秩序的に何の問題もない行動(たとえば、プログラムを内蔵した自動車をレンタルすること)が結果的に無意識のうちに著作権侵害になっているという状況を言ったものと思います(ご本人に確認したわけではないですが)。
まあ、いずれにせよ、冒頭の1点によってだけでも、ダウンロードの違法化(正確には、著作物の違法複製物を情を知ってダウンロードする行為を私的目的複製からはずす)の法改正には反対するに充分な理由になると思います。
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