栗原潔のテクノロジー時評Ver2:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 栗原潔のテクノロジー時評Ver2

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2007年5月19日 »

前回前々回のエントリーで買ったCDをリップしてからオリジナルのCDを中古屋等に売却し、リップした方を聴き続けるのは、現行の日本の著作権法では違法ではないと書きました。これは解釈論のお話しです。もちろん、みんながこれをやってしまうと権利者の利益が不当に損なわれてしまうのは確かなので、何らかの制度改正は必要であると思います。ということで、ルールをどう変えるべきかという立法論というか制度設計について考えてみることにします。

大前提として言っておくと、「違法ではない」=「どんどんやりましょう」ではありません。露天で売っている怪しげなDVDを買うこと自体は原則違法ではありませんが、ではどんどん買いましょうということかとそうではありません。社会通念上望ましくないのであれば、やるべきではないのは当たり前です。

それから、自分の場合で言うと、コピーを手元に残して中古CD屋にCDを売ったことはありません。聴きたい音源は、仮にほとんどiPod上のリップしたコピーを聴く場合であってもオリジナルCDを手元に残し、聴きたくない音源(含、間違ったCDを買ってしまった場合)はリップせずにCDを売る(ないし、人にあげる)というやり方です。こういうやり方の人は多いと思います。ただし、若年層で新譜のCD(特にレンタル禁止期間のもの)を買ってリップして、すぐに中古屋に転売という人は多いのかもしれません。

あと、中古CDを買う立場として言うと、特にジャズ関係では中古でしか買えない音源も結構多いので、健全な中古CD市場がないと困ってしまいます。

では、考えられる対応策について検討してみます。

1.著作権法改正
プログラムの著作物については、30条の私的複製とは別に47条の2でバックアップを取ることが認められています。そして、オリジナルを譲渡等した時は、バックアップを消すように規定されてます。まあ、当然です。これと同じように、音楽の著作物についても、複製物(CD)のオリジナルを譲渡した後は、私的複製したコピーも消すように規定することが考えられます。

論理的にはすっきりしてるんですが、法律で規定したところで現実に守らせるのは非常に難しいですし、以下の補償金制度と矛盾することになります(違法な行為は行うべきではない行為であり、補償金を取るというのは金さえ払えばやって良い行為ということなので自己矛盾してしまいます)。

2.私的録音補償金制度
録音機器や媒体に補償金を上乗せしておいて、権利者に還元するやり方です。現在でもMDレコーダーとか録音用CD-Rには補償金が上乗せされてます。基本的にどんぶり勘定方式なのでさまざまな問題点がありますが、現状の一時的妥協案としては十分検討に値するかと思っています。

中古CD関連で大きな問題のひとつは、現時点ではiPod等の機器が補償金制度の対象になっていないことです。最近は、ほとんどの人がiPod等にリップしており、CD-Rにコピーする人は少ないでしょうし。これも私見ですが、iPod課金については諸手を挙げて賛成というわけではないですが、検討の余地はあると思っています。ただ、じゃあパソコンのCD-RドライブやHDDはどうするんだみたいな話もあり、いろいろと課題は残ります。

3.CD中古流通の制限
何らかのやり方で中古CDを禁止するやり方です。前々回のエントリーでも書いたように頒布権があるゲームソフトについてですら、市場に大量販売した物の中古流通をコントロールすることはできないとの最高裁判例があるので、これと矛盾しないような制度とするのは非常に難しいでしょう。

さらに、先に書いたように、健全な中古市場の存在は音楽文化の発展に必須だと思いますので、将来的にあらゆる音源がオンラインで入手可能にでもならない限り、CDの中古市場を規制することはすべきではないと思います。

4.中古CD屋からの補償金徴収
貸レコードなんかと同じスキームで代金に補償金を含めておいて、権利者に還元するやり方です。これも3と同様にいったん大量販売した製品の中古流通をコントロールすることになるので、法的な強制力を持たせるのは難しいような気もします。また、ネット・オークションだとか、物々交換サービスの場合はどうするのかというような課題が残ります。

5.CDのコピー・プロテクト
現行の著作権法においても、コピープロテクトを解除しての複製は私的複製の範囲外になります(要するに違法となります)。ということで、CDをコピー・プロテクトできれば法律上は問題クリアーですが、正当なリップもできなくなってしまうので、消費者保護的にはよろしくないでしょう。CCCDが悲惨な状況になったことからも、ちゃんと正規の利用者に迷惑をかけずに複製をコントロールできるまったく新しいコピー・プロテクトのアーキテクチャができない限り、この道は取れないでしょう。

そもそも、現在のCDに関する著作権上の問題の多くは、CDの元々の規格がコピー・プロテクトを前提にしていないところに由来すると思います。これによる被害はWinnyなんかの比ではないでしょうから、検察当局ははCDの規格を作ったソニーとフィリップスを著作権侵害の幇助犯として提訴してはどうでしょうか?(ジョークです、一応)

6.充分安い料金でのダウンロード販売
新品CDの価格と中古屋での買い取り価格の差額をちょっと上回るくらいの料金で新作のアルバムがダウンロードできるのであれば、誰もリップ前提でCD買って中古屋にすぐ売るなんてめんどうなことはしなくなるでしょう。そして、ダウンロード販売ごとに権利者には正当な対価がわたりますので、最も真っ当なやり方と言えます。レコード会社の営業努力次第では実現可能ではないでしょうか?

栗原 潔

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栗原 潔

株式会社テックバイザージェイピー(TVJP) 代表取締役 弁理士
IT、知財、翻訳サービスを中心とした新しいタイプのリサーチ会社を目指しています。

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