栗原潔のテクノロジー時評Ver2:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 栗原潔のテクノロジー時評Ver2

知財、ユビキタス、企業コンピューティング関連ニュースに言いたい放題

« 2005年9月20日

2005年9月21日の投稿

2005年9月22日 »

前の前のエントリーのコメントに書いた「二十四の瞳事件」ですが、コメントに埋もれさせておくのはもったいなので、ここでまた書きます(参考記事)。

ご存知とは思いますが、二十四の瞳とは小豆島を舞台とした壷井栄の有名な小説であり、小豆島の観光事業において重要な位置を占めています。

「二十四の瞳」という商標は奈良県の男性が所有していたのですが、(おそらく更新料不払いにより)取り消しとなったので、小豆島の某化粧品会社がめざとく商標権を取得。これに対して小豆島の(観光関係?の)財団法人が「一企業による私有化は問題」と無効審判を請求。結局、和解により化粧品会社が「二十四の瞳」商標を財団法人に無償で譲渡することで解決したというお話です。

このケースでは化粧品会社が「大人の対応」で和解したからよいですが、和解に応じなければ、商標登録は無効にされず、ずっとこの化粧品会社の専有物になってた可能性はあります(今までは、小豆島に縁もゆかりもない奈良県の人ですら商標権持ててたわけですから)。

また、たとえば、地元商工会だとか壷井栄の遺族とかの別の関係者が「うちが管理すべきだ」と出てきてたとしたら、ますます話はややこしくなっていたでしょう。

商標権と言う独占権を与える制度とコミュニティの共有財産という概念が如何にうまく整合してないかを表す事例だと思います。

ところで、のまネコ事件は、今のところ商標権は関係ありませんAVEXが商標登録出願している可能性はありますが、現段階ではわかりません「のまネコ」(文字のみ)「米酒」(ネコが酒瓶持った画像付)が出願されていることが22日深夜に判明)。しかし、2ちゃんが商売になることが世の中に知れわたったことで、いろんな人たちが2ちゃんネタを商標登録出願してくる可能性は増えたと思います(「阪神優勝」の商標権であんなにもめたのに、未だに、「ソフトバンク優勝」とかを出願する人がいることからもわかります)。

誰かがコミュニティの共有財産と思えるものを抜け駆け的に出願してしまった場合には、特許庁に情報提供して拒絶してもらうとか、無効審判で無効にする手もありますが、確実に成功するとは限りません。この化粧品会社やタカラのように「大人の対応」をしてくれればよいですが、そうとは限りません。

なので、一企業に私有化されたくない商標はコミュニティを代表する誰かが、防衛的に先に出願しておくしかないということになります。

2ちゃん関係者はあんまりこういうのは興味なさそうですが、2ちゃんはいまや商業的にも大きな力を持っています。大いなる力には責任が伴うと思うわけです。

#ところで、仮に依頼があっても私は2ちゃん関係の仕事は受けませんよ。売名行為とか言われて叩かれるのはやだから。

追加情報:
第3者(?)がモナーのAAを使った図形商標「オマエモナー」を出願して、拒絶査定になってたんですね。寡聞にして、ギコ猫事件しか知りませんでした。まあ、こういうそのものずばりのケースは良いとして、微妙に違うキャラが登録されてしまうのを防ぐため、それから他人の不当な使用を防ぐためにも、やはり防衛出願はしておいた方が良いと思います。

栗原 潔

« 2005年9月20日

2005年9月21日の投稿

2005年9月22日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP


プロフィール

栗原 潔

栗原 潔

株式会社テックバイザージェイピー(TVJP) 代表取締役 弁理士
IT、知財、翻訳サービスを中心とした新しいタイプのリサーチ会社を目指しています。

詳しいプロフィール

カレンダー
2012年11月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
kurikiyo
カテゴリー

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


Special

- PR -
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ