コミュニティと商標権のやっかいな関係
前の前のエントリーのコメントに書いた「二十四の瞳事件」ですが、コメントに埋もれさせておくのはもったいなので、ここでまた書きます(参考記事)。
ご存知とは思いますが、二十四の瞳とは小豆島を舞台とした壷井栄の有名な小説であり、小豆島の観光事業において重要な位置を占めています。
「二十四の瞳」という商標は奈良県の男性が所有していたのですが、(おそらく更新料不払いにより)取り消しとなったので、小豆島の某化粧品会社がめざとく商標権を取得。これに対して小豆島の(観光関係?の)財団法人が「一企業による私有化は問題」と無効審判を請求。結局、和解により化粧品会社が「二十四の瞳」商標を財団法人に無償で譲渡することで解決したというお話です。
このケースでは化粧品会社が「大人の対応」で和解したからよいですが、和解に応じなければ、商標登録は無効にされず、ずっとこの化粧品会社の専有物になってた可能性はあります(今までは、小豆島に縁もゆかりもない奈良県の人ですら商標権持ててたわけですから)。
また、たとえば、地元商工会だとか壷井栄の遺族とかの別の関係者が「うちが管理すべきだ」と出てきてたとしたら、ますます話はややこしくなっていたでしょう。
商標権と言う独占権を与える制度とコミュニティの共有財産という概念が如何にうまく整合してないかを表す事例だと思います。
ところで、のまネコ事件は、今のところ商標権は関係ありません(AVEXが商標登録出願している可能性はありますが、現段階ではわかりません「のまネコ」(文字のみ)「米酒」(ネコが酒瓶持った画像付)が出願されていることが22日深夜に判明)。しかし、2ちゃんが商売になることが世の中に知れわたったことで、いろんな人たちが2ちゃんネタを商標登録出願してくる可能性は増えたと思います(「阪神優勝」の商標権であんなにもめたのに、未だに、「ソフトバンク優勝」とかを出願する人がいることからもわかります)。
誰かがコミュニティの共有財産と思えるものを抜け駆け的に出願してしまった場合には、特許庁に情報提供して拒絶してもらうとか、無効審判で無効にする手もありますが、確実に成功するとは限りません。この化粧品会社やタカラのように「大人の対応」をしてくれればよいですが、そうとは限りません。
なので、一企業に私有化されたくない商標はコミュニティを代表する誰かが、防衛的に先に出願しておくしかないということになります。
2ちゃん関係者はあんまりこういうのは興味なさそうですが、2ちゃんはいまや商業的にも大きな力を持っています。大いなる力には責任が伴うと思うわけです。
#ところで、仮に依頼があっても私は2ちゃん関係の仕事は受けませんよ。売名行為とか言われて叩かれるのはやだから。
追加情報:
第3者(?)がモナーのAAを使った図形商標「オマエモナー」を出願して、拒絶査定になってたんですね。寡聞にして、ギコ猫事件しか知りませんでした。まあ、こういうそのものずばりのケースは良いとして、微妙に違うキャラが登録されてしまうのを防ぐため、それから他人の不当な使用を防ぐためにも、やはり防衛出願はしておいた方が良いと思います。