« 2009年9月23日

2009年10月11日の投稿

2009年10月21日 »

9月末に開催された、UK Lean & Kanban Conference に参加してきた。今回は、スピーカーとして呼ばれる、という光栄に預かった。これは、現在、アジャイル界で起きているスピンオフ・ムーブメントである、「Kanban」に関してぼくが発言をしているからだ。

Yeswekanbansm_2 一言でKanbanを言うのは難しいが、2009年10月時点では、「ソフトウェア開発のフローを見える化し、WIP(Work in Progress=仕掛)を制限することで、顧客価値のスループットを上げ、同時に改善を促す活動」、とぼくは定義してみた。もちろん、トヨタ生産方式のかんばんから来ているが、ソフトウェア開発向けにここ3年間でずいぶんとBoKが積み上げられていて、Agile2009 でも Limitting Wip Society というグループが、"Yes, We Kanban" というTシャツを着ていた。(アイコンは、大野耐一をモチーフにしている!)

さて、このカンファレンスに参加してみて、ぼくなりに「アジャイル」と「リーン」について考えてみた。

  • アジャイルとは何だったか:

Agiletome ぼくにとって、アジャイルは現実のソフトウェア開発の中で「ソフトウェア工学」が捉えそこなったものの1つだ。アジャイルが発見したことは、ソフトウェア開発のボトルネックは「ソフトウェア工学」の部分にはもうすでになくなっていて(デマルコの記事は読んだよね?)、ビジネスとソフトウェア工学を繋いでいる「ソーシャル活動」の部分にあることだ(これは決してソフトウェア工学は要らない、といっているのではなくて、一番大きなボトルネックは移動した、ということだ)。例えば、スクラムは、「役割定義とビジネスと開発の間のコミュニケーションパターン」だということができる。そして、もっとも重要なことはソフトウェア自身に価値はなく、ビジネスに価値がある、ということ。アジャイルは、言ってみれば工学の考え方を開発のソーシャルな面に延長したのだ。(Ivar Jacobson は、「ソーシャル工学」という言葉でそれを呼んでいる)

つまりだ、アジャイルは、「ビジネスとソフトウェア工学の間のコネクタ」ということだ。

  • リーンとは何か:

Leantome しかし、ビジネスの世界はソフトウェアだけではない。ビジネスの見地からみると、IT(あるいはソフトウェア開発)は、1企業の価値流の一部をになう。ソフトウェア開発という活動は、企画、マーケティング、営業、さらには会計や財務なども含めて大きな価値流の中での価値付加活動の1つなのだ。

リーンは、コンセプトを開発を通じてキャッシュにする(顧客に価値を届ける)までの流れを作っていく企業ワイドの活動だ。(自分用の注: このフローは製品開発のモデル、ITのユーザ企業のモデルであり、日本に多いソフトハウスやSIerのモデルは別途考察必要)

この様子を、「Tモデル」として描いてみた。

  • Chris Matts のモデル:

Agileandleanbychris Chris Matts とロンドンで多くの会話をしたが、この絵は彼がディナーテーブルの上で描いてくれたものだ。彼のモデルは、「意識」と「コンピテンス」のマトリクスになっている。

アジャイルが、企業の競争力を高めるための「意識的な課題の解決」に焦点を当てているのに対して、リーンは、この課題解決を「無意識化」する活動だ。この「無意識化」には知識の転送が必要だ。そう、リーン企業では、競争力は無意識化されているのだ。

Chris はこの絵にいくつか足したいと思うだろうけど、それは彼に譲ろう。

※この記事の英語版はこちら。
http://jude-users.com/en/modules/weblog/details.php?blog_id=65

平鍋

« 2009年9月23日

2009年10月11日の投稿

2009年10月21日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

平鍋 健児

平鍋 健児

株式会社チェンジビジョン代表取締役社長、永和システムマネジメント副社長。
オブジェクト指向開発、UMLの勘所、アジャイルな開発手法の未来、マインドマップのソフトウェア開発での利用方法、プロジェクトファシリテーション(見える化)を語ります。現在、マインドマップとUMLの融合エディタ、astah*(アスター、旧JUDE)を開発中。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
最近のトラックバック
カレンダー
2013年4月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
hiranabe
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ