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Agileは、ソフトウェア開発という活動を、「人と人との関係性」という視点から解体して再構築したものだといえる。ソーシャル性、社交、ということが決定的に重要なんだ。
その観点からも、毎回、最終日にはパーティが行われる。ここで、今回もっともぼくにとって大きなことが2つ起こる。
1つは、「Gordon Pask Award」という賞を頂いたこと。過去には、Jim Shore や J.B. Rainsberger、Jeff Patton なんかの大御所がもらっている。基本的には、「あまり知られていないが、コミュニティへの貢献が大きい人」を選ぶ。そして、その人に、年間2回、世界のカンファレンスに言って話すための旅費が用意される。Gordon Pask という人自身、ほとんど知られていない。しかし、彼のソーシャルな貢献が他の有名な科学者に影響を与えた、という事実からこの賞が作られている(Brian Marickが創設)。しかし、Gordon Pask という人は、ほとんど誰にもしられていない、という現象が、これまた面白い賞の名前なんである。
そして、もう1つは、日本から持ってきたもう1つの最終兵器、「DearXP」である。この日ののめに、J.B.に訳してもらった英語をもとに、かんたんなダンスを作って goyattom グループで練習、当日に望んだそして、結果のビデオがこれ。みんなでもりあがってくれた。日本でビデオを作ってくれたりょ~さんや、元歌の侍塊sに感謝します。

ぼくの今年のテーマは、「日本からよい考えを輸出すること」。オリジナリティの高いものをこのAgile2008で紹介したい。
私が今回受け持ったセッションは、この3つ
- Learning Kaizen from Toyota [ with Mind Maps]
- New Car Development in Toyota
- Exploring User Stories through Mind Mapping
最初のは、去年やったものを再度。これはブログで報告済み。そして、二番目のセッションは、元トヨタのCE、片山さんのデブサミでの新車開発のマネジメントの発表を託していただき、それを英訳して発表するものだ。これは、InfoQで公開されている。http://www.infoq.com/presentations/Toyota-Kenji-Hiranabe
また、この2つは、アンコール上映となった。多くの人に聞いてもらってミッションが果たせたと思う。アンコールでは、「リーンソフトウェア開発」の Mary Poppendieck がサポートしてくれ、全体の進行も一緒に付き添ってくれた。ありがとうメアリ!

そして、最後の1つは、ユーザーストーリーとマインドマップを結ぶ直線を引くセッションだ。ぼくとしては、これが一番うまく発表でき、フィードバックも多く頂いた。ワークショップもとても活発で、いきいきと会話が進んでいた。一緒に発表してくれた懸田さんとの寸劇もうまくいったし、マインドマップの印象も強く残せたと思う。これについては、いつか、ちゃんと記事にして発表したい。今、ソフトウェア開発の中で、「ユーザとの会話の重要性」に気づいているのがアジャイルであり、そして、マインドマップが持つ「コンテキスト保持能力」や「想像力喚起能力」が、アジャイルとベストマッチなんだ。このことを世界で始めて言った自負があり、ここは早めに発信したいと思う。写真はワークショップ中のみんな。
スライドはこちら。
http://www.slideshare.net/hiranabe/exploring-user-stories-through-mindmapping-546609
InfoQのFloydが、朝食会に招いてくれた。Floydとも初対面。とても若い実業家、というタイプで、落ち着いていてびっくり。
そこで、前から僕の記事を編集しているDebora Harman、『Agile Adoption Patterns』の Amr Elssamadisy と会う。
また、『Art of Agile Software Development』の James Shore とは一度会って挨拶したいと思っていた。木下さんと、二人で会いに行く。彼は、『アジャイルレトロスペクティブ』のDiana Larsen と企業のCTOとのインタビューを紹介して、CTOの苦悩を共有しようというセッションをやっていました。
- Pressure and Performance: The CTO's Dilemma
これまでのアジャイルでは語られることのなかった、上級役員やCTOという存在が、企業の中でアジャイル推進が行われるときにどのような悩みを生み出すか、をインタビューを元に明らかにする。
Open Jam という広いスペースが設けられており、そこでは、いつ誰がどんなセッションを始めてもよい。プロジェクタも3つ用意されているし、リラックスした雰囲気で語れるソファーの組や、張り物をする壁も。初日、ぼくらは、そこに「日本の壁」を作ることを決意。日本からの発信版を作成した。このオープンジャムをデザインしたのは、これも、『アジャイルレトロスペクティブ』のEsther Derby。日本壁の前で写真を取ってくれました。「まさに、私がこうして欲しい、と思う使い方だわ!」と言っていました。
DearXP を歌うにあたって、今回は英語で歌うという重大な方針があった。歌詞の英訳をしたのは、J.B.Rainsberger(『JUnit Recipes』の著者)だ。彼のセッションはこれ。
- XP: My Greatest Misses 2000-2008
XPのコーチとして、彼が経験した中から、グレーテストヒッツでなく、もっとも大きな失敗談を語るもの。
彼は、椅子を円形に並べ替え、そこで一種集団セラピストのような形で講演をした。内容は、「アジャイルをやろうとしているが、それができない理由をチームのメンバーが口にしたとき、やるべき理由を並べて論理で押し切ってはダメだ。「わかるよ」と一言いってあげることが重要なんだ」など、経験談を披露していた。今回、ぼくが一番印象にのこったセッションだった。
まだまだ、繋がった人はたくさんいる。Linda Risingと再開できたのもうれしかった。かんばん軍団の David, Coray, Karl, Aaron 一人ひとりと話す時間もとれた。もちろん、Mary には最後までお世話になった。UXの Jeff Patton も毎回会うのが楽しみだ。テスティングの Brian Marick ともいろいろ話せた。みんな一度日本に呼びたいな。
今年の Agile2008 を自分なりにまとめてみる。
まず、技術的にもっとも「革新的」に思えたのは、Agile UX(User Experience)とKanban(かんばん)だ。この2つは、他の領域からアジャイルを発見した(あるいは、アジャイルが発見したのかもしれない)。この2つをここで紹介する。
- Agile UX
UI(User Interface)よりもう1つ上の領域、使っていて気持ちいいと感じる「おもてなし」の感覚がUX。UCD(User Centered Design)や、ユーザのエクスペリエンスを作っていく活動は、アジャイルと出合って大きく発展すると思う。そもそも、机上のデザインでソフトウェアのエクスペリエンスは作れないからだ。使う人と作る人の対話の場が必要で、それをプラクティスとして受け入れられるのが、アジャイル開発の1つの可能性だ。というのが、アランクーパー(VB の父でもあり、『コンピュータは、むずかしすぎて使えない!』の著者)の基調講演のボトムラインだ。
ソフトウェアのインターフェイスにはアプリケーションが使うインターフェイスである API と ユーザが使うインターフェイスである UI がある。そして、UI の上に、UX がある。API -- UI -- UX という概念的な関係が見える。APIとUIは「I」が共通。UI と UX は「U」が共通。なんで、同列に並べるのはおかしいが、要は、「Uの方向にもっともっと未開の地があるぞ!」という1つの宣言なんだ。アジャイルがプログラミング活動として捉えていたものをUの方向に延長し、ユーザに喜んでもらえる、気持ちよく使ってもらえるものを目指すもの。
そして、カンファレンス自体でUXの実践が行われていた。写真は Graffiti Wall と名づけられたもので、簡単な問いについて、いろんな役割の人が意見交換する場。これまでも、「壁にポストイット」というのはアジャイルの定番コミュニケーション方法だったが、ここまでデザインされたものは初めてだ。紙の色、そして、その紙がおかれているボックスの上の説明書き(テントのように立っている)。色はソフトウェア開発での役割ごとに指定されている。このウォールは、Salesforce のチームによってデザインされた、というのも驚きの1つだ。
そして、1つのセッションに1つの絵葉書がデザインされ、セッションの案内とともに機能している。最近のSNSをはじめ、どんどんテキストでなく画像を用いたアイデンティティ(mixiやメッセンジャー の個人を示す画像を思い出すとよい)が広がっている。そして、それは人間が持っている認識機構にマッチするものだ。こういうものを、アナログでうまく取り入れている。 予算さえあれば、ぜひ、他のイベントでも取り入れてみたい、と思わせるアイディアだ。
- Kanban(かんばん)
ぼくが今回技術的に一番期待していたのはこれ。今後、アジャイルをスケールさせたり、安定化させたりする1つのキラーメソッドになる予感。従来は、タスクボードのようなものに張って「見える化」することが第一義だった。それが、リーン(TPS)やTOCと出合って、「価値の流れ」、「WIP(Work in Process: 仕掛品)の削減」を重視した方向に発展している。今回、Kanban、Pull系の話はこんなのがあった。
Value Stream Mapping - Extending Our View to the Enterprise(Alan Shalloway)
バリューストリームマップ入門。全体最適のために。
Come and Take It! Lean Pull Applied(Rod Coffin and Don McGreal)
プル、の意味。ソフトウェア作りを顧客から見て、顧客に価値を引っ張って(pull)もらう。従来の開発側からの押し出し(push)でなくて。
GTD + Kanban + Round Robin for Product Owners(Thomas Nilsson)
GTD(Getting Things Done)とかんばん、ラウンドロビンスケジューリングの組み合わせ。
Future Directions for Agile(David Anderson)
かんばんコミュニティを引っ張っているDavidのセッション。Agileの次の方向として、Kanban(Pull)、ToC、RealOption、Behavior-Driven-Development など、これらははたしてAgileなのか?
KFC Development - Finger Lickin’ Good(Karl Scotland and Aaron Sanders)
フライドチキンにしゃれて、Kanban-Flow-Cadence。プルが実際にWIP(仕掛)を減らす効果があること、ボトルネックを顕在化すること、リソースの平準化に効くこと、をワークショップで実験しながら示す。
Starting a Kanban System for Software Engineering with Value Stream Maps and Theory of Constraints(Corey Ladas)
かんばんの有効性を、まず、リーンの方向から説明(リードタイム、平準化、リトルの法則、WIP削減)。次に、スクラムの「タスクかんばん」を延長してWIPの考えをいれ、その2つが同じ結末(KSSE=Kanban SYstem for Software Engineering)に向かうことを示す。
Learning Kaizen from Toyota [ with Mind Maps ](Kenji Hiranabe)
WIPの削減の究極の方法として、屋台方式を説明。それとカイゼン活動をあわせたものが、アジャイルの本質と共通点が多くあることを、ワークショップ形式でマインドマップを使って発見する。
かんばんは、今後、アジャイルのスケールの1方向を確実に示している。アジャイルをスケールさせる場合、1つは、「木」構造を作る方法で、スクラムのスクラム、を階層的にやるパターン。強い同期を取っていく必要があり、全体でリズムを共有する。もう1つは、かんばん、で「川」構造を作る方法。こちらは、バッファをはさんで複数チームが非同期に動作できる。そして、バッファ間の仕掛の受け渡しをかんばんで行う(最近のアジャイルでよくある議論の1つに、「リーンではイテレーションの概念が消える。それでもイテレーションは必要か?」というのがある)。
かんばんは、「スムーズなフロー」と「仕掛のムダ」をバランスさせる方法であり、同時に、「カイゼン活動」を刺激する基盤となる。(これを、僕なりの解釈で「かんばん9特性」とし、その影響図を描いてみる)
これを見ると、かんばんが
- プルのツール
- カイゼンのツール
の2つを担っていることがわかる。1はりーンに強く出ており、2はアジャイルに強く出ている。そして、1は、流れとムダのバランスを取っているのだ。
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