『ビジネス2.0』の視点:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 『ビジネス2.0』の視点

ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

« 2010年2月18日

2010年2月19日の投稿

2010年2月20日 »

スマート・クラウド研究会中間取りまとめ(案)について(1)(2)では、電子行政クラウド、そして医療・教育に代表される公共クラウドについて整理をしてきました。これに続くのが、社会インフラの高度化のためのスマートクラウド基盤の構築です。

本研究会の報告書では、スマート・クラウド基盤を、リアルタイムの膨大なストリームデータを統合し、情報流、物流、金融流、エネルギー流などを最適制御するため高度な社会インフラとしての基盤と位置づけ、国際競争力強化の観点からも重要であるとしています。

本報告書では、スマートクラウド基盤に該当するものとして以下の5つをあげています。

(1)スマートグリッド

まず、一番目にあげているのが「スマートグリッド」です。スマートグリッドはブログの「スマートグリッド」のカテゴリでもなんどか取り上げてきましたが、経済産業省なども国際競争力や産業育成、そして標準化などの観点から積極的に推進をしてきています。

経済産業省では、1月19日、「次世代エネルギー・社会システム協議会(第7回)」を開催し、中間取りまとめ案を公表し、日本型スマートグリッドの概要や今後の取り組みなどについて詳しく書かれています。また、1月28日には、「次世代エネルギーシステムに係る国際標準化に関する研究会(2009年8月9設置)」における検討の成果として、「スマートグリッドに関する国際標準化ロードマップ」を公表しています。スマートグリッドは世界規模での取り組みが進んでおり、日本も脱ガラパゴスに向けた対応が必要となってくるでしょう。

総務省の本報告書の中では、スマートメータを介して収集された各戸の電力消費や自然エネルギーの発電量などのリアルタイムのデータをクラウド技術を通じて統合化し、電力供給を制御する仕組みを構築することが可能であるとしています。

スマートグリッドの実現においては、新経済成長戦略においても何度もグリーン・イノベーションの中などで日本型スマートグリッド、アジア経済戦略の中でスマートグリッドの標準化に関する取り組みについては記載されています。

スマートグリッドは、CO2削減への対応や新産業の創出など経済産業省、総務省、そして国土交通省や環境省などの連携が必要となる重要な取り組みとなるでしょう。

(2)次世代ITS

次世代ITSの位置づけとして、各車両がもつプローブ情報(アクセス・ブレーキの仕様状況、位置情報、CO2排出量等)をクラウドサービスによって統合し、これらの情報に基づき、信号制御、交通規制の変更などにより、道路混雑の緩和やCO2排出量の削減等を実現することが可能であるとしています。ITSについては国土交通省でも取り組んでいるため、連携施策として展開していくことが重要となるでしょう。

またEV(電気自動車)の普及に備えて、充電スタンドとの連携や自動車の行動履歴を蓄積し、リコメンドするといった、よりインタラクティブな次世代ITS基盤の構築が必要となってくるのではないかと考えています。

(3)IPv6ベースの広域センサーネットワーク

IPv6ベースの広域センサーネットワークを構築し、センサーを介して収集される河川情報や山林などの地盤情報などをクラウドサービスによって統合することが可能となるとしています。また、避難経路をデジタルサイネージに表示することなど、地域の防災情報にも役立つことが可能になるとしています。

本研究報告書の中では「防災クラウド」については、特に言及がなかったのですが、災害が起きた地域に対して、コンピューターリソースを集中させるといった、使い方もあるのではないかと考えています。

その他(4)では、老朽化する橋やトンネルなどの補修履歴をクラウドで蓄積、(5)では、空間コードとの連携などが記載されています。

以上のスマートクラウド基盤に関する記述は、昨年12月22日、原口総務大臣が公表した「原口ビジョン」の「世界をリードする環境負荷の軽減」の項目に該当しているのではないかと思われます。

image

(出所:総務省 原口ビジョン 2009.12.22)

「ICTによるグリーン化の推進」の中で、スマートグリッドや次世代ITS、IPv6の社会インフラ高度化プロジェクトを全国300箇所で展開(2020年)と書かれています。10年スパンと少々期間が長いような気もしますが、これらの取り組みがどこまで一般的に浸透していくのかが、注目されるところです。

MASAYUKI HAYASHI

« 2010年2月18日

2010年2月19日の投稿

2010年2月20日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

詳しいプロフィール

Special

- PR -
最近のトラックバック
カレンダー
2013年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
business20
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ