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日本の新成長戦略のグリーン・イノベーションとIT立国・日本

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既に様々なところで紹介されていますが、昨年12月30日、鳩山総理は総理官邸で第2回成長戦略策定会議を開催されました。本会議で「新成長戦略(基本方針)」が閣議決定され、「新成長戦略(基本方針)~輝きのある日本へ~」が発表されています。来年6月頃までに「新成長戦略」の最終とりまとめが公表される予定です。

本戦略では、2020年度までの平均で、GDP成長率:名目3%、実質2%を上回る成長-名目GDP:2009年度473兆円(見込み)を2020年度650兆円程度を目指すとしています。

6つの戦略分野の基本方針については、「日本の強みを活かした成長」「フロンティアの開拓による成長」「成長を支えるプラットフォーム」の3つのカテゴリに分けて、6つの成長分野で方針をたて、目標設定をしています。

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日本の強みを活かした成長 (※●は2020年までの目標)

(1)グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略   
●新規市場50兆円超、新規雇用140万人   
●日本の技術で世界の排出13億㌧削減

(2)ライフ・イノベーションによる健康大国戦略   
●新規市場約45兆円、新規雇用約280万人

フロンティアの開拓による成長    
●APEC自由貿易圏(FTAAP)の構築   
●ヒト・モノ・カネの流れ2倍に   
●「アジアの所得倍増」

(3)アジア経済戦略   
●訪日外国人2500万人、新規雇用56万人   
●食料自給率50%、農産物等輸出1兆円   
●木材自給率50%以上

(4)観光立国・地域活性化戦略   
●訪日外国人2500万人、新規雇用56万人   
●食料自給率50%、農産物等輸出1兆円   
●木材自給率50%以上

成長を支えるプラットフォーム

(5)科学・技術立国戦略   
●官民の研究開発投資GDP比4%以上   
●理工系博士課程修了者の完全雇用   
●情報通信技術による国民の利便性向上

(6)雇用・人材戦略   
●フリーター約半減、女性M字カーブ解消   
●待機児童問題を解消(就学前・就学期)   
●出産後、希望者全てが就業復帰

これらの中で私自身が注目しているのは、(1)グリーン・イノベーションとITです。グリーン・イノベーションでの主な施策としては以下の4点をあげています。   

  • 電力の固定価格買取制度の拡充等による再生可能エネルギーの普及   
  • エコ住宅、ヒートポンプ等の普及による住宅・オフィス等のゼロエミッション化   
  • 蓄電池や次世代自動車、火力発電所の効率化など、革新的技術開発の前倒し   
  • 規制改革、税制のグリーン化を含めた総合的な政策パッケージを活用した低炭素社会実    
    現に向けての集中投資事業の実施

をあげています。

本施策の中で触れられているのが、日本型スマートグリッドです。効率的な電力需給を実現し、家庭における関連機器等の新たな需要を喚起することで、成長産業として振興を図る。さらに、成長する海外の関連市場の獲得を支援するとしています。

また、エコ社会を形成するものとして、再生可能エネルギーやそれを支えるスマートグリッドの構築、適正な資源リサイクルの徹底、情報通信技術の活用、住宅等のゼロエミッション化などをあげ、地方から経済社会構造を変革するモデルとしてもスマートグリッドについて触れています。

そして、(3)アジア経済戦略では、スマートグリッド、燃料電池、電気自動車など日本が技術的優位性を有している分野においては、特に戦略的な国際標準化作業を早急に進めるとしており、スマートグリッドの国際標準化作業の重要性について言及しています。

今回の成長戦略では、スマートグリッドのキーワードが何度か登場しており、政府がスマートグリッドの取り組みを重視していることが伺えます。

(5)科学・技術立国戦略 ~IT立国・日本~ では、2020年までの目標として、『情報通信技術の活用による国民生活の利便性の向上、生産コストの低減』 をあげ、主な施策としては、行政のワンストップ化、情報通信技術の利活用を促進するための規制改革をあげています。

情報通信技術は、「コンクリートの道」から「光の道」へと発想を転換し、情報通信技術が国民生活や経済活動の全般に組み込まれることにより、経済社会システムが抜本的に効率化し、新たなイノベーションを生み出す基盤となるとしており、「光の道」の上でのイノベーションの創出が期待されます。

本戦略の中では、情報通信技術の利活用を徹底的に進める必要があるとし、生産性向上や国際競争力強化、そして新産業の創出に結び付けるとしています。

また、具体的な施策としては、

  • 各種の行政手続の電子化・ワンストップ化の推進(住民票コードとの連携による各種番号の整備・利用に向けた検討の加速)
  • 教育現場や医療現場などにおける情報通信技術の利活用によるサービスの質の改善や利便性の向上を全国民が享受するための光などのブロードバンドサービスの利用推進
  • その他、温室効果ガス排出量の削減、事業活動の効率化、海外との取引拡大、情報通信技術利活用を促進するための規制・制度の見直し 等

をあげています。

最後にややネガティブな意見となってしまいますが、

「輝きのある日本へ」、そうだったらいいのにな♪」の極東ブログの中でも述べられているように、自民党政権の「新たな成長に向けて(2009.4.9)」や「経済財政改革の基本方針2009について(2009.6.23)」と比べると、グリーン・イノベーション以外は数値目標などには大きな差がないように見受けらます。また、企業の成長を支援する施策が欠けているという指摘も多く目にします。

また、2009年12月22日に公表された原口ビジョンと比べると、ややIT分野にの目標設定と主な施策については、やや物足りなさを感じるところもあります。

自民党政権から民主党への政権交代が実現して、数カ月あまりが経ちました。まだまだ試行錯誤の段階であると考えており、今後具体的な成長戦略について議論されることと思います。「6月のとりまとめについては、より具体的な成長戦略が提示されることが期待されます。

フジサンケイビジネスアイ(2009.12.18)では、津村内閣府政務官 が以下のように発言をされています。

内閣府と経産省、総務省の各政務官を交えた3政務官会議で基本戦略を決め、年明けにIT戦略本部の再キックオフをする。(中略)どのような基本戦略を構築すべきか、大まかなアウトラインを描く作業を進めている。

自民党時代に「i-Japan戦略2015」を策定したIT戦略本部が、新成長戦略と連携し、どのような基本戦略を提示していくのでしょうか。

2010年は大きな年の節目となります。次の10年を見据えた中長期的な戦略とともに、景気低迷を打破すべく短期的な施策も重要となってきます。中でもグリーン・イノベーションと情報通信技術の利活用は、中長期的にも短期的にも日本の成長を支える重要な基盤となり、どのような具体的プランが提示されるのか、注目されるところです。

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