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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

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2008年5月1日 »

SaaSが普及するのかそれともしないのか、普及にあたっての課題は何なのか様々な視点で議論がなされています。

 

中小企業のSaaS利用意向

コンピュータソフトウェア協会の「SaaS研究会」は、3月31日「中小企業におけるSaaSの利用意向等に関する調査」の結果を公表しています(掲載日は4月23日)。

【どの点を重視してSaaS型サービスを検討するか】という問いに対しては、

メリットの上位3つは、

  • 「初期コストが安い」(57.4%)
  • 「運用コストが削減できる」(48.1%)
  • 「導入までの期間が短い」(47.5%)

デメリットの上位3つは、

  • 「情報漏えいが心配」(65.1%)
  • 「ネットワーク障害があると使えなくなる」(62.1%)
  • 「サービスの継続性に不安がある」(33.9%)

となっています。

SaaSの普及にあたっては、情報漏えいなどのセキュリティ面や、サービスの生涯による継続性が課題であることがわかります。

 

SaaS普及の課題

ITmediaエンタープライズの「それなりに多いSaaS普及への課題(4/25)」の記事においてもメリット/デメリットがそれぞれ述べられています。

主なメリットは(先ほどとの重複除く)、

  • 迅速なコンプライアンス対応が可能(最新版バージョンアップ)
  • 既存ソフトウエアとの連携可能(広範囲なカスタマイズ可能)
  • コアビジネスへの資源集中
  • 主なデメリット(先ほどとの重複除く)、
  • SaaSベンダの少なさ
  • セキュリティ不安
  • サポートレベル
  • 価格体系の不明瞭性

等があげられています。

メリットについては、SaaSベンダがアプリケーションレベルでは一括して更新をするので、企業にとっては負担が少なくなり、迅速なコンプライアンス対応ができるとしています。また、SaaSによって情報システム部門をスリム化することができ、コアビジネスにヒト・モノ・カネの経営資源を投入できるという考え方もありでしょう。

デメリットに関してはどうでしょうか?

堅牢なデータセンターにデータをあずけることによって、信頼性の高いセキュリティ環境が確保されることになりますが、セキュリティに不安を抱えるユーザが多いことから何らかのギャップがあることがわかります。

そして、サービスレベルです。ネットワークサービスに関してはSLA(Service Level Agreement)が保障されるケースが多いのですが、SaaSでSLAを保障していないベンダも少なからずあるでしょう。

 

SaaSのキラーアプリケーションは?

それなりに多いSaaS普及への課題(4/25)」には、SaaSでブレークしそうなキラーコンテンツが不在である点を指摘しています。

具体的なアプリケーションの分類例として、

  • カスタマイズ不要な情報系(グループウェア、ブログ、SNS等)
  • 自社対応の負荷が高いもの(セキュリティなど)
  • ビジネス変化が激しく情報処理量の多い顧客接点業務(CRM、SFA=営業支援システムなど)
  • コンプライアンスのように継続投資が必要なもの
  • 人事/給与系
  • バックアップ系
  • オールインワン系(+BPO=Business Process Outsourcing、XaaSなど)

の7つをあげています。

 

SalesforceとGoogle連携と “on NGN”

先日、セールスフォースとグーグルが提携したことは記憶に新しいところです。Salesforce for Google Appsの「お試し版」が既に公開をされており、10分で準備ができるようです。

セールスフォースは、4月21日、「実例から見るSaaSと今後の展開」~ICT時代の中心からモバイル連携、次世代ネットワーク(NGN)へ~という講演を開催しました。参加者は500名以上と大盛況だったようです。講演の「実例から見るSaaSと今後の展開」の資料を読むと、「SaaS on NGN」というキーワードを出しています。

SaaS on NGNに期待することとして、

  • 中小企業の生産性向上
  • 地域格差の解消
  • 就労機会の拡大
  • 日本のIT産業を輸出産業に
  • CO2の排出削減効果

をあげています。

以前、「Google AppsがNGN上で利用できるとエンタープライズ分野に広がるのではないか?」という記事を書かせていただいたように、Salesforce for Google AppsをNGN上で利用できるようになれば、「カスタマイズ不要な情報系」×「ビジネス変化が激しく情報処理量の多い顧客接点業務」の相乗効果が期待でき、かつセキュリティと品質の高い環境下で利用することが可能となるでしょう。

 

次世代サービス共創フォーラムでもSaaS

NTT(持株)がNGNを推進する「次世代サービス共創フォーラム」のホームページの中でBeyond ICT(11回:4月25日)のコーナーで「ソフトウェアはネット経由で利用する時代:SaaSの登場と今後」という記事が書かれています。この中で、

期待されているのが、NGN(次世代ネットワーク)を活用したSaaSサービスです。NGNの品質確保「QoS」機能を利用すれば、ソフトウェアの性質に合った品質で、インストールしたソフトウェアと同じような感覚で利用することができるようになるでしょう。また、NGNの回線識別情報を利用することで、従来のIDとパスワードによる認証よりも高いセキュリティを実現することができます。

と、SaaSとNGNの親和性の高い点が述べられています。

 

SaaS over NGN

また、NTT R&Dフォーラム2008(2月7~8日) の三浦社長の基調講演(PDF)の資料(P10)には、「SaaS over NGN」というキーワードを使っています。「SaaS over NGN」の考え方として、

さまざまなパートナの皆様と協業・連携し,NGNを中心とした安心・安全なICT基盤上に新たなSaaS市場を創造していく

としています。

NTTは、「次世代サービス共創プラットフォーム」の中でSaaSプロバイダの要望を聞き取り、NGN上でのSaaS展開(NGNの機能をSNI由で提供)の検討を進めていくようです(日経コミュニケーション2008.4.15記事参照)。

 

NGN対応SaaSプラットフォームのデモが始まる

NTTデータは4月23日、NGN対応SaaSプラットフォーム「VANADIS SaaS Platform」のデモを、NTTグループのショールーム「NOTE(NTT Open Telecom Experience)」にて披露しました(関連記事)。

「VANADIS SaaS Platform」は、

  • 1つのIDで複数のSaaSサービスを利用できるポータル機能
  • NGNの回線認証機能と連携可能な認証基盤
  • 課金の仕組みなど

SaaSのサービス提供に必要な機能を提供しています。

実際に私もNOTEでデモを見学してきました。3つのロケーションをNGNが持つ回線認証でレベル1~3までのセキュリティ・レベル分けをし、レベルの外出先からなどは人事システムにアクセスするとエラーが表示される等の仕組みが公開されていました。

NTTデータは、2008年度中に提供する予定とのことです。

 

ガートナーもSaaSの進化にNGNを期待

ガートナー アウトソーシング サミット 2008」が4月15日、4月16日に開催されました。「SaaS (サービスとしてのソフトウェア):新たなデリバリ・モデルをめぐる「可能性」と「課題」」というプログラムでは、

  • SaaSは中長期的にどのような方向に向かうのか
  • SaaSが課題解決手段として適している領域をどう見極めるか
  • アウトソース先としてのSaaSベンダーとどう付き合うべきか

というテーマで講演がなされ、NGN上でSaaSを利用することについて以下のようにコメントしています。

NGNにより、通信面でセキュリティ、品質、パフォーマンスが向上する。そのことにより、SaaSは日本独自の進化を遂げるのではないか。例えば、細かいサービスレベル、インターネットとは異なり一瞬でも落ちると許されないとか、そういう品質の高さをNGNが提供し、日本独自の進化をしていくと思う。

 

SaaS普及の鍵はNGN?

NGNでSaaSを利用することのメリットを再度整理してみましょう。

まずは、セキュリティ面です。NGNは第三者によるなりすましの攻撃を防ぐことのできる「回線認証」の機能をもっており、SaaSでユーザから不安視されるセキュリティリスクを低減することはできるでしょう。また、SLAについてもNGNはインターネットにはないQOS(帯域保証機能)や安定した通信が期待されるので、SLAも現在のインターネット経由よりも高い稼働率が期待されます。 

そして、SIP(session initiation protocol)と一般的なアプリケーションAPIを仲介するSDP(service delivery platform)が整備されれば、SaaSプロバイダ等が、認証や帯域保証と連携するサービスが提供可能になることが予想されます。

 

そして様々な業種の拡大へ

SaaSの領域は、IT投資をすることが難しい中小企業が主なターゲットの一つという感がありました。NGN上でSaaSが利用できるようになると、その適応領域は拡大することが予想されます。

例えば、

【金融業界】

回線認証を利用して自宅から安全に金融取引をすることも可能でしょう。フィッシング詐欺等も少なくなるのではないでしょうか?また、金融商品の相談をテレビ電話ですることもより身近になるでしょう。

【医療業界】

日本はこれまで医療のIT化は世界的に見ても遅れをとっていました。NGN上で電子カルテやレセプトそして健康情報等を共有できるようになれば、医療の地域連携が進むことが期待されます。

【教育業界】

教育のIT化も世界的に見て遅れています。例えば校務情報や学務情報をNGN上のSaaSプラットフォームの中で利用をしていけば、日本全国の学校がより安価で安全な利用が期待されます。

【自治体等の公共機関】

電子申請等の分野も日本は遅れをとっています。また、自治体は財政難のところが多く自前で投資することは難しく、自治体同士の共同アウトソーシングで対処していかなければなりませんでした。NGNで認証するという仕組みができ、共通のプラットフォームができあがれば、より安全に電子申請等ができるようになることが期待されます。

以上いくつか可能性をあげてみました。これまでSaaSでは難しいというイメージがあった、金融や自治体等の公共分野でのSaaSとNGNの浸透が期待されるところです。

 

最後に

SaaSは様々な課題をクリアしていく必要があるために急速に普及していくことはあまり期待できないと考えています。また、NGN上でのSaaS展開もリリース3までのステップを考えると、本格的には2010年ごろと見ています。つまり、2008年、2009年はSaaSとNGNの様々な検証が行われ、2010年がNGN上でSaaSが利用できる本格的な普及期になることが期待されるところです。


MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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