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「思い込み」が激しい人にかける言葉の作り方(5) ― ねじれ曲がった思考パターンに気づいてもらう

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こんにちは、しごとのみらいの竹内義晴です。

「思い込み」が激しい人にかける言葉のかけ方について連載しています。この連載の最終回です。

これまでは「省略」「一般化」というパターンについて書いてきました。今回は最後の「歪曲」について。

そもそもこの連載を書こうと思ったきっかけは、初回の記事にある

最近、新入社員の傾向として、
入社して、ある程度なれてきた頃に、新しい仕事や、プロジェクトについてもらおうとすると、
「自分はそれをやったことが無いからできません。やったら必ず失敗します。失敗したら、自分は責任を負わされるじゃないですか。できないことがわかっているのに強制するのは、パワハラです。」と返答されてしまうケースが増えているそうです。

というタイプの人にどのように関わったらいいのかなぁ?と思ったことでした。

引用したこの考え方は、「確かにそういう一面もあるかもしれないけれど、それはちょっと大げさじゃない?」って感じです。「歪曲」とは、「そういう一面もあるかもしれないが、そうとは限らない」という考え方のこと。つまり、世の中の見え方がちょっとねじ曲がっちゃってるんですよね。

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今日は、世の中がねじ曲がっちゃって見えていて(本人はそう思っていないでしょうけれど、少なくともこちらからはそう見える)、それが何かしらの制限になっている人に、どんな風に言葉をかけたら「そうとは限らないんじゃない?」って思ってくれるのか・・・という話です。

 

「歪曲」された情報をゆるめる

「A(原因)によって、B(結果)になる(因果関係)」の思い込みをゆるめる質問

因果関係とは、「Aによって、Bになる」という関係です。

  • 「自分はそれをやったことが無い(原因)からできない(結果)」
  • 「失敗したら(原因)、自分は責任を負わされる(結果)」

というのがまさのそうですよね。このような場合は、この因果関係を壊す・・・というか、「その関係は本当?」「他の選択肢はないの?」というような、関係性を問いかけるのが有効。

  • 「自分はそれをやったことが無い(原因)からできない(結果)」→「"やったことがない"ということの何が、"できない"という理由になるの?」
  • 「失敗したら(原因)、自分は責任を負わされる(結果)」→「"失敗する"と"責任を負わされる"とは、どう結びつくの?」

「Aという原因が必ずしもBという結果を招くわけではない」ということに気づけば、他の選択肢に目がいく可能性が生まれます。

 

「AはBだ(A=B 等価関係)」の思い込みをゆるめる質問

「等価」とは、「A=B」という関係です。

  • 「やったら」=「失敗する」
  • 「できないことを強制する」=「パワハラだ」

がそうですね。このようば場合は、このA=Bの関係を壊すような問いかけが有効です。

  • 「やったら」=「失敗する」 →「いつもやったら失敗するの?」「"やること"と"失敗すること"はどう結びつくの?」
  • 「できないことを強制する」=「パワハラだ」 →「"できないことを強制する"のはいつも"パワハラ"ということになるの?」

「AとBが必ずしもイコールで結びつくわけではないということに気づけば、他の選択肢に目がいく可能性が生まれます。後者の「できないことを強制する」=「パワハラだ」の場合は、かなり情報が省略、一般化されているので、先に、省略を明確にする問いで、「具体的にどういうことが強制ということになるの?」と確認したり、一般化をゆるめる問いで、「できないことをさせることは、必ずパワハラということになるの?今までできないことにチャレンジしたことは一回もないの?」などのようにゆるめたりしたほうがいいかもしれません。

 

「私はあなたの気持ちが分かる」「あなたは私の気持ちが分かっているはず」(気持ちを読みすぎるがゆえに制限になっている)の思い込みをゆるめる質問

よく、恋愛関係では、「きっとあなたは私のこと嫌いなんでしょ?」とか、「あなたは私の気持ちが分かっているはずよ」みたいなのがケンカの種火になりますが、そうとは限らないのに、さも、「私はあなたの気持ちが分かる」「あなたは私の気持ちが分かっているはず」ということを言う人っていますよね。

パワハラの例では、

  • 「できないことがわかっているのに強制するのは、パワハラだ」

の、「できないことがわかっているのに」がそうです。このような場合は、「どのようにしてそれが分かるの?」という問いかけが有効です。

  • 「できないことがわかっているのに強制するのは、パワハラだ」→「あなたにはどのようにして、”できないことが分かっている”ということが分かるの?」「どのようなところから、私が”できないことがわかっている”と思ったの?」

その解釈を確認するようにすると、それが思い込みであるということに気づく可能性が生まれます。やさしい感じで問いかけるのがいいでしょう。

 

「明確な判断基準がないのに制限になっている」の思い込みをゆるめる質問

単なる誰かの意見かもしれないのに、それが当然のように思っているような場合があります。パワハラの例では、

  • 「できないことがわかっているのに強制するのは、パワハラだ」

がそうですね。このような場合は、「誰がそういったの?」「何を基準にそう言うの?」などの問いかけが有効です。

  • 「できないことがわかっているのに強制するのは、パワハラだ」→「誰がそういったの?」「何が基準でそう言うの?」

このように、判断基準や評価基準を問いかけることで、それが自明の理(説明の必要がないぐらいに明らかなさま)ではないことに気づく可能性が出てきます。

 

~~

さて・・・これまで5回にわたって、「思い込み」が激しい人にかける言葉のかけ方について書いてきました。

コミュニケーションとはその瞬間、瞬間に変わっていくので、「相手がこう言ったらから、こっちはこう言おう」のように、瞬間的に考えて言葉を生み出すのは、正直難しいですよね。ボクもそうです。実際、今回の記事を書くにあたっても、かなり頭を使いましたもん。

それでも、ボクが、このようないろんな言葉のパターンを考えながら「おもしろいなぁ」と思うのは、相手以前に、自分自身にもさまざまな思い込みがあるということに気づくきっかけになるし、「こう言われたら結構響くかも」「こう言われたらなんと答えるかな?」ねんて、自分自身の思考に突っ込みがはいるところがおもしろいです。

また、周りの人がその制限となる思考パターンで思い悩んでいるのだとしたら、ちょっとした気の利いた一言で、それを解くきっかけが作れたらいいなぁととも思います。とはいえ、相手のことは相手のことなので、そんなに深く関わろうとか、無理になんとかしてやろうとは全く思わないのですが、それでも、言葉のバリエーションが広がるのはいいなぁと思っています。

これからも、私たちの周りにあるちょっとした言葉について、「こうすればいいんじゃない?」ということを考えていきたいと思っています。機会を見てブログでも紹介していきますね。

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