「思い込み」が激しい人にかける言葉の作り方(3) ― 省略された情報を取り戻してお互いの理解を深める
こんにちは、しごとのみらいの竹内義晴です。
「思い込み」が激しい人にかける言葉のかけ方について連載しています。
昨日の記事は、私たちの思い込みや制限ができる理由と、それをゆるめる方法について。4W1Hの「問いかけ」が有効で、専門用語ではメタモデルと言う……というお話でしたね。
思い込みや制限は
「AはBである」「AになるとBになる」
という、頭の中になんらかの方程式がある状態だというお話でした。
省略された情報を取り戻してお互いの理解を深める
今日は、メタモデルの中でも「省略された情報を取り戻してお互いの理解を深める」というお話。私たちが体験を言葉にするとき、そのすべてを言葉にすることはできません。言葉にするときに省略・削除された情報を問いかけによって引き出し、お互いの理解を深める方法です。
「単純削除」に対する質問
単純削除は、「何を」が省略されている状態の言葉を、4W1Hの質問で情報を取り戻す方法です。
- 「私には 無理」→「何が無理なんですか?」
- 「昨日のセミナーでは 気づきがあった」→「どんな気づきがあったんですか?」
「比較削除」に対する質問
比較削除は、比較対象が不明確な言葉を、「何とくらべて?」「何の中で最も○○なんですか?」などの質問で情報を取り戻す方法です。
- 「○○さんは本当にダメだなぁ」→「誰と比べてダメなんですか?」
- 「○○さんのスピーチは最低だね」→「何の中で最低なんですか?」
「指示詞の欠如」に対する質問
抽象的な代名詞(「彼」「みんな」「あれ」「それ」「これ」など)に対して、「具体的に誰が?」などの質問で情報を取り戻す方法です。
- 「みんなやる気がないんです」→「具体的には誰と誰ですか?」
- 「国民はみんなそう思っています」→「国民って、具体的には誰ですか?」
「不特定動詞」に対する質問
具体的な「どのように」が省略されている動詞に対して、「どうやって?」「どのように?」などの質問で情報を取り戻す方法です。
- 「アイツは全く分かっていない」→「どのように分かっていないの?」
- 「彼はいつも失敗する」→「どのように失敗するの?」
「名詞化」に対する質問
状態やプロセスを名詞化することによってあいまいになった言葉に対して、「具体的には?」などの質問で動詞化することで情報を取り戻す方法です。
- 「昨日のセミナーでは気づきがあった」→「どんな場面で気づいたんですか?」
- 「彼の影響力はすごい」→「具体的にはどのように影響を発揮しているのですか?」
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このように、省略(削除)されている言葉を補うような問いかけをすることによって、お互いの理解を深めることができます。また、あいまいさを具体的にすることで、事の真意を改めて考えたり、確かめたりする効果もありますね。
なお、ここでは細かく書きましたが、「○○削除の場合は○○という質問で……」のように難しく考えるよりも、何を具体的にしたいのかに意識を向けて4W1Hを意識した質問をするほうが使いやすいし、慣れると思います。
同じ1つの文章でも、捉える視点によっては、それぞれ異なる質問を問いかけることで、異なる文脈を引き出すことができます。
また、肯定的な話に対して変に突っ込むとイチャモンをつけられているように感じられることがあるので、注意してください(たとえば、”今日のプレゼンは本当に最高だった”と仲間と盛り上がっているところで、少し冷めた感じで”何が最高だったんですか?具体的には?”と聞かれたら、イヤーなムードになりますよね)。
そのほかの注意点は、こちらの記事を参考にしてください。
実践的なワーク
頭で理解するだけよりも、実践で使えるようにするためには実際に考えてみるのが一番です。
次のようなことを言う新入社員があなたの前にいます。そこで、あなたは「お互いの理解を深めてみよう」と思っています。今日の話をもとに、どのように問いかけたら相手の状況を引き出せるかを考えてみてください。
- 「自分はそれをやったことが無いからできない。やったら必ず失敗する」
- 「失敗したら、自分は責任を負わされる」
- 「できないことがわかっているのに強制するのは、パワハラだ」
たとえば……
- 「自分はそれをやったことが無いからできない」→「それって何?」
- 「やったら必ず失敗する」→「失敗って、何と比べて?」
- 「自分は責任を負わされる」→「責任って、どんな?」
みたいな感じです。ネタは日常の会話の中に山ほどあるので、よかったらチャレンジしてみてください。